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81話 冒険者ギルドの探索 3

「うわぁ、どうもログアウトも制限されちゃうみたい、この中」


 他に支障がないかと、確認作業に入ってた僕がうっかり口に出すと、マサヤが「はあ!?」と言いながら僕の方へと駆け寄ってくる。


「ログアウトはできるんだけどね、次に出現する場所、冒険者ギルド内固定ってなってる。クリアーするまで出られない、恐怖の冒険者ギルドってとこかな」

「お化け屋敷じゃあるまいし」

「そうだよね。お化け屋敷だったらもうちょっと楽だったんだけど」


 お化け屋敷かぁ。ちょっと苦手なんだよね。あの薄暗くて不気味なものいっぱい出ます!って雰囲気が。

 昆虫類は大丈夫なんだけど、お化けはなんかね。昔行った海沿いの崖でえらく気分悪くなったことをきっかけに、変な場所には近寄らないようにしてるし。

 怖い話の漫画なら大丈夫だけど、幽霊が出るスポットとかは絶対に行きたくないね。


「お化けは苦手だな〜。可愛くないし、もふもふでも多分ないし」

「基準そこ!?」

「それ以外にどんな基準があるの!?」

「怖いとか、見るの嫌とか、そんなんだろ、普通!?」 

「もふもふ愛好会会長の基準はどれだけ手触りが良くてもふもふしてるかだよ! 次に可愛さ! 最後に性格!」

「そんな基準、聞いてねぇし!?」


 その後、それじゃお化けにもふもふで可愛くて性格もいいお化けがいたらどうするんだ?と、聞かれたので即、お友だちになってください!と頼み込むと答えると、マサヤはもう何も言わなかった。そうこうしてるうちに、五階まで戻ってきていた。すると、冒険者ギルド内に、僕の知り合いがいた。


「あ! やっと帰ってきたな、テルア! どうだ、この中の感想!? すっげぇ頑張ったんだぜ、俺!」

「ナーガ!?」

 僕とそう身長の変わらないダークエルフのナーガが、テーブルに座っていたのだった。


「ナーガ、この冒険者ギルドの有り様、君の仕業だって聞いたんだけど?」

 とりあえず、正確な状況把握のために僕が質問すると。

「そうそう! あの魔神のじっちゃんに頼まれたんだよ、ちょっとダンジョン風にしてくれって! 仕掛けとかは、ガンダムッポイノって人に造ってもらったんだぜ! すげぇだろ!? ちゃんと仕掛け作動して、俺としちゃあ大満足の出来になったんだけど・・・テルア?」

「このバカナーガ!」


 僕は手加減しつつ、アイテム袋から出した本で、ナーガの頭を叩いていた。

 若干ダメージ入ったみたいだけど、手加減してるから、死にはしないし、大丈夫だよ。


「あのね、こんな風に魔改造しちゃったら、冒険者ギルドに用事の人が入れなくなっちゃうでしょ? 三階の罠部屋まで運良く辿り着いても、四階の仕掛けで大体の人間はあきらめるしかないよ? そこのところ考えた?」

「え!? そうだったのか!?」

「知らなかったの!?」


 ナーガは、仕掛けのことはおまけくらいにしか思ってなかったそうだ。仕掛けが実はとんでもなかったのって、ガンダムッポイノの仕業? やりすぎだよ。


「まぁ、今ナーガに言っても仕方ないか。文句はじいちゃんに会ったときにするよ。あ、それと、紹介遅れたね。ナーガは初めて会うんだっけ。こっちは僕の友達のマサヤ。一応職業(ジョブ)は、剣士と格闘家。マサヤ。こっちが話してた踊り好きのナーガ。建物の魔改造が特技。趣味は当然踊り。踊りスイッチが入ったときは絶対に近づかない方がいいよ。一晩中踊らされるから」


「えーっと、マサヤだ。一応こいつの見張り役兼、友人だ。よろしく」


「へぇ、奇遇だな。あんたもなのか? 俺はナーガ。俺も、ティティベル様にテルアの見張りやるようにって言われてんだよ。本当、テルアってみんなに愛されてるから、時々その愛が暴走して、色々おかしなことになるらしいけどな」


「あぁ、知ってる。こいつが規格外且つ予想外なのは、俺もよーく知ってる。現在、それに巻き込まれてる最中だからな」


 はあ、と、同時に嘆息し二人は顔を見合わせると何故かガッチリと固い握手を交わした。


「「これからよろしく!」」


 出会って間もないはずなのに、意外と二人の息が合ってる。

 まぁ、仲良くできそうなら、それはそれでいいか。

 ひとまず、ここから上の階がどうなってるかをナーガに聞いてみると。


「確か十階が魔物部屋になってんだ。八、九階は魔神のじっちゃんの知り合いが物置に使ってるとさ。六、七階は、仕掛け部屋だって、ガンダムッポイノが言ってたな」

「ナーガはなんでここに?」

「俺? せっかくだからこのフロアを、ダンスホールっぽくしようかって思ってよ。材料とかも、テルアの魔物たちが集めてくれたし」


 みんなでちゃっかりナーガに協力してるし! あぁ、もう、みんな何やってるの!

 がしがしと、頭をかく僕に、マサヤがとどめの一言。

 

「やっぱり、お前の近くって、色んなやつが集まるのな、テルア」

「言っとくけど、その一人に君も数えられるからね、マサヤ」

「俺は普通の一般人だ!」

「僕も普通の一般人だよ!」

 と、反論すると。


「「いや、それは絶対ない」」

 ナーガとマサヤがまたしても唱和した。

 なんでそこだけタイミングバッチリなの!? ぐれるよ、ほんと!


