86話 冒険者ギルドの探索 8
さて、なんだかものすごく贅沢装備をさせてもらってるんだけど、無事に僕とナーガが十一階に上がると、そこは冒険者ギルド地下一階の訓練所になってた。
え? あれ? なんで地下一階だったのに、受付の階よりも上に来てるの? ナーガ、君一体どんな工事したの!?
思わず振り返り、本人を問い詰めると。
「ん? 改装した時に邪魔だったものを一旦外に出して、出来上がってから中に運んだんだって。んな、驚くことねぇだろ? 運ぶときは力持ちのハイドに手伝ってもらえばいいし。じっちゃんに頼めば荷物の重さを軽減してもらえっし」
「驚く! 十分驚くよ、そこは! 何、引っ越し作業的なことに魔法と労力を割いてるの、二人とも!」
「そっかぁ? でも、ここは別に仕掛けって特にないんだよなー。素通りしちまってOKだし」
それなら、さっさと素通りしちゃおう。
と、思ったんだけど。なんか、さっきからガサガサガサガサ変な音がしてるんだけど。まさか。
僕が振り返ると、そこには不気味なオブジェがあった。
オブジェ、だよね? 置物のはず・・・だよね? なんで動いてるの?
「あ、そういや。ちょうどナイフ投げの練習にいいからってんで、チャップがかかしをナイフ投げの的にしてたな。で、その後かかしが動き回るようになって、ますます練習に身が入る! とか言ってたっけ」
へえ。そんなことが。つまり、チャップが原因てことだね。ん? 動くかかしが僕らに何かを手渡してきた。
そこには、でかでかと。
果たし状の文字があった。中身を確認すると、どうやらかかしの赤く印がしてあるところに武器を命中させないと、ここを通さないらしい。
いい度胸だね。こういうケンカなら買うよ?
「ナーガ。半分やる?」
「ん、そだな。半分やるか」
当然、投げナイフと弓矢は、一つも外すことなく的に命中。かかしたちの称賛を聞きながら、十二階に上がった。
さて、十二階では、一人僕らのことを待ち受けていた。
「何やってるの、ガンダムッポイノ?」
「えーっと、これには色々事情があってだね・・・」
「色々事情があるっていっても、ありすぎな気がするんだけど・・・」
ガンダムッポイノは、何故か猫耳のヘアバンドをつけて、ミカンが書かれた段ボール箱の中に正座した状態で入ってた。さらに首から下げられた「拾ってください」という文字が書かれたプレート。捨てネコでも演じているらしい。
その猫耳ヘアバンはどこから出したの、とか猫耳似合ってないよ、とか色々言いたいことがあるんだけど、とりあえず。ちょっとだけ、悪ノリしてみる。
「ねぇ、ナーガ。あれ、飼っちゃダメ?」
僕がガンダムッポイノを指差すと。
「あれを飼うのか!? 勇気あんのな、テルア。俺なら絶対に見捨てるけど」
ナーガは一応反対しつつも概ね同意してくれる。
「いや、だって。ここで僕が拾わないと、あの格好のまま、この階にしばらく放置だよ? 嫌じゃない、それ?」
ナーガは腕を組み、むむむっと唸りながら考えた。
あれをこの階に放置。僕ならさすがに嫌だね。
「うん、俺もやだ。あれ放置とか、なんかヤダ。後から来た人も迷惑しそうだし」
でしょ?と僕は同意を得ることに成功する。
「助かったよ。でも、僕のこれなんてまだ生易しい方なんだけどね。最上階、地獄だから。やめた方がいいって一応、止めたんだけど」
何があったの!? 何が!?
僕の口からはちょっと・・・とかもったいぶるガンダムッポイノの態度もすっごく不安が増すんだけど!?
「まぁ、行けばわかるよ、行けば。ここからなら、僕の転移で最上階にまで上がれるんだけど、覚悟はいい?」
何の覚悟!? い、行きたくないけど、じいちゃんに会わないわけにもいかないし。
怯みながらも、ガンダムッポイノの言葉に頷き、転移で最上階にまで一気に移動した僕らは。
見てはいけないものというのをもろに見てしまい、ガンダムッポイノの言葉の意味を、否応なく悟らされたのだった。
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