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何度繰り返しても、結果は変わらない

 次の日、昼の間に、俺の想いを注ぎ込んだラブレターを石野の下足箱に入れておいた。

 そして、授業が終わると、石野から遅れて教室を出る。


 肩までのストレートヘアとスカートの裾を揺らしながら歩く石野の後姿。

 その横を歩く友達に時々見せる輝くような笑みを浮かべた石野の横顔。


 楽しそうな笑み。

 それがもう少しすると、嬉しさからの笑みに変わる。


 そう期待しながら、石野たちから少し遅れて廊下を歩いていく。

 近づきすぎてもいけないが、離れすぎるとその瞬間を見れなくなる。


 微妙な距離を保ちながら、一階にたどり着いた。

 石野が下足箱の前に立ったのを確認すると、俺はちょっと身を隠せる場所を見つけ、石野の反応を盗み見した。


 石野は下足箱を開けていて、中に手紙がある事に気づいている。


 上履きを左手に持ったまま、右手を下足箱の中に手を入れた。

 その手をすぐには引き出さず、視線をそこに向けたまま、微妙に腕が動いている。


 手紙の差出人をチェックしているに違いない。


 石野の反応は?

 笑顔?

 それとも、照れ?


 隠れて見ているとは言っても、緊張から鼓動は高鳴っている。


 少しして、下足箱から引き出された石野の右手は何かを握りしめている。

 それは握りつぶされた俺の手紙。


 封筒から取り出されることもなく、封筒のまま石野の右手の中で、くしゃくしゃになっている。


 何かの間違い?


 そう思いたい俺の視線は、石野の右手にロックオン。

 石野は右手に掴んでいる握りつぶされた状態の俺の手紙をぞんざいにポケットに突っ込んだ。


 それが石野の俺への答え。


 あれだけ悩みながら選んだ封筒も、中の便箋に書かれた俺の想いの結晶も、一瞬にして石野のごみになった。



「よう、伊藤。

 帰らないのか?」


 心を潰されそうな俺に、通りすがりのクラスメートが声をかけて来た。

 その声に石野が振り返り、俺がいる事に気づき、慌て気味に自分の靴に履き替えて、立ち去って行った。


 きっと石野は、もう二度と俺にあの笑顔をみせてくれないのだろう。


「帰るよ」


 ムッとした口調でクラスメートにそう言いながら、俺はポケットに手を突っ込んであの装置のボタンを押した。



 一日戻ったその夜。

 俺は眠れぬ夜を過ごした。


 振られた胸の痛み。

 変わらない未来。



「石野を諦めて、茉実を選べばいいじゃないか」


 不純な俺がそう囁く。


「振られたからって、茉実に乗り換えるなんて」


 純な俺はそんな都合のいい考えを否定したくなる。


「一日戻したんだから、振られた事実は誰も知らない。

 黙っていたらいいじゃないか」

「黙っていても、俺は知っている。

 俺は石野に振られた事を忘れられない」


 胸の痛みがよみがえって来た。

 それも二回も。二日続けてと言ってもいい。


 一度振られた時に諦めればよかったんだ。

 何度繰り返したって、結果は変わる訳がない。


 理由は簡単だ。

 俺が変わっていないのに、大きな結果が変わる訳がない。

 つまり、あんな装置に頼ったって、未来は変えられないんだ。


 その生きた証拠が、あの男なのだ。


 だと言うのに、あの装置を使えば何かが変わるなんて幻想を抱くなんて。


 もし、あの日、あの男に会わなければ、きっと今頃は茉実と付き合って、リア充な生活を送っていたかもしれない。


 俺はバカだった。

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