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58話 クエスト08−1

 冬休みが終わってからの次の週。

 今日から本格的に学校の授業が始まる。昨日は、レベル上げをどうしようかと悩んでいたけど、その前にやるべきなのは、イベントクエストのクリアーだということに今更ながら気づいた。


 とにかく、早くクリアーしないと、レベル上げの時間が取れなくなる。それはまずい。

「よし、今日はひとまずイベントクエストのクリアーを目指して、最終日でなんとかレベル上げをしよう」

 休み時間中に、そう決めながら学校の授業をこなし、僕は今日のゲームプレイの計画を立ててたんだけども。

 現実世界では、こういうときに限って邪魔が入ったりするんだよね。

 具体的には、こんな風に。


「すまん、輝! ちょっと今日の日直変わってくれ!」

「ええっ!? なんでさ。正也がやったらいいじゃん!」

 日直って黒板消しから、日誌書き、あげくに教室の戸締まりまで確認しなきゃならないのだ。つまり、帰る時間が遅くなるってこと。できればすぐに帰って宿題やって、「ファンタジーライフ」にログインしたいのに。


「今日の放課後、英語の補習入っちまったんだよ。英語の宿題、半分以上やってなかったから」

「それ、自業自得じゃん!」

「違うんだよ! 全部やったと思ったのに、英語の課題やってないことに冬休み終わる前日に気づいて、しかも課題のプリントが見当たらなくって家中探しまくって、やっと見つけたんだよ!それで、なんとか辞書片手に頑張ったんだが、10枚目で時間切れになって。それで仕方なく未完成のまま出したんだよ!」

 逆ギレされた! 正也とぎゃいぎゃい言い合ってたけど、だんだん疲れてきた。正也も必死に僕のことを拝み倒してるし、僕は嫌々ながらも正也の頼みを引き受けた。

 あぁ、今日の休み時間に宿題進めとかないと。


 日直の仕事を終えて、帰宅するとすぐに宿題に取り掛かった。数学は簡単な問題だけだったのでもう終わってる。後は、古典の単語調べと、世界史の復習プリントだけだ。大体一時間で終わらせて、僕はようやくゲームのできる状態になったのだった。

 

 ログインして、すぐさま冒険者ギルドに向かうと、僕に対して誰も冒険者が目を合わせようとしなかった。

 騒がしかったのがまるで嘘のようにしん、と静まりかえる。

 ある種異様な光景だったが、僕は気にせずにカウンターへ行き、イベントクエスト08(ナンバーハチ)を引き受ける。

 ナンバー08はこんな内容だった。



 ○クエスト08 豊穣神アルルン様への貢物  

○依頼者 東神殿神官 ムア 

○依頼内容 豊穣神アルルン様へ捧げる貢物は、今の時期だけしか入手できない物であり、数を揃えるには神殿の者だけでは手が足りないんだー。 だから、冒険者の人に、力を貸してほしいなぁ。貢物の報酬は、相談するよー。詳細を知りたい方は、神殿の僕のところまで来てねー。


 すごく、間延びした文体だったのがかなり気になるけど。まぁ、クエストを受けることはできたのだから、問題なし。

 僕は東神殿へと向かった。


「困ったねー。これじゃあ全部集め直しだよー」

 東神殿の前庭では、神官たちが集まり、身を縮こまらせていた。

 神官たちの中心に立っているのは、彼らよりも高位の神官だ。

「君たちだけのせいじゃないとはいえさー、冒険者ギルドもけちだよねー。集めるのに苦労するの、僕らなのにー。まぁ、いいや。とりあえず、集められるだけ君たちはシャルメの花を集めてきてー。僕は、もう一回冒険者ギルドに話をつけに行ってくるよー。早く行ってきてねー」


 下級の神官たちを解散させた神官は、近くに来ていた僕の気配に気づき、あー、と嬉しそうに笑った。

「君ー、冒険者ー?」

「えっと、そうだけどあの、ムアって神官さんいますか?」

「ムアは僕だよー」

 都合のいいことに、依頼人だった。僕はアイテム袋から、依頼の紙を渡す。

「あー、そういうことねー。君が、僕の依頼を受けてくれんだー。名前はー?」

 ムアはすぐに察したようだ。僕は名乗る。

「テルア・カイシです。それで、依頼の内容を詳しく聞きたいんですけど?」


「ああ、依頼は簡単だよー。今から僕、ナガバの森に行くんだよねー。それで君には僕の護衛をしてもらうつもりー。ナガバの森の奥の方に行くけど、大丈夫ー?」

 ナガバの森? 僕は行ったことないなぁ。

「ナガバの森は、平均レベルが15以上の魔物が出る森ー。怖いなら、やめてもいいよー?」

「行きます!」


 即答だった。だってそれ、僕のレベル上げできるってことだよね!? そんなの引き受けるに決まってる!

 危なくなったら、ぽーちょん使えばいいし!

「そ、そうー? 大丈夫ならいいんだけどー。じゃあ、ナガバの森に行こっかー」

 ムアさんは少し顔をひきつらせつつも、準備をしてくるーと言って神殿に一旦引っ込み、次に馬車を用意してきた。

 このゲーム、馬車なんて使えるんだね。初めて乗るよ。

「乗ってー。ナガバの森までは、馬車で行くからー」

 僕が馬車に乗ると、ムアさんが馬車を発進させた。

 意外と乗り心地は悪いけど、ロマンだね、こういうのも。

「それじゃー、出発しんこ〜」

 ムアさんの間延びした声に少し眠気がしてくる僕だった。



次→5/819時

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