表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/424

60話 クエスト08―3

 黒鋼蟻たちに囲まれた僕は、絶対絶命だと思ったんだけど。

 アリたちは何故か僕の周辺で、ガチガチと顎を鳴らしているだけで、僕に襲いかかってこない。なんで?


 ーーーーーータス、ケテ。コドモ、トリ、カエ、シタイ。


「!?」

 頭の中に、聞き取りにくい声が響く。この感じは覚えがある。ハイドを仲間にした時に、聞こえたハイドの声が丁度こんな感じだった。

 そうか。

 僕は魔物使いだ。しかも、魔物調教のスキルレベルも高い。だから、アリたちの声が聞こえるんだ。


 なんで、毎回毎回、昆虫系の魔物の声ばっかり聞き取るのかは・・・運の問題なんだろうね、きっと。

 はあ。もふもふの魔物はどこにいるんだろうね。


「! 散れ!」

 

 僕目掛けて放たれた、矢の雨。アリたちはこの程度じゃダメージを受けないから、確実に僕を狙ったものだ。

 誰かは知らないけど、なめた真似をしてくれる!

 さっきも僕目掛けて攻撃しかけてきたし! そっちがその気なら、こっちも全力で返り討ちにさせてもらうよ!


 僕は自分に再び光の補助魔法を掛ける。

 パワーアップ、スピードアップ、ガードアップ、マジックアップ、マジックガード。

 一時的に増えたステは確実に僕の動きにキレを与えた。

 矢の雨を、僕は回避する。

 敵の位置は・・・そこか!



 白い幼虫の後ろに隠れてるけど、その程度で、僕の気配察知を誤魔化せるわけがない。なにせ、こっちは隠密行動が大得意なハイドたちの相手してるんだから。敵の位置を把握すると、そこ目掛けて地魔法のアースランスを放った。

 足を縫い止められれば嬉しかったんだけど、そう簡単にはいかなかったみたいだね。回避されちゃった。ま、一瞬の隙があるなら結果は上々だよ。


「幼虫の影に隠れてこそこそと。かくれんぼはもう終わりだよ」

 スキルの超音波を放つ。本来、吸血蝙蝠(ブラッド)の技だから、人間が放つとは思わなかったんだろうね。まともに超音波を聞いてしまった相手は、動きが鈍るんだ。

 僕は油断はせずに動きの鈍った敵に肉薄した。

「!!」

 白い外套に、白い口布で、顔を隠しているため、どんな顔なのかわからないけど、身長は僕よりも少し上程度の体格だった。弓を構えて僕を射ようとしてるけど、超音波の影響で狙いが定まってない。そんなひょろひょろの矢には、僕だって当たらない。


「ーーーーーーっ!」

 おそらく、詠唱をしたのだろう。僕目掛けてアイスアローが飛んでくる。ファイヤーボールで相殺し、僕は間合いの内側まで相手へ近づくと、剣術スキルを放った。

「光刹斬」

 花烈大破は、使えば幼虫にまで被害が出るからね。光刹斬なら、その心配はない。光刹斬の一撃をまともに食らった相手は、その場で倒れた。一気にHPを奪えたみたいだ。


 テルアのレベルが上がった!


 そのまま、鋼糸をつくりだして、相手をぐるぐる巻きに縛っていく。

 ふぅ、これで生け捕り完了! 一仕事終えた気分だね!

 ひとまず、ムアさんに報告かな。

 この後、この相手の尋問は、神殿に任せちゃってもいいし。

 僕が、停まっていた馬車のところまで戻ると、ムアさんがビックリしながらも僕を出迎えてくれた。


「あれー。てっきりアリたちのエサにでもなったかと思ったのにー。無事なんてすごいねー、テルア君」

「まぁ、これでも魔物使いの端くれなんで、なんとか、それで、ムアさん、アリたちの件なんですが・・・」

 ムアさんにざっと事情説明した。生け捕りにした相手もムアさんに引き渡した。すると。

「あー、この子、ダークエルフだねー。ダークエルフってー、確かアールサンでは奉られてない神様を奉ってる一族だよー。独自の価値観でしか動かないんだー。今回のアリたちの一件は、ダークエルフが絡んでるのかー。厄介なことだねー」

 ムアさんは困ったように頬をかいた。

 元々は、アリたちがなんでナガバの森の入口にいるのかって原因を調べてただけなのにね。

 いや、違うか。元々は、豊穣神アルルン様への貢物を得るために、森に入ろうとするムアさんの護衛だったね。


「ひとまず、ムアさん。僕はアリたちの巣に行ってみます」

「あー、それなら僕も行くよー。って言いたいところだけど、このダークエルフを放っておくわけにもいかないかー。うーん」

「アリたちに逃げないよう見張り頼んでおきます?」

「できるのー? それならお願いするよー。ナガバの森は、猟師たちも来る狩り場でもある。何か起きてるんだったら、確認するのが神官の務めだしね」


 最後は語尾が伸びてなかった。こういう真剣な顔もできるんだね、ムアさん。

「じゃあ、ちょっとアリたちに聞いてきますね」

 僕はアリたちの巣の場所を聞こうと思ったんだけど、それならアリたちも幼虫を抱えて巣に戻ると言い始め、結果、巣まで、アリ行列が出来上がった。ちなみに僕とムアさんはアリたちの背に乗せてもらった。ムアさんは、「まさか、黒鋼蟻に乗ることになるとは思わなかったよー」と、若干冷や汗をかいてるようだった。


 僕たちがアリたちの巣に、到着してみると。そこには恐るべき光景が待っていた。

「なんだ、これ。こんなのって」

 僕はうまく口が動かせなかった。

「ひどいねー、アリたちも行列が止まってるよー」

 ムアさんも、戦慄したようだ。

 僕らの眼前、巣だと思われる洞窟の側には、たくさんの黒鋼蟻の死骸が横たわっていたのだった。


 次→ 10日 19時

 活動報告にも乗せましたが、15日工事予定です。(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