ライバル登場?
学校を終え、私服に着替え終わった頃、家のチャイムが鳴った。
今日、近くに住む同い年の従妹の 北島春菜がやって来ることになっている。
元々春菜の父親は単身赴任中だが、働いている母親も今日は遅くなるとかで、晩御飯を俺と一緒に食べるようにとの事だ。
そして、俺の母親は所謂バリキャリで、こんな時間に家にはいない。
小さな妹は保育園に行っていて、今家にいるのは俺だけだ。
手にしていた制服のズボンを急いでハンガーにかけると、急いで玄関に向かった。
相手が誰かを確認せずに、ドアを開ける。
「やあ、伊藤」
チャイムを鳴らしたのは、春菜ではなく俺の中学時代の友達の大原だった。
どうやら、下校途中らしく、制服姿でカバンを肩に担いで玄関の前に立っていた。
「大原か」
高校に入ってからはほとんど付き合いが無かった大原。
突然やって来たそんな大原を、少し怪訝な表情で迎えた。
「久しぶりだな。上がっていい」
「ああ」
そう言って、大原を家の中に上げると、俺の部屋に連れて行った。
「昔と変わってないな」
大原は俺の部屋に入ると、部屋の中を見渡しながら言った。
それから、しばらくはお互いの高校の話をしたが、春菜がいつ来るか分からないのに、大原を長居させる訳にはいかない。
「で、何の用なんだ?」
率直にたずねた。
用も無しに来るわけがない。
「実はだな。
お前、小野田と同じ高校だし、仲もよかったよな」
そこまで言えば、ほぼ話の予想はつく。誰かが小野田の事を好いている。
「小野田とお前って、付き合っているのか?」
「いや。付き合ってはいない」
それは事実だが、この話の流れの中でそう答えるのは、ちょっと胸が痛い。
「じゃあさ、小野田は他の誰か付き合っているのかな?」
大原は身を乗り出した。
どうやら、この反応から言って、小野田の事を好いているのは大原本人らしい。
「お前、小野田の事が好きなのか?」
俺の問いかけに、大原は頷いた。
俺としては複雑な心境だ。
茉実が大原を選ぶなら、それは仕方ない事だが、何だか胸が痛む気がしてならないし、仲を取り持つなんてのはぜぇぇぇったい嫌だ。
「でも、お前、高校に入ってからはほとんど会った事、無いんじゃないのか?」
そうなのだ。
大原は別の高校に行っている。
それも、電車は反対方向なだけに、会う事なんて、滅多にない。
だと言うのに、好きだなんてどう言う事なんだとしか、思えない。
「そうなんだよなぁ。
寂しくして、寂しくてなぁ」
その言葉と、マジ苦悩しているような大原の表情に、目が点にならざるを得ない。
「中学の時に、告っておけばよかったじゃねぇか」
「その時は好きだって事に気づいていなかったんだよ」
「はぁぁぁ?」
これまた、俺は目が点になった。
「普通、好きになった時に気づくだろう。
恋は突然やってくるもんだろ?」
俺は石野を一目見た時から、好きになった。
「それは違うな。
少なくとも、俺の場合はだが。
いつの間にか好きになっていたんだ。
そして、いつの間にかだっただけに、気づくのが遅れたんだよ」
「うーん。信じられん」
俺は腕組みをして、小首を傾げるしかない。
「そんな事より、小野田に俺の事を話してくれないか」
「断る」
きっぱり言い切った。
「なんでだよ?
もしかして、お前も小野田狙い?」
「違う。
告るってのは、勇気がいる事なんだ」
そう。俺は経験済みだ。
正確には告ろうとしただが。
「それを人に頼るな。
自分で告る勇気がないなら、好きだって言うな」
もっともらしい理由を俺は口にした。
「確かにな。
お前の言う事はもっともだ。
よし、告るぞ」
大原はそう言うと立ち上がった。
もしかして、このまま小野田の所に行く気じゃないだろうなと、ちょっと不安になる。
そんな時だった。再び、家のチャイムが鳴った。
今度こそ、春菜のはずだ。




