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88話 冒険者ギルドの探索 10

値段→お金に変更。

「まぁ、そこは疑問に思いもするじゃろう。じゃがな、テルア。これは恩返しならぬ、恨み返しの一環なのじゃ!」

 堂々と胸を張って言い放ったじいちゃんの答えに、僕は疑問符しか浮かんでこなかった。

 えーっと恨み返しって何?


「勝手に言葉をつくらないでよ、ジャスティス。ほら、テルア君、呆然としてるよ?」

「どういうこと? 恨み返しって」

 僕が、ガンダムッポイノの方を向くと、ガンダムッポイノの説明が始まった。


「つまりね、テルア君が冒険者ギルドに来た時、妙な輩に絡まれたこと、あったでしょ? で、さらに、ほとんど誰もそれを止めようとしなかったもんだから、ジャスティスが怒っちゃってね。テルア君の課題期間は我慢してたみたいなんだけど、それも終わっちゃったし。これでも、なんとか宥めすかして、冒険者ギルドの建物を完全に消そうとしたのを止めたんだよ?」

「あれ、てっきりじいちゃんなら冒険者らをボコ殴りで、済ませると思ったのに」


 僕は驚いた。てっきり最初みたいに、冒険者らを圧倒するものだとばかり思ったからだ。


「何、甘いこと言っとるんじゃ。儂はな、やられた分の借りは絶対に忘れんし、十倍返しはしないと気が済まんのじゃ」

「何気に、すごい性格してたんだね、じいちゃん」

 まぁ、魔神だからね。そういう性格設定なのかな?


「そうほめても何も出ては・・・あぁ、そうじゃ、テルア! これを渡すのを忘れとったわい!」


 何か出てきた! さらに、もらったよ! じいちゃん、僕に甘すぎ!


 テルアは、スキル大全集上中下巻セット(魔神のサイン入り)を手に入れた!


「なっ!? こ、これ、まさか・・・!」

 僕は、本を持つ手が震えた。分厚い。軽く一冊千ページ以上はある。だけど、これはとんでもない代物だ! 中をパラパラとめくり、僕は自分の予想が正しいことを知る。


「ふっふっふっふっふ。そこにはの、魔法以外のありとあらゆるスキルについての説明が書かれてるんじゃ! 消費SP、スキルの効果、持続時間、効果、さらには裏技的な使い方やコンボに適した組み合わせ等も書いてある! この本を書きあげるのに、儂かなり睡眠時間削っちゃったぐらいなんじゃ。儂の渾身の三冊じゃ!」


「じいちゃん、すごい! すごいよ、これ! こんな、こんな・・・最高の鈍器をくれるなんて!! しかも三冊も!」


 じいちゃんが、ずっこけた。僕らの会話を聞いていた他のみんなは大笑いしている。ナーガだけが、「テルアに、鈍器を与えるだと!? ヤバイ、ティティベル様に報告しねぇと!」とか叫んでる。ティティベル様と連絡取れるんだね、ナーガ。ちょっとうらやましい。


「じいちゃん、冗談だって。さすがに最高の鈍器を三冊ももらえたって本気で思ってるわけじゃないから」

「鈍器だから喜んだわけではないんじゃな!? ちゃんと本の中身にも喜んだんじゃな!?」

「そりゃ、もちろん。こんなにじいちゃんが頑張ってくれるなんて、思ってなかったよ。本当にありがとう、じいちゃん。大事にする」


 僕は、もらった三冊の本を抱えて、笑った。じいちゃんが、呆けたように僕を見つめている。他のみんなも少し驚いたような顔をしてるけど。どうかした?


「どうしたの、じいちゃん?」

「・・・・・・・・・。」

 僕が小首を傾げると、ポンポンと後ろからガンダムッポイノが肩を叩いてきた。

「あのね、ジャスティスは多分、笑顔でお礼を言った君の姿があんまりにも嬉しそうだったから、許容量オーバーしてるんだよ。しばらくしたら復活するから大丈夫」

 そうなの? こんなにすごい贈り物なら、あれぐらいの笑顔は当たり前のような気がするけど。

 口に出してたんだろうか。クレストのおじさんは手を横に振った。


「いや、そういう問題じゃねぇ。俺はお前のことをじいさんほど可愛がっちゃいねぇが、さっきの笑顔は、向けられるだけでこっちまで幸せになってきそうな、そんな笑みだった」

「うん、オイラも幸せな気分になったよ!」

「あんまり同意したくはねぇけど。俺もテルアの笑顔、いいなって思った」

 口々に告げられる事実に、僕は困惑してしまう。まぁ、一応ほめられたってことでいいのかな?

 じいちゃんはまだフリーズしてるのでちょっと置いとこう。それよりも、聞きたいことがある。


「そういえば、この建物って結局どうするの? 冒険者ギルドになるの?」


「そこまではわからないけど。街中のちょっとした探索ができる迷宮として、冒険者ギルドのギルド長に売り付けるつもりだよ。そうすれば、懐も潤うし、SP集めにもなるしね。管理は僕が修練の塔と一緒にやればいいし。安全措置として、各階に緊急脱出できる水晶と、一度でも訪れた階へ転移できる水晶を置くつもり。練習台の敵になってくれそうな魔物はそのままって言いたいところだけど、ブラッドたちには撤収してもらわないとダメだね。強すぎるから」

 あぁ、確かにブラッドたちと戦闘しようものなら普通に全滅すると思う。

 でも、元々ここは冒険者ギルドの建物のはずなのに、勝手に改築してさらには売り付けるとか、できるのかな?

 と、思った僕だけど。


「ジョブ水晶を返すって言ったら、余裕で買うはずだよ」

 あぁ、なるほど。確かにね。物で釣ろうってわけか。冒険者ギルドのギルド長さん、ファイト。


「大体話は聞き終えたし、そろそろ脱出しないとなぁ」

 僕が呟くと、それを聞き咎めたのはロードだった。

「えーっ! もう出ちゃうのか!? オイラ楽しくやりたいのに!」

 など、叫んでいたが無視して、僕らは話を進める。

 こうして、ようやく僕らは建物から脱出した。


 出口にはあの冒険者ギルドのおじさんが待ち構えており、首尾を聞いてきたんだけど、僕はすぐにじいちゃんたちにバトンタッチしたから、詳しい話は聞いてない。


 その後、冒険者ギルドのギルド長さんが、どれだけのお金を出したか知らないけど、あの建物を買い取って、冒険者ギルドにしたそうだ。冒険者ギルドにする際、色々もめもしたけど、なんとか通ったらしい。

 こうして、冒険者ギルド騒ぎは幕を閉じたのだった。

 



次→19時

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