 気を取り直して。ひとまず、僕らはナーガの案内で六階に上がってみた。すると、そこには。


「森林?」

 そこは、森林みたくなっていたけど、木の生え方がおかしい。それに、土壁で道を作っているようだ。人工物だとわかるが、どこか人の計算から外れた自然的な要素も感じる。半分人の手が入った人工物、といったところか。


「そー。これは確か、ハイドの希望だった気がすんな〜。確か、同族が行き場なくって、ハイドが何体か保護したんだと。んで、現在そいつらが徘徊中なんだ。あいつら、結構隠れるの得意だから、なかなか敵になると厄介なんだよ。ちなみに迷路階は七階まで続いてるから。それに、時間制限付きで、時間内に迷路クリアーできねぇと、迷路入り口に飛ばされんだ」

「制限時間は?」

「十五分」

 

 十五分か。かなり短い。蜘蛛たちがこの迷路に待ち構えているんだとしたら、多分、クリアーできない人もかなりいると思うんだけど。そんなことを考えていると。


「うわぁああん! また時間切れになっちゃったよ〜。七階まで行ったのにー!」

「ちくしょう! あの蜘蛛たち、階段前にわらわら出やがって!」

「クリアーできんのか、これ!?」

「移動時間短くなれば、まだなんとかなりそうなんですけど。すいません、光魔法、覚えてなくて」


 丁度、クリアーできなかったプレイヤーたちが、迷路入り口に出現した。


「あん? お前ら、この迷路に挑む気か?」

 鎧と剣を身に付けてるプレイヤーが、僕らの存在に気づき、訊ねてくる。


「そのつもりだけど。そんなに難易度高いの、この迷路?」


「もぅ、最悪だよ〜。難易度高いっていうか、制限時間があって、戦闘してる最中に時間切れになるの。階段前なんて、蜘蛛の巣窟だよ? あんなの越えられるの、高レベルプレイヤーだけだよ〜」

 女剣士の少女がぼやく。


「光魔法の、スピードアップ等を使えばまだなんとかなる可能性もあるんですが・・・」

 こちらは女魔法使いのプレイヤー。白いマントに、白い服で装備を固め、手には杖を持っている。


「俺ら、レベルはそこそこだし。光魔法の使い手いねぇし。あーあ、詰みだなぁ、こりゃ」

 格闘家の職業についてる男性プレイヤーがあきらめ顔で、はあ、と息を吐き出す。


「なぁ、テルア。話聞いてる限り、この人ら困ってるみたいだし、一緒に行ったらどうだ? お前なら、迷わない限り、十五分以内に迷路脱出できるだろ?」

「その自信の根拠、どこから来るの、マサヤ?」

「レベル詐欺師のお前のステ見てっしな。ちなみに、今のお前のステ、いくらぐらい? あれから下がるなんてことはないだろ?」


 マサヤの質問に答えたのは、僕ではなく、何故かナーガだった。


「テルアは、普通に運以外の全ステ、千オーバーだけど?」


「は?」

「え」

「待て」

「聞き違いか?」


 聞いていたプレイヤーはナーガの言葉に、笑おうとしたんだけども。


「テルアはレベル高いし。称号の影響もあって、それぐらいあんだって。実際、小細工なしの戦いなら、かなり強いと思うし」

「ナーガ、そこまで。さすがにそれ以上嘘をつかれる(・・・・・・)のは僕が困る」

 僕がナーガを止めると、ナーガは口をつぐみ、プレイヤーたちにニヤリと笑った。

「なーんて。信じちまった? さすがに全ステ千オーバーの化け物じみたやつなんて、そうそういねぇって」

 ナーガが僕の意図をきっちりと汲み取り、冗談にしてくれたのは助かる。

 

「ま、俺たちは俺たちで勝手に迷路に挑むから。じゃーな、四人組さん」

「行くよ、マサヤ」

 僕らは、森林迷路へと挑んだんだけど。


「マサヤ、遅い! あぁ、もう。もうちょっとレベルアップしといて、よ!」


 マサヤは、ステが低く、マサヤに合わせてると僕らも制限時間切れになりかねなかったので、僕はパワーアップを自分に掛け、スピードアップを掛けたマサヤを担いで走った。

 ちなみに、踊りで鍛えた脚力があるため、ナーガはスピードアップを重ね掛けすると特に問題はなかった。


「うわぁあああ! テルア、すと、ストップゥゥウウ!これ、こえ・・・ガチっ」

 

 走ってる最中に、しゃべろうとするから、マサヤは舌を噛んだようだった。

 悶絶してる。担いでるときにされると、走りにくいんだけどね。

 合掌。


「さすが、テルア! この迷路でも全然迷わねぇな」

「そりゃ、こっちっぽいってのは、大体わかるからね!」

「あはははは! やっぱ、テルアは規格外だ!じっちゃんが言ってた通りだな!」


 あっという間に迷路をクリアーして、僕らは階段前まで辿り着いた。

 ちなみに階段前にいた蜘蛛たちは。

「僕の名前は、テルア・カイシ・クレスト! 道をあけてもらうよ!」

 この一言で発動した覇王の威圧で、隙間ができたのでそこを階段まで疾走させてもらった。



 階段で八階まで上がると。

「ぎぎっ!ぎきぎぎぎっ!」

 見覚えのある小鬼の像に、僕らは出迎えられたのだった。

 


次→5/24 8時

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