94話 フェイマの街 3
僕がチンピラ風の男たちを蹴散らすのに、そう時間はかからなかった。なにせ、相手は僕の姿を全然捉えられてないし。それで、こちらは攻撃し放題。負ける方が難しい。
なので、決着には五分も掛からなかった。
「大丈夫だった?」
僕がそう問いかけると、少女はこくんと頷いた。ついで、可愛らしい笑顔を見せてくれる。
「助けてくれてありがとう。一人だったら、絶対にこの子を奪われてた」
そう言い、少女は丁寧にお礼を言いながら、僕に対して頭を下げた。
「よ、よしてよ。元々、勝手に動いたのはこっちだし」
「すごく強かったね。強い秘密でもあるの?」
そんなものはない。ただ、僕の場合、しごかれまくったからね。そのボコられた記憶が、僕を強くしているとは思うけど。
と、この場に留まり続けると、またこいつらが目を覚ましたときに厄介だ。
僕らは場所を移動した。
「私の名前、レーラっていうの。あなたは?」
「僕? 僕はテルア・カイシ。今日この街に来たばかりだよ。できれば、レーラにも協力してもらって、みんなと合流したいんだけどね」
「ねぇ、一つお願いがあるんだけど。私のお願い聞いてくれたら、表通りまで案内するよ?」
また、さっきみたいな輩が出てこないとも限らない。別にレーラを送り届けるのにそう苦労はしないだろうとたかをくくっていた。でも、レーラが出したお願いとは。
「私を賭博場まで送ってほしい。この街にいるはずのお父さんを見つけたいの」
僕にとってかなり無茶な注文だった。
そもそも、僕はこの街に詳しくない。
家族を探すと言われても、あまり心が動かない。さらに、レーラはどうやらあきらめるつもりはないらしい。
さっきの男以外で、狙われないとも限らないし、ここで見捨てるのも少々寝覚めが悪い。
僕は嘆息した。どうも、レーラを助けたときにこういう流れが既に出来上がっていたとしか思えないけど。
「お断りは・・・させてもらえなさそうだね」
「してもいいけど、その場合、多分お仲間さんに会えるのがかなり難しくなると思うよ?」
本当に心から叫びたい。なぜこうなったんだ、と。
僕は、嘆息した。
そして、僕とレーラの賭博場巡りが始まった。賭博場で情報を得たい場合は、基本的にカードで勝負して決める。なので、僕は嫌々参加せざるを得なかったんだけども。気づけば、眼前にすさまじいまでの金貨の山が出来上がっていた。
あれ? なんで?ちんけな情報一つじゃ足りないって言われて、お金賭け始めたのが原因? うん、多分それだ。
僕は、お金があってもあんまり使わないから、荒稼ぎしても意味ないよ。
「こりゃ、俺たちじゃ相手にならねぇ! 誰か、マスター呼んでこい!」
しかも、なんだか話が大きくなってるし。一体、いつになったらみんなと合流できるんだろ。あーあ。
そう考えていた時が、僕にもありました。はい。
「ショーダウン。ファイブカードだ、坊や」
呼ばれてやって来たマスターという男は、かなり強かった。っていうか、初めて負けたよ、カード勝負。それは別にいいんだけど。でも、これは。
「イカサマありきの勝負、か。ちょっとなめすぎてたかな」
僕の呟きが耳に入ったんだろう。マスターの瞳が細められ、周囲の観客もざわめき出す。
「イカサマなんてしてない。お前、言いがかりをつける気か」
「うーん、だって」
僕は、困りながらも自分の手持ちのカードをオープンする。
「僕も、なんでかしらないけど、ファイブカードだからさ」
マスターの目が僕を射殺さんばかりに殺気だった。




