96話 フェイマの街 5
グースは黒のカードを卓に配り終えてから、眼前の少年と目を合わせた。
少年はまだカードにも手を触れていない。
「ルール説明をお願い」
そういえば、勝負方法の詳細なルールを話していなかった、とグースは自分の失敗に気づく。
「ルールも知らない内から、あんなことを言ってたのか? 正気の沙汰じゃないな」
「あはは。マスターさんにのせられちゃったんだよ」
少年は朗らかに笑ったが、次の瞬間、無表情となった。
「説明を」
少年から放たれる気迫はすごく、ピリピリと身体につきささるかのようだ。
「あぁ。このカードで役を作ってもらう。役の種類は、前とやっていたカードと同じだが、一つ違うのはカードには魔物の絵札が追加されている」
「魔物の絵札?」
「魔物の絵札は、神様の絵札とは相性が悪い。神様の絵札と魔物の絵札が同じ役内で入った場合、その役から指定の点数が減点される」
「へぇ。おもしろいね」
「だから、役をつくる場合は気をつけた方がいい」
「・・・そっか。どうしようかな。魔物と神様のどっちも入ってて減点されない役ってないの?」
少年は悩むふりをしながら、さりげなく問いかけてくる。
「一つだけある。絵札の、魔王、魔神、魔物三体を入れた役。「魔王降誕」だ。ただし、狙ってできるような役じゃない。俺も、お目にかかったことはない。役自体は、一番上から二番目の強い役になる。カード交換は三ターンまでだ」
少年は少し考える素振りを見せたが、すぐに笑顔を見せた。
「それいいね。じゃあ僕はそれを狙うよ」
こいつ、バカか? 話を聞いてたにも関わらず、そんなことを宣言する少年にグースは少年の考えがわからずに戸惑う。この少年は。本当にそれでいいのだろうか。
「始めようか」
第二ゲームが本格的に始まった。
ルール説明を聞いていた僕は、イカサマをしないというころがどれだけ信用できるか、質問した。
「さっき、イカサマなしのゲームだって言ってたけどさ、それってどこまで信用できるの?」
「ああ、そうか。そこについては説明してなかったな。この黒いカードが相手じゃ、けしてイカサマはできない。何故なら・・・」
「!?」
「やろうとした瞬間、この通りだ」
黒いカードから、手が出ていた。手は魔物の手のようだ。がっちりとマスターの手に食い込んでいる。
「今のは説明のためだ。離してくれ」
マスターの言葉を合図に手が消えた。
「だから、イカサマなしの公平なゲーム?でも、カードを自分が有利なように混ぜておくこともできるんじゃないの?」
「そんな風に混ぜたところで、無駄だ。カードにそっぽを向かれて、負け確実だからな。このカードは生きてるんだよ。賭博師同士の揉め事が起きたとき、こうして勝負に使う。イカサマも、不正もカードが許さない。自分の心と純粋な運が試される」
「なるほど。だから、賭博師同士の仲裁に使われるんだね」
1回目のターン。僕は手持ちのカードを三枚交換した。
交換してきたのは全て数字だった。
2回目のターン。絵札が来た。でも、まだ足りない。
最後のターン。
「思いきった真似をするな」
「あはは。フルチェンジって、やってみたかったんだよね。かっこいいでしょ?」
僕は全ての手札を交換した。まだ、裏のカードが何か、僕は見ていない。
「「ショーダウン」」
マスターは役ができていた。数字と、神様の役だった。でも、色はバラバラだ。
僕は、一枚カードを開いた。水の魔物のカードだ。
もう一枚。地の魔物のカード。
さらに三枚目。風のAの数字。
四枚目。火のAの数字。
最後の五枚目。開いた瞬間、周囲からどよめきが起きた。
「魔神の・・・」
最後の五枚目は、神様でありながら魔物のカードを束ねられる、魔神のカード。
勝負は僕の勝ちだった。
次、19時投稿目指しますが、無理なら6/18時になります。(^_^;)




