84話 冒険者ギルドの探索 6
さて、シヴァたちとの戦闘が始まったのはいいとして、僕はかなり攻めあぐねていた。と、いうのもみんなは役割分担がきっちりとしているのだ。
一番敏捷が高いブラッドが、超音波とその動きで相手を撹乱させる翻弄役。
それに合わせて、ハイドの糸攻撃とチャップのナイフが飛んでくる。が、ただ飛んでくるだけではなく、予め設置した様々な罠を駆使してくる。
攻撃しようにも、チャップは防御力の高いハイドの足の影に隠れているし、迂闊に近寄れば、ハイドの足から強力な攻撃が放たれる。つまり、手が出しにくい状況というわけ。
こんな連携を、たった一週間で形にしちゃったみんな、すごいよ、本当。
さて、どうしたものかな。遠距離攻撃が出来ないわけではないんだけど。
うーん。
まず、最初に狙うべきなのは、防御力の低いブラッドなんだろうけど その敏捷を活かして、すぐさまハイドのところまで戻り、ハイドを盾役にしてしまうため、狙うのはかなり難しい。
チャップもブラッドと同じ。
と、なると最初に攻撃できるのって、ハイドに限られてくるわけで。
でも、多分、それがみんなの狙いなんだよね。ハイドを倒さないと、他のみんなに攻撃が通しにくい、ということはハイドを攻撃せざるを得ないんだけども、ハイドはみんなの中で断トツに体力とHPが高く、物理攻撃は効きにくい。
なら、魔法はどうかというと、弱点ならそれなりに削れるけど、多分その場合の対策もとってありそうなんだよねー。
なら、ちょっと特殊なのいってみよっか。
「ナーガ。ちょっと耳貸してくれる?」
僕の近くで、ブラッドの接近を阻むべく、弓矢で牽制してくれていたナーガに小声で作戦を伝える。
なるほど、と頷かれやってみる価値ありと判断してくれた。ありがたいね。
ナーガには全面的に僕のサポートをしてもらうことを素早く取り決めた。合図と共に、僕らは二方向に散った。
僕は、自分にスピードアップを掛けて、ハイドに魔法が掛かる範囲まで接近する。
さて、うまくいくかな?
テルアはダークネスを使用した! ハイドの攻撃力が下がった!
次の魔法は少し待機時間が長くなるから、その間は僕も物理攻撃で少し撹乱するか。
僕が取り出したのは、鈍器にもなるじいちゃんお手製本×2。
それに鋼糸をくっつけると、変型したモーニングスターの出来上がり。
よいしょっと!
僕が本をハイドにぶつけようとしたら、ハイドはマズイと感じたのか、近くの樹上に飛び上がった。鋼糸で、木にピッタリ張りついてる。
僕はいい的だと、鋼糸を操作し、ハイドに本を当てようとしたんだけども。
すかさずブラッドが飛来して、本をキャッチした。ただし、勢いがついていた本を受け止めたため、かなりのダメージと引き換えにだけど。
テルアの攻撃! ブラッドに772のダメージ!
それでも、この一手はなかなかやるなと僕に思わせた。
その間に僕の魔法が完成するけど、同時にハイドが僕を押し潰そうと上から降ってくる。それと共に、チャップのナイフ攻撃。だけど、甘いよ。僕は鋼糸を用いてすべてのナイフを空中で絡めとった。
「ナッ!?」
「もっと鍛練が必要だね! 返すよ!」
僕は絡めとったナイフを手にすると、チャップに向けて投げ返した。
テルアの呪いが発動! ハイドは身体弱化にかかった! ハイドの全てのステータスが下がった!
テルアの十連投げナイフ! チャップに522のダメージ!
「グッ」
上から落ちてきたハイド。これを避けるのはちょっと無理だ。それなら、魔法を使うまで。
テルアのアースランスが発動! ハイドはアースランスを避けた。
さて、あとは待つだけだろうか。
と、思ったら、空から降ってきた粉が僕に降りかかった。
魔封じの粉の効果が発動! テルアはしばらく魔法を封じられた!
げっ。調子こいてたら魔法封じられちゃったよ。物理攻撃のみってきついね!
でもね、最後の作戦の肝は僕じゃないんだ。
「パワーダウン!」
ナーガのパワーダウンが発動! ハイドの攻撃力が下がった。
なんと、ハイドの体が小さくなってしまった!
よしっ! 狙い通り!
ハイドの影に隠れていたシヴァとチャップが狙える!
自分にパワーアップとスピードアップを掛けて、僕は広範囲の剣術スキルを発動させる。
「花烈大破!」
チャップは自分の剣で、何撃かは防いだが、油断していたシヴァはまともに食らう。さらには小さくなったハイドも範囲に入っていた。
テルアの花烈大破! シヴァに2516のダメージ! シヴァを倒した。
チャップに678のダメージ!
ハイド(小)に4125のダメージ!ハイドを倒した。
ナーガの攻撃! ブラッドの急所に直撃! 一撃死の効果が発動した。ブラッドを倒した。
「やっと当たった」
言葉と共に、ナーガが息を吐く。相当集中して射ったのだろう。少し、疲労がみてとれる。
残るは、チャップだけだ。
「クッ。ウォオオオオオオ!」
もはや、勝ち目はないと悟りはしたものの、まだ、あきらめずに剣を抜いて襲いかかってくるチャップに敬意を表して、僕は今の剣術スキルの最高の威力を誇る技をお見舞いした。
「光刹両断」
僕がチャップの後方に移動するとほぼ同時に、光の軌跡がチャップの体に走る。
「グァァアアアア!」
テルアの光刹両断が発動! チャップに3741のダメージ! チャップを倒した! 魔物軍団は全滅した!
ぱこん、と軽い音と共に階段への扉が開かれたんだけども。
「なんで、階段が天井にあるわけ?」
と、いうか。あれ、どう見ても。
「いや、縄ばしごがいい! とか、リクエストがじっちゃんからあって、それで。忍者屋敷も捨てがたいって言ってたっけか。俺は忍者が何かわかんなかったんで、勝手にやらせてもらったがな」
ぶらんと縄ばしごが降りてきた上階を見上げて、僕は今更ながらに先行き不安になるのだった。
次→19時
 




