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石野の未来を変える!

 振られてリセットした日から、数日が経った。


 この時の流れの中では、俺は石野に告ってもいないので、振られてもいない。

 あの時、振られる以前のように、石野は相変わらずかわいい笑顔を俺に見せてくれている。


 一方、態度をはっきりとさせない俺と茉実の間には、少しぎこちなさが生まれ始めて来ている。

 このままでは茉実も失う事になる。


 だが、俺はまだ茉実を選ぶ決断を出せていない。

 心の奥底では、今はだめでも、もう少しすれば石野の気持ちもと言う気持ちが捨てきれていないのかも知れない。


 もやもやとした俺の気持ちとは裏腹に、教室の窓から見える朝の空はすっきりと晴れ渡っている。



「ええーっ。マジで?」

「めぐちゃんは大丈夫だったの?」


 窓の向こうに目を向けていた俺の耳に石野の名前「めぐちゃん」と言う名前が、届いた。

 石野がどうかしたのか?


 さかすざ、そんな思いで、声がした方向に目を向けた。

 教室の一角で話す女子たち。その表情は何か心配げだ。



「全然、大丈夫なんかじゃないよぅ」

「昨日の帰りなん?」

「今日は休むんじゃないかな」


 そう話しているのは、俺が告った時にも石野の横にいた、石野の仲良し田寺心海だ。

 昨日の帰りに石野に何かあったらしい。


 何なんだ?


 心が騒ぐ。が、女子たちの輪に割り込んで聞く勇気はない。

 じっと、女子たちの会話に神経を集中させていると、教室に別のざわめきが起きた。



「えぇーっ」

「かわいそう」


 みんなの視線は教室のドアに向かっている。

 さっきの石野の話の流れから言って、嫌な予感が走る。

 そんな思いで向けた視線の先に、痛々しい姿の石野がいた。


 半袖の制服からのばされた右腕はギブスで固定され、石野の細い肩から吊るされている。

 それだけじゃない。

 スカートの裾の先の膝、そして頬まで痛々しく包帯やばんそうこうで覆われていた。



「石野さん、どうしたの?」


 駆け寄ってくるクラスメートたちに、絆創膏で邪魔され引き攣り気味の笑みで、石野が答える。


「昨日、帰りにね。駅までの坂のところで、後ろから来た自転車にはねられちゃって」


 どうやら、さっきまでの話はこの事だったらしい。


 自分の席を目指して歩く姿も、足を引き摺り気味だ。

 痛々し過ぎる。

 俺はこんな石野の姿を見ちゃいられない。


 そして、石野を襲ったそんな不幸な事件をリセットできる。


 石野の気持ちは一日では変えられなくても、事件と言うものなら分かっていたら、変えられるに違いない。


 カバンを取ると、中からあの装置を取り出して、ボタンを押した。

 


 リセットされた一日前の朝。ざわつく教室。

 石野の座席に目を向けた。


 石野が笑みを浮かべ、友達と楽しそうにお喋りをしている。

 今日の下校途中に、あんな事件に遭うなんて、笑顔の石野も思ってもいない。

 俺が見ていたいのは、こんな元気な石野の姿であって、あんな痛々しい姿じゃない。


 今日、俺は石野の未来を変える。

 そう思いを込め、拳を力いっぱい握りしめた。

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