7話 ゲテモノマスターへの第一歩
「良いか。ここまで根性のある魔物はそうはおらん。それに、ここまで慕ってくれておる。わしが来たのは、お主がこのような魔物をなかなか自分の眷属にせずに、戦いまくっておったから、見るに見かねて出てきたんじゃ。通算五十回もお主に挑んだのじゃぞ? その根性は認めてやらんでどうする」
「確かに、すさまじい執念と情熱だったことは認めるよ。僕も、びっくりした」
僕は現在、魔神ジャスティスに説教と説得をされていた。何故か正座で。
ジャスティスのレベルや、能力は知らないけど、魔神に相応しい力はあるだろう。一撃で死にかけたし。
「うむ。つまりはお主はすでにこやつを認めておるということじゃな。ならば、話が
早い。こやつをおぬしの眷属にせい」
「いや、でも僕の目標はもふもふに囲まれることであって、ぬめぬめに囲まれたいわ
けじゃないんだけど」
「文句を言うな!! こやつの情熱に勝る武器はない!! 今ならばわしの加護付きで、そこらの魔物を育てるよりもよっぽど強くなるという特典付じゃ!! それにお主、わかっておるのか? ここまで強い情熱ならば、どこであろうがお主についてくるぞ? ついてきて、戦闘しかけられて、全然クエスト進められんぞ?」
「うっ」
それは、僕も考えていたことだった。うん、ここで頑張って拒否しても、確かに魔神のじいちゃんの言うとおりになりそうだ。
ここは、僕が折れるしかないらしい。
「はあ、わかったよ。そこの三つ目蛞蝓を、仲間として連れてくよ」
「よし、よく言った!! それでこそ、わしの孫じゃ!!」
「いや、孫になった覚えないから!!」
「わはははははは!!」
豪快に笑うじいちゃんに、僕は精神的に疲れたのだった。
「魔物を正式に仲間にする場合、「名づけ」を行う必要があるんじゃ。お主がこやつ
に名をつけい」
「名前? かっこいいのがいいなあ」
ぬるぬるぬめぬめだけど、ナマコとかだめだよな。僕が自分にそんな名前つけられ
たら、すねるだろうし。やっぱり呼びやすくて、それなりに意味を持たせたい。
うーん。
じーっと僕は三つ目蛞蝓を見つめる。三つ目、三つ目かあ。
「シヴァ。うん、シヴァにしよう。どうかな?」
僕が三つ目蛞蝓に訊ねると、嬉しそうにその場で飛び跳ねる。
あははは。飛び跳ねるごとに、ぐちゃぐちゃって音がしてるよ。はあ。
先が思いやられるなあ、と思いながらも僕も笑ってた。なんにせよ、初めての僕の仲間だ。
一緒に頑張っていきたい。
「ふむ。名前は決まったようじゃな。では、儀式を始めるぞい!!」
じいちゃんの一言で、濃密な何かが辺りに満ち始める。おそらく、これは魔力だろう。
やはり、魔神の名は伊達ではないということか。
「『顕現』」
ぼうっと、じいちゃんの周囲に紫色の魔法陣が浮かび上がる。
「我、絶望と混沌を司る魔神なり。彼の魔物の呼びかけによりてこの場に現れん。我は彼の魔物とその主が縁を結んだことを祝福し、二人に我が加護を与える。加護付与」
派手なエフェクトと共に、僕とシヴァの体の中に、紫色の小さな光が入り込む。
テルアは称号、魔神の加護を手に入れた! 魔物調教スキルLvが大幅に上がった!
属性魔法のスキルLvが上がった!
「ふう。これで、加護の付与は完了じゃ。ちょっと、ステータスを確認してみい」
言われた通り、ステータスを確認してみると。とんでもないことになっていた。
名前 :テルア・カイシ
メインジョブ:魔物使い(基本職、Lv4) サブジョブ:道化師(レア職、Lv2)
LV :6
HP :135
SP :62
力 :42 + 15
敏捷 :35
体力 :18 + 6
知力 :26
魔力 :18
器用 :40
運 :140
スキル 剣術Lv 15 武器術Lv5 道化術Lv2 火魔法Lv8 水魔法Lv7 風魔法Lv7 地魔法Lv8 闇魔法Lv7 光魔法Lv10 幻惑魔法Lv3 魔物調教Lv28 気配察知Lv10 危機察知Lv 12 急所察知Lv 10 威圧Lv 5 採取Lv1
所持アイテム ぽーちょん×9、はい・ぽーちょん×9、えすぴーぽーちょん×15、
はい・えすぴーぽーちょん×10、どくけし(にがい)×5、
?????? 薬草(良)×99、毒消し草(良)×99 銀のかけら×36 山珊瑚×
15 山珊瑚のかけら×37 マタタビ×51
装備品 飛竜の短刀 黒の冒険者の服(丈夫) 黒の手袋 丈夫な革靴
所持金 74,900ギル
称号 魔神の加護
名前 :シヴァ(三つ目蛞蝓)
メインジョブ:なし サブジョブ:なし
LV :8
HP :56
SP :54
力 :35
敏捷 :16
体力 :31
知力 :20
魔力 :18
器用 :48
運 :100
親密度:100
スキル 体当たりLv3 なめるLv1 生命力吸収Lv1 タフネスLv5 不屈の闘志Lv5
称号 ユニーク個体 テルアの仲間 魔神の加護
僕はともかく、シヴァのスキルにはものすごく納得してしまった。
「では、わしはそろそろ地底に戻るぞ。あんまし出歩いとると、主神がうるさくてかなわんからの」
「あ、待って!! なんだかすごく魔物調教と魔法のスキルレベルが上がってるんだけど!?」
「ん? そりゃ、儂、魔神じゃからな。その儂の加護を与えたんじゃ。魔物調教のスキルレベルも上がるじゃろうて。魔法や武器スキルが上がるのは、加護を得るときによくあることじゃ」
「よくあることなんだ。えっ、いいの? 今の時点でスキルレベル30近くとか、あり得ないような・・・」
「何を言うとるんじゃ。ユニーク個体の魔物を仲間にして、さらに儂の加護じゃろ? そりゃ、30近くにもなるわい」
「うわぁ。嬉しいような、複雑なような」
自分の努力の賜物なら、素直に胸を張れるんだろうけど。
「お主、加護について勉強不足過ぎるのぅ。儂の加護じゃと、これからLv上がるとすっごいステの伸びが良くなるんじゃぞ」
「そうなの? それは助かる!」
ステータスがなかなか上がらないの、気になってたんだよね。上がりやすくなるならありがたいや。
「加護のこと、色々教えてくれてありがとう、じいちゃん」
僕が丁寧に礼を述べると、じいちゃんは若干照れくさそうに笑いながら、姿を消した。
ああ、何だろう。シヴァを仲間にできたのは嬉しいんだけど。
「前途多難だ」
僕のモフモフの野望からは一歩遠ざかった気がする。あーあ。
三つ目蛞蝓<シヴァ>が仲間になった!!