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62話 イベクエスト08― 5

 次の日にログインできたのは、既に17時を回っていた。

 でも、これでも僕はかなり頑張ったんだよ! なんとか休み時間を削って宿題を半分以上済ませ、HRが終わると同時に帰宅。さらに残った宿題を作業のように終わらせてから、「ファンタジーライフ」にログインした。


 だって、今日は豊穣神のアルルン様に会えるかもしれないって思うと、嬉しくて気が逸ったんだ。

 アルルン様って、公式のサイトに載ってた神様のグラフィックで、僕の一番の好みだ。いや、きりっとしたルテナ様も捨てがたいっちゃ捨てがたいけど。

 どうせ会うなら、かわいかったり、綺麗な女性に会いたいって思うのは、男としては当たり前の感情だと思うし。


 広場から、駆け足で神殿へと向かう。

 楽しみだな、本当に!

 頭の中の冷静な僕は、このあとすぐにイベクエスト09(ナンバーキュウ)を受けるべきだと伝えているけど、問題ないって!・・・多分。

 

 神殿に着くと、すぐに祈りの間へと案内された。

 祈りの間では豊穣神アルルン様の像だけ、前に出されており、その像の前にたくさんの貢物が銀のお皿に乗せられ・・・ていなかった。アルルン様の像の前に置かれた銀のお皿に入っているのは、僕がムアさんに渡した鹿の毛だけだった。

 え? 大丈夫、あれ? あんなので感謝の儀式とかやるの? 本気で?

 僕は心の中でものすごくつっこみを入れたんだけど。ムアさんも集まった神官たちも誰も何も言わなかった。


「偉大なる豊穣神であらせられます、アルルン様。私はあなた様に仕える僕であり、あなた様に常に感謝をしているしがない者、名をムアと申します。私たちの感謝の気持ちを、どうぞお受け取りください」

 ムアさんが頭を下げながら、銀のお皿を捧げ持つ。

 像が光を放ち、次の瞬間、そこにはあの公式サイトのグラフィックそのままの女性、豊穣神アルルン様が穏やかな微笑みを浮かべながら立っていたのだった。


「あなた方の感謝の気持ちは、確かに受けとったわ。けれど、少々貢物が少ないようね。どうしてかしら?」

「申し訳ありません。何者かに、神殿の倉庫を荒らされてしまい、その際に貢物であった花や果物も一緒に盗まれてしまいました。これは、神殿の不徳とするところ。アルルン様には申し開きもありません」

 僕は驚いた。そんなことになっていたのか。あぁ、だから最初に来たときに前庭に神官たちが集まって話し合いをしてたのか、と納得した。

 でも、それなら別の日にすればよかったんじゃないだろうか。


「ですが、今日という日を逃すことはどうしてもできませんでした。今日は、あなた様が神として我が神殿を守護してくださると、おっしゃられた日。この日に感謝を捧げないなど、神官にとっては恥ずべき行為と思いましたので」

 そうだったのか。アルルン神は、あらあらとでも言いたげに頬に手を添えた。

「そうだったの。それで、わざわざ私との縁が深い物を、貢物として捧げたのね。でも、これだけでは足りないわ」

「承知しています。故に、こう致しませんか? 今年はこれだけの貢物しか用意できませんでしたが、来年は通例の二倍の貢物をご用意致します。それでなんとか、事を納めて頂ければ」

「そうねぇ。でも、来年までなんてとても待てないわ。だから、一月に一度、シャルンの実を三十個捧げてちょうだい。それを守れるのであれば、私はまだここを見守るわ」

「承知しました。寛大なお心に、感謝します、アルルン様」

 ムアさんや神官さんたちは、頭を下げ続けたままだ。この場で頭を下げてないのは僕だけだった。アルルン神は、僕を見つめた。

「ところで、そちらの子どもは?」

「彼こそが、アルルン様に捧げた貢物を持ってきてくれた、テルア・カイシです」

「初めまして、アルルン様。僕はテルア・カイシです。お目にかかれて光栄です」

 僕が一礼すると、アルルン様は目を見開いた。僕の指にはまってる指輪をじっと見ている。この指輪がどうかしたのかな?

「そう、あなたが。こちらに来なさい」

 アルルン様に手招きされて、僕はアルルン様の側まで行った。アルルン様は、僕の額にキスをした。


 テルアは称号、豊穣神の守護を入手しました!


「あの子たちが、騒ぐはずだわ。あなたのおかげで、あの子たちは、ナガバの森の異変に気づけたの。感謝するわね」

「え、僕は別に何も・・・と、いうかあの子たちって?」

「会わなかった? 金の牡鹿と、銀の牝鹿よ。あの子たちは私の眷属なの」

「そうなんですか!」

 僕がビックリしてると、アルルン神は声を立てて笑った。

「あなたは、とても強い力で守られているのね。だから、きっとナガバの森が助けを求めて、あなたを呼び寄せたのだわ」


 アルルン様が僕の頭を撫でる。

 僕は、思いきって聞いてみた。

「アルルン様。二つ、お伺いしたいことがあります。いいですか?」

 これをチャンスととらえて、僕はアルルン様に質問する。

「あの鹿たちが倒した蠍の化け物みたいなのはなんですか?」

 アルルン様の手が止まった。

「そして、もし、この先あれが出た場合、どうやったらあれは倒せますか?」

「・・・・・・・・・。私は、その二つの質問には答えられないわ、テルア。答えるべき者は、別にいるから。でも、助言を与えることはできる。森にいたダークエルフに会いなさい。それが、あなたの疑問の答えの何よりの近道となるわ」

「ダークエルフ、ですか」

「ええ。少ししゃべりすぎたかもしれないわね。私はそろそろ帰るわ」

 アルルン様は、意味深な助言だけを僕に残して、去ってしまった。さっきまで動いていたアルルン様は像へと戻っていた。


「ダークエルフに会え、か」


 本当はイベクエストをやらないといけないんだろうけど、どうしてもアルルン様の助言が気になった僕は、ナガバの森で捕らえた、ダークエルフに会いに行くことにした。

 ムアさんによると、ダークエルフは今、冒険者ギルドの地下室に放り込まれているらしい。

 道中、課題ができなかった時のじいちゃんへの言い訳を考えながら、僕は冒険者ギルドを目指すのだった。


 次、5/12日 19時です

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