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71話 最深部 

 僕に道案内をしてくれたアリは、結構おしゃべりなアリだった。

 何がすごいって、その情報がすごいよ。

 アリの巣の内部を知り尽くしているみたいで、入口から最深部への行き方、通り抜ける時に注意すべき場所、罠の回避方法はもちろん、果てはナガバの森の採取ポイントまでバッチリ知ってた。

 思わず、君何歳なの? とか聞くと、まだ生まれて間もないアリさんらしい。

 

 でも、アリさん曰く、大体のアリは巣の内部を知り尽くしているし、採取ポイントも、外回り担当をしたアリは誰でも知ってるそうな。

 ごめん、アリさん。僕、アリさんのこと、なめてたかもしれない。

 ナガバの森での注意点とか、注意すべき魔物の生息地帯とか、もうね、最後には黒鋼蟻のこと、ナガバの森の物知り博士と呼びたくなったよ、僕は。


 そんな感じで会話も弾んでたんだけども。唐突に、アリさんが止まった。


 ーーーーーーココカラサキ、キケンキケンキケン。イケナイ。


 もう、巣はほんの少し見えてるぐらいまで近づいている。

 だけど、アリさんはここまでみたいだ。名残惜しそうにするアリさんに、あとは任せて、と言うと、アリさんは僕のことを心配しながらも不思議そうに聞いてきた。


 キケンアルノニ、スキルツカワナイ。ナゼ?


 スキル? スキルってどのスキルだろう?僕がアリさんに訊ねると。


 オマエツヨイ。イアツツカエルハズ。イアツツカエバ、アイテノチカラ、ヨワマル。ツカワナイ、モッタイナイ。


 威圧かぁ。そういえば使えるはずなんだよね、僕。使い方よく知らないんだけど。

 アリさんに使い方を聞いてみた。

 すると、なんとも簡単なことに、自分の名乗りを上げるだけで使えるらしい。

 スキルレベルが高いと、自在に威圧を放てるらしいけどね。僕の威圧のレベルは低いめだからね。まぁ、使ってるうちにスキルレベルが上がっていくだろう。

 ま、とりあえず名乗ってみるか。


「えーっと。名乗りだったよね。僕の名前はテルア・カイシだ」


 何も起きない。なんで?


 ナマエチガウ。ナノリハスベテノナマエ、ヒツヨウ。


 全ての名前? でも、僕はテルア・カイシで合ってるはずなんだけど。ステータスプレートを確認してみて、僕は自分の迂闊さに気づく。


 名前:テルア・カイシ・クレスト


 そうだった。クレストのおじさんから、名前使う許可もらってたんだった。よし、なら今度こそ。


「僕の名前はテルア・カイシ・クレストだ!」

 アリさんがすぐさま僕の側から逃げ出した。ナガバの森の木々が、僕に対して、頭を垂れてる。どうやら、無事に発動したみたいだ。


「じゃあ、行ってくるね!案内ありがとう!」

 キヲツケテ。アレハツヨイ。ユダンシテルトヤラレル。

 アリさんに礼を言って、僕は巣に向かって一直線に跳んだ(・・・)

 一歩の跳躍で、五十歩ぐらい進む。そのままアリの巣の中へと入った。

 中は暗いので、ライトを使って巣の内部を照らしながら、僕は先程聞いた最深部への行き方通り、巣を進んでいく。


 最後は、かなり長い一本道だった。

 スピードアップの効果が切れたので、一旦かけ直しておく。

「この道を真っ直ぐ進めば、最深部だって、アリさんは言ってたんだけど。ナーガ無事かな?」

 僕は呟きながらも足は止めない。奥へ奥へ進む。やがて、前方に大きな部屋があることがわかった。

「ふぅ。やっと、着いたかな?」

 僕の前に、どろどろの黒い物を背負った大百足が現れた。

 ログが流れる。


 イベント戦闘が発生しました! ※この戦闘からは逃げられません。


 ??????が現れた!



 大百足は、あの掲示板で見た姿そのものだった。ナーガもいるはずだけど、まさかもう、やられてたりとかないよね?

 ただ、大百足には言いたいことがあった。


「あ、君がナガバの森で暴れてくれた大百足だね。僕はテルア・カイシ・クレスト(・・・・)。君に恨みはないけど、色んな魔物が君の存在に困ってるんだ。だから・・・」

 僕は、大百足に宣戦布告する。 

「悪いけど、倒させてもらうよ」



 アップ系の魔法を全て自分にかけて、僕は短剣で、大百足を狙った。狙いは目。だけど、大百足をとりまくどろどろの黒っぽいものが僕の攻撃を防ぐ。

 防がれたと同時に、短剣に異変が生じた。



 ??????はテルアの攻撃を防いだ!

 飛竜の短剣が瘴気に侵された! 攻撃力が0になった!


 黒っぽいものが僕の短剣に巻きついていた。そのまま、その黒っぽいのは短剣を握っていた僕の右手へ這い上ろうとしたみたいだったけど。指輪が光を放ち、黒っぽいのが指輪に吸い込まれる。


 月明かりの指輪の特殊効果が発動! 武器が浄化されました!


 へえ。物騒な指輪だと思ってたけど、なかなか便利だね。でも、短剣で攻撃するとさっきの二の舞だ。

 だから、じいちゃんに言われた方法で・・・って、今気づいたけど、大百足の後ろにいるのってナーガ? しかも倒れてるし!


 僕は、魔法で大百足の視界を防いでから、ナーガに駆け寄った。

 解析で見てみると、HPは残ってるけど、麻痺状態だった。

 ヒールと浄化をナーガに掛ける。

「ナーガ、大丈夫!?」

 ふらりとよろめきながらも立ち上がるナーガ。きれいな顔立ちが、土と砂で汚れている。


「なんで、来た? あいつは普通の武器じゃ倒せねぇんだぞ!」

「あ、やっぱり」

 ナーガの言葉に僕は納得してしまう。じいちゃんの言った通りだ。それなら、じいちゃんの助言に従えば、倒せるってことだね。

「あいつは、ただの魔物じゃない! あれは、神の眷属なんだ。通常の方法じゃ倒せねぇし、ダメージだって与えられない!」

「ええ! 神の眷属!? あれ、趣味悪すぎだよ! こないだの蠍といい、あんなの眷属にしてる神様いるの!?」


 僕が本気で驚くと、ナーガはガクッと脱力しかけた。どうかした、ナーガ?


「驚くところが違うだろ。俺の話ちゃんと聞いてたのか? あれは普通の方法じゃ倒せねぇんだ。なんとか逃げきるしか方法はねぇんだよ!」

 ナーガはあれを倒せないと思ってるみたいだけど。じいちゃんの言うことを試さないうちからあきらめるのは、僕の

やり方じゃない。


「ねぇ、ナーガ。それじゃあ、質問。あれを倒すのに必要な物って何?」

「それは・・・神の眷属は神の眷属でしか対抗できない。もし、あれを倒したいなら神の眷属を連れてくるか、あるいは・・・神の祝福を受けた武器を使うかしかない」

「なるほどね」


 情報の裏づけありがとう、ナーガ。これで、あれ(・・)がこいつに対してのもっとも有効な武器になるだろうことはわかった。あとは試してみるだけだね。


「じゃあ、ちょっと試してみますか。別にあいつの動きはそれほど速くないし、武器さえあれば倒せるってこともわかったから」

「ちょ、おい!?」

 後ろでナーガの声が聞こえてくるけど、僕は無視して、大百足に向かって走り出した。百足は僕を敵と認識したのか、僕の方を標的に定めてくれた。

 好都合!

 僕は、ウィンド・カッターを使用して、百足に放つとその隙をついて、鋼糸を百足の目と目の間にくっつけた。そこが急所みたいだからね。そして、アイテム袋に入れてあった物を取り出し、糸を巻きつける。鋼糸のおかげで、自動的に狙いはついてる。そのまま、僕は糸を引っ張った。

 百足は、ただの悪あがきと思ったのか、どろどろの黒っぽいもので防ごうとしたみたいだけども。


 ガンッ。


 ??????にクリティカルヒット!

 517のダメージを受けた!


 さらに、僕の攻撃は続く。


 手にしたそれで、百足の頭目掛けて角を振り下ろした。


 ??????にクリティカルヒット!

 1687のダメージ!


 そのまま、バシバシバシバシと、往復ビンタよろしく、百足の頭をめった打ちにすると、やがて猛攻に耐えきれずに大百足は倒れた。


「意外と攻撃力あるんだね。本なのに」

「あ、あの。テルア・・・いや、テルアさん。それ、何? なんか、分厚い本に見えんだけど、俺」

「本だよ? じいちゃん直筆かつ、じいちゃんのサイン入りの魔物大辞典と魔法大図鑑」


 そう、神の祝福を得た物というのは、要するにその神様の力が色濃く宿った物だとも解釈できる。

 僕がじいちゃんからもらって持ってる魔物大辞典と魔法大図鑑はじいちゃんが著者で、さらに直筆サイン入りの特別製。

 破壊不可と、汚染不可の効果が付加されている最高の鈍器となる代物だ。


「本? やっぱり本? ってか、なんで、本が武器になるんだよ!?」

「そりゃ、これ、魔神ジャスティスが書いたものだし。サインも入ってるからね。神の祝福を受けた道具にはなると思うよ?」

「納得いかねぇ! なんか、納得いかねぇ! 俺はあいつから逃げまくってたのに、本に助けられるとか・・・!」

 だんだんだんと、地面に拳を打ち付けるナーガ。

「まぁ、これで、あと一匹(・・・・)だね」

 ナーガははっとして顔を上げた。巣の土壁がもぞもぞと動いている。


「百足って、夫婦仲がいいんだってさ。雄と雌、どちらか一匹見つけると、もう一匹近くにいるものなんだって。母さんの受け売りだけどね」


 僕は、本を手に持ち直した。


「さて、第二戦といきますか」

 僕は、再び補助魔法をかけ直し、百足の頭に本の角をぶつけたけど。

 百足は倒れずに反撃してくる。


「ここじゃないか」

 魔物であっても、弱点は個体差がある。どうやら、もう一匹の百足は頭が弱点ではないらしい。急所察知では、気になるところはどちらかというと足だ。

 むにょむにょと動いてる足のちょうど中間地点辺り、しかも腹部に、弱点があるようだ。

 僕は考えた。一人だと、無理そうだね、これは。

「ナーガ。ちょっと手を貸してくれない?」

 僕はナーガに協力を求めるのだった。


次→5/19 8時

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