67話 ナガバの森の異変、再び 2
今日の午前の授業を終えて、お待ちかねの昼休み。
僕にとっては、貴重な睡眠時間になるはずだったんだけども。
「それで、それで!? どうなったんだよ、さっき言ってたイベクエ!」
「はぁ。正也、僕、睡眠不足だから、ゆっくり寝たいんだけど?」
「寝ながらでいいから、話聞かせろ!」
これは、話さないとずっとうるさく騒ぎ立てるな。僕は面倒くさくなって、さっさと話した。要点はまとめて簡潔に。
「黒鋼蟻たちがナガバの森入口にいたのは、巣を変な魔物に乗っ取られたからだよ。幼虫を巣の外に出したはいいものの、ダークエルフが幼虫を虫質にして、アリたちが森の入口から動けないようにしてた。だから、ダークエルフを倒して、巣の方に行ったんだ。そしたら見事にその魔物が巣から出てきてさ。僕としては逃げたかったんだけど、イベント戦闘で逃げられなくて」
「それで、どうなったんだ?」
マサヤが身を乗り出してくる。僕はうっとうしかったので正也の額を手で押し返しながら、続きを話す。
「僕が魔物にやられて、そしたら、金の牡鹿と銀の牝鹿が出てきて助けてくれたんだ。それで、なんとかイベクエをクリアしたんだよ。ちなみにアリの巣にいた魔物は鹿たちが倒した。だから、アリたちも森の入口から巣に戻ったんだよ」
「なるほど。だから、急にナガバの森に入れるようになったのか。掲示板でも、持ちきりの話題みたいだぞ」
正也が携帯端末をいじって僕に画面を向けた。ずらっと並ぶ、コメントの数々。すると、一昨日の日付からナガバの森の話題一色だった。
「うわぁ。目撃証言ないのはありがたいけど・・・・・・ん? 正也、ちょっとこれおかしいよ」
「へ? 何がだ?」
僕は気になったコメント群を指差した。
そこにはこう書かれていた。
『ナガバの森、異変再び!? ナガバの森に、また変な魔物が出てる! しかもこいつら、イベント戦闘とかなって、強制戦闘だ! 絶対に負けるから、ナガバの森に、近づくな!』
『うわぁ! ヤバイよ、あれ!? 通常攻撃効かない! 誰か、ヘルプ~(>д<)/』
『魔法攻撃も全然効かない! 誰か、有効打与えられたやついないのか!?』
『紅蓮騎士団団長のスレイだ。他の掲示板にも載せるが、ナガバの森で通常攻撃も魔法攻撃も効かない魔物が大量発生している。もしも、ギルと持ち物が惜しいなら、しばらく普通のプレイヤーはナガバの森には近づくな。この警告は、一時間おきに同じ内容を投稿し、他のプレイヤーにも周知していく。知り合いの多いプレイヤーがいるなら、メールか何かで知らせてやってほしい。今回の調査と魔物の駆逐は、我々、紅蓮騎士団が行う。調査結果が出るまでは、ナガバの森は危険なものと認識してもらいたい』
『紅蓮騎士団が動くのか!?Σ(゜Д゜) 確か、レベル50以上の猛者が三人いるギルドだろ!?』
『紅蓮騎士団動くのか~。良かったー( ´∀`)でも、しばらく森には近づかないけど』
「なんだ、こりゃ」
「ごめん、正也。ちょっと貸して!」
僕は正也から携帯端末を奪った。
文句を言う正也を無視して、どんどん掲示板を読み進めていくと、魔物の画像が出てくる。
それに合わせて、ちらほらとダークエルフの目撃情報も寄せられていた。
動画もあったので再生してみる。すると、この間ナガバの森で遭遇した蠍の魔物によく似た、体長がおそらく三メートルほどと思われるムカデの魔物が映った。魔物に襲われながら、必死で逃げてるのは。
「ナーガ?」
画像は粗いが、間違いない。魔物に襲われてるのは、昨夜僕に踊りを教えたダークエルフの少年だった。
次→5/18 8時




