97話 フェイマの街 6
「マスターが・・・」
「負けた? あの、マスターが・・・」
周囲から呆然としたような声が聞こえてくる。
そして、勝負が決した瞬間、僕は新しいスキルを手に入れていた。
テルアは、符術のスキルを覚えた!
符術。どうもカード類を扱う術みたいだけど。詳細はじいちゃんに教えてもらうか、スキル大全集で調べてみようと思った。
「・・・・・・俺の負けだな。まさか、魔神の役が来るとは思わなかったぜ」
まいった、と苦笑するマスター。マスターはこの結果を受け入れてるみたいだけど、周囲はそうはいかないみたいだ。
「グース。あなたなら、こんな子ども圧倒的に勝てたはずよ。それなのにこの無様な結果は何?」
マスターの後ろには、ナイフをマスターの首に当てた綺麗な女性がいた。赤いドレスに身を包んだ、金髪の女性だが、優しい言葉とは裏腹に、ナイフをマスターの首に埋めようと力を込めていた。
「勝ち負けは、常に運勝負だろ。負けることもそりゃある」
「そんな言い訳あたしに通用すると思う?」
マスターの首から血が流れ出す。
「思わない。だから、煮るなり焼くなり好きにし・・・ろ!?」
耐えきれずに、僕は手元にあり、投げやすいそれを女の手に当てた。女はナイフでそれを弾くが、すぐにガタガタと震え、叫び始める。
「ぎゃぁああああ!? あたしの腕が! 髪がぁああああ! 来るな、来るな、来るなぁあああ!?」
ナイフを所構わず振り回し始める女の豹変した姿に周囲が呆気に取られる中、僕は黒のカードを全て回集しアイテム袋に放り込むと、卓に飛び乗り、マスターの側へと行く。
「こっち! レーラも! 逃げるよ!」
マスターの手を引きながら、僕らは出口目指して駆け出した。当然、僕らを逃がさないよう追っ手がかかるんだけども。
「十連投げナイフ!」
ナイフ投げのスキルで相手を負傷させて、鋼糸でナイフを回収し、僕らは賭博場を飛び出した。
「レーラ! ひとまず表に逃げよう! どう行けばいい!?」
「あ、えっと。こっち!」
レーラの道案内で、僕らはフェイマの街の表へと出るのだった。
ある程度走って、追っ手が来てないことを確認すると、僕らは息を吐いた。ちなみに、僕はレーラをお姫様だっこしてる。いや、だって、レーラが一番遅かったから。マスターのために加減して走ってたから、ある程度余裕あったし。
レーラの道案内で表に帰ってきたのはいいんだけども、人がまばらだ。こんなところをうろついていたらすぐに見つかってしまう。
「な、なぁ。さっきから俺の手に何か巻き付いてるみたいなんだが」
マスターが恐る恐る自分の手を見下ろす。そこには、僕が投げた物が巻き付いていた。ギョロギョロと目玉を動かす、チャップからもらった木彫りのお守りだ。
「あ、大丈夫。それ、ただの木彫りのお守りだから」
「ただの!? その修飾語は絶対に間違ってる!」
「え〜? でも、この木彫りのお守り、知らない間に目玉が増えたり、害そうとする相手に邪眼を仕掛けたりするぐらいの普通のお守りだよ?」
「それ、普通じゃないから! 絶対に普通じゃないから!」
そうかなぁ?と首を傾げた僕の後ろから、ずしっと重みがのっかかった。
僕が振り返ると、そこには。
何故か仮面のお化けのような魔物(?)が僕の肩に乗ろうと奮闘していた。
「「ミルカスレーグイ!?」」
ミルカスレーグイ?
この仮面お化けのような存在の名前かな?
「げひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
何故か、すごい上機嫌で僕の頭を咬んできた!
「いた!? かまれた!?」
テルアはミルカスレーグイの祝福を受けた!
ミルカスレーグイの召喚ができるようになった!
これ、どういうこと?
なんとかできた(^_^;)。次→6/1 8時




