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6話 魔神

 意外と簡単に、洞窟は見つかった。

 中は暗いけど、僕は光魔法がある。

「ライト」

 唱えると、僕の前方に光の玉が現れた。その玉が、洞窟の中を照らしてくれる。

「ここ、宝箱とかあるのかな?」

 僕はわくわくしながら、洞窟の中を進んでいくのだった。



 しばらく探索していると、ようやく僕はこのゲーム初の魔物と遭遇した。

 三つ目蛞蝓(みつめなめくじ)。大きな目玉が三つあり、ぬるぬるの粘液まみれの体は、洞窟に住むからか、少し茶色っぽい。

この世界で初の戦闘だ! と、意気込んだのだが。



三つ目蛞蝓は様子を見ている!

テルアの攻撃! クリーンヒット!

三つ目蛞蝓を倒した!

テルアのレベルが2上がった!


 一撃で、三つ目蛞蝓は動かなくなった。

あれ? そんなに強く攻撃したつもりはなかったんだけど、三つ目蛞蝓を倒してしまった。

手こずるかと思ったのに、そんなことは全然なかった。

びっくりだ。



 僕の体は子どもだ。子どもの身長と、手足の短さをなめてはいけない。ちんちくりんな体を動かして、敵に攻撃を当てようとすると、どうしても速度が重視される。だから、僕が自分の武器として選んだのは短剣だ。これなら、敏捷が上がる。

先手必勝とばかりに、短剣で三つ目蛞蝓の目を狙ったんだけど・・・。クリーンヒットするとは。

「運が良かったなあ」

 僕が自分の幸運に感謝していると、三つ目蛞蝓がむくりと起き上った。

 すぐさま短剣を構える僕だったけど、様子が少しおかしい。


 三つ目蛞蝓は仲間にしてほしそうにテルアを見つめている! 仲間にしますか?


 選択肢が出たけど、僕はいいえにした。だって、僕の目標はもふもふの魔物だ。どろどろの粘液まみれ、大目玉を三つも持ってる蛞蝓を仲間にしたいわけじゃない。

「ごめんね。僕が仲間にしたいのはビースト系の魔物だから」

 そう断りを入れて、僕は再び歩き始めるのだが。

 背後から何かが飛んでくる気配としか言いようのないものを感じて、その場から飛び退く。ログがまた流れた。



三つ目蛞蝓の不意打ち攻撃! テルアは攻撃を回避した!

三つ目蛞蝓が現れた! 三つ目蛞蝓は様子を見ている!



 え? なに? また戦闘?

 三つ目蛞蝓は攻撃する様子もないため、再び一撃で戦闘は終了したのだが。



  三つ目蛞蝓は仲間にしてほしそうにテルアを見つめている! 仲間にしますか?



また、僕はいいえを選択した。そして、歩き出そうと・・・。



三つ目蛞蝓の不意打ち攻撃! テルアは攻撃を回避した!

三つ目蛞蝓が現れた! 三つ目蛞蝓はアピールしている!



 ・・・・・・・・・・これ、仲間にするまで続くんじゃ?


 僕は嫌な予想に、冷や汗をかいたのだった。


 ******


三つ目蛞蝓の不意打ち攻撃! テルアは攻撃を回避した!

三つ目蛞蝓が現れた! 三つ目蛞蝓はアピールしている!

 瞬殺!


三つ目蛞蝓の不意打ち攻撃! テルアは攻撃を回避した!

三つ目蛞蝓が現れた! 三つ目蛞蝓はアピールしている!

 瞬殺!


三つ目蛞蝓の攻撃! テルアは攻撃を回避した!

三つ目蛞蝓が現れた! 三つ目蛞蝓はアピールしている!

 瞬殺!


 何回、三つ目蛞蝓と戦っただろうか?

 おかげでまったく洞窟の探索が進まない。と、いうか未だに入り口から数メートルの位置にいる。

「いい加減、あきらめろ!!」

 僕は、叫びながら、剣術スキル「光刹斬こうせつざん」を放つ。僕が今覚えてる剣術スキルの中で、一番威力が高いものだ。三つ目蛞蝓がようやく大人しくなる、と思いきや。

「無傷!?」

 さすがにこれには僕も驚いた。これで、普通に倒せたと思ったのだが。だが、よく見ると、三つ目蛞蝓自体も驚いている。

 どういうことだ?

 僕が状況に混乱していると、

「この、ばっかもーーーーーーん!」

 背後から、問答無用で杖で頭を殴られたのだった。

 僕はきりもりしながら、洞窟の壁に体をぶつける。

 視界が赤一面で覆われ、くらくらした。敵対していたはずの三つ目蛞蝓が、僕の方に急いで寄ってくる。

 僕は震える腕でアイテム袋の中から、はい・ぽーちょんを取り出して飲む。効果がハイ・ポーションと一緒なのは確認済みだ。かなり甘ったるい味が広がる。

 水が欲しくなった。

 しかし、とにかくHPは回復したので、僕は身を起こす。心配そうに三つ目でこちらに視線を送ってくる三つ目蛞蝓。

「大丈夫だよ」

 僕がきちんと返事をすると、安堵したようだ。舌で僕の顔をなめてくる。って、鳥肌立った!!

「まったく! そこまで慕っておる魔物を、なぜ仲間にしてやらんのじゃ!!」

 声は聞こえても、僕は返事する余裕はなかった。三つ目蛞蝓の舌でなめられて、気持ち悪くて鳥肌が立ってしまい、まともにしゃべることさえできない。

 腕をさすりながら、2,3分経過しただろうか。ようやく僕の鳥肌が落ち着く。

 これ、三つ目蛞蝓に最初に舌でなめられていたら、やばかったかもしれない。

 と、それはさておき。

 僕の前には、一人のつるっぱげの爺さんがいた。服は黒一色だ。

「うむ。ようやく落ち着いたか。わしは、魔物たちの味方、人呼んで―――――――魔神、ジャスティスじゃ!」

「誰だ! 名前付けたやつっ!!」

 全力で、僕はつっこんでしまったのだった。




 次→19日 8時

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