ラブレター
くらくらする感覚が収まると、俺は深いため息をついた。
「ふぅぅぅぅ」
心臓は今もばくばくしている。
好きな女の子に告ると言うのは精神的なプレッシャーが大きい。
こんな事をさらさらと言える奴は本気じゃないからじゃないかと思わずにいられない。
しかもだ、振られた事は俺に重くのしかかってきている。
心が痛むのを感じながら、振られた事実は今のこの世界には存在しない。
やり直すチャンスだってある。
そう思う事で、俺は痛む心をだまし、めげそうな心を奮い立たせた。
とは言え、直接告るのは精神的負担が大きいし、俺の気持ちを伝えるには時間が少なすぎる。
やっぱ、手紙だ。
そう決めた俺は選ぶのに迷った末、淡くて小さな花柄が描かれ、ほんのりと香る便箋と封筒を買って帰った。
窓の向こうは星が輝く夜空。
自分の部屋で机に向かった時はまだ空は青かったはずである。
机の上に置かれた全く文字が書かれていない花柄の便箋と、ボールペン。
それを見つめて腕組みをしたまま、一体どれくらいの時間が流れたのだろう。
このままでは、書き上げることができない。
何を書けばいいんだぁ!
叫びたくなってしまう。
その時、俺は閃いた。
伝えたい。
だと言うのに、伝え方が分からない。
その苦悩全てが、石野への想いなのだ。
だから、その気持ちを書けばいいんだ。
そう決めた俺は、本能の、じゃなくて、情熱の赴くまま便箋の上にペンを滑らせ始めた。
「誰よりも好きだ。でも、どうしたらこの想いを分かってもらえるんだろう」的な文章を、何度も、何度も書き直しながら、ようやく納得いく文章に書き上げると、便箋を封筒に入れてカバンの中にしまった。
「ふぅぅぅ」
そんな風に息をはき出し、達成感に包まれた。
後はこれをどうやって、石野に渡すかだ。
廊下で手渡し。
最初に考えはしたものの、かなり照れてしまう。
それは俺だけでなく、石野もだろう。
教室の机の中にそっと忍ばせておく。
教科書やノートに紛れて、気づかれないかも知れない。
下足箱。
これなら絶対気づくし、石野の反応を直接確かめる事だってできる。
これ以外にない。
そう思いながら、その瞬間の石野の姿を想像してみる。
下足箱を開け、そこに手紙がある事に石野が気づく。
それはどう見てもラブレター。
ポッと頬を赤らめながら、手紙を取り出す。
誰から?
石野が封筒の裏に書かれている俺の名前を確かめ、少し嬉しそうな顔をして、俺からの手紙を一瞬胸に抱きしめる。
そんな姿を誰かに見られたのではと、恥ずかしそうに辺りをきょろきょろと見渡してから、慌てて手紙をカバンの中にしまう。
そんなかわいい石野の姿を想像して、拳に力を込める。
明日、決行である。




