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51話 気がつけば時計を買い漁ってた

「テルアー。いいかげん、その辺りにしとこうぜ?」

 げっそりとしたマサヤの声が後ろから聞こえるが、僕は無視した。

 今、僕は真剣勝負の真っ最中なのだ。邪魔しないでほしい。

「行くぜ、勝負だ!」

「望むところだよ! カードオープン!」


 勝負と言っても、カードゲームだけどね。このカードゲームに勝てたら、僕は対戦相手のある物をもらえる。

 逆に僕が負けたら、100万ギルを支払うことになる。

 ちゃんと対等な取引条件だよ。

 相手の手札は、赤一色で数字はバラバラ。それに対して僕の手札は赤、黄、青、緑、黒の計5種、全て同じ数字。

「ふぁ、ファイブカードだとっ!?」

 僕のカードを見た瞬間、相手が青ざめ、ギャラリーから悲喜こもごもの声が上がった。

「さ、これで勝負はついたね。僕の勝ちだ! 約束通り譲ってもらうよ!」

「ちくしょぉぉおおお! 持ってきやがれぇぇええっ!」 

 ドン、とカードゲームに使用していた台の上に大きな白銀の丸時計が乗せられる。時間は丁度9時で止まっている。

 やったね! 白銀の時計、5個目ゲット!

 僕はホクホク顔で、丸時計を受け取り、アイテム袋にしまいこんだ。


 最初に手に入れた白銀の時計が、あんまりにも綺麗で気に入ったものだから、みんなにお土産として渡してあげようと考え、白銀の時計を探しては買い漁った。おかげでみんなの数だけお土産をゲットできたよ。

 浮かれていた僕は、うっかり対戦相手の言葉を聞き流しかけた。


「お前、その時計の秘密を知ってるのか?」

「え?」

「・・・・・・・・・。」


 急に考え込む素振りを見せた元対戦相手は、難しい表情のまま黙っている。

 僕の答えを待ってるのだ。

 僕は小首を傾げながら、答えた。

「この時計に、秘密なんてあるの?」


「あるんだな、それが。詳しく聞きたきゃ、南門から真っ直ぐ大通りを行って三番目の右側の角を曲がって、また三番目の角を今度は左に曲がれ。そこに「小さな人の店」という店がある。そこの店主なら、お前の持ってる白銀の時計を全部見せれば秘密を教えてくれるはずだ」

「ふぅん? なかなか興味深い話だね。わかった、行ってみるよ。教えてくれてありがとう!」


 次の目的地が決まった。僕が対戦相手から聞いた話をマサヤにすると、マサヤは唸りだした。

「行きたい。是非とも行きたいんだが、その前に寄り道したい。ダメか?」


 マサヤがすがるように僕を見てくる。


「いいよ。僕の目的はみんなにお土産買うことだったから。ちゃんと五つ揃ったから、マサヤが行きたいところがあるなら、つきあうよ」

「助かる! もうすぐオークションなんだよ。そこで、色んな掘り出し物を出品するらしいから、観に行ってみようぜ!」

 こうして、僕らは広場の方へと移動した。広場は、すさまじい人で埋め尽くされ、とてつもない熱気に包まれていた。

 簡易的なお立ち台が設置されており、そこで品物を発表していくようだ。

 出品物と思われるものが、白い布を被せられて、取り払われるのを待っている。

 お立ち台に人が立った。



「さぁ、お集まりの皆さま、大変、お待たせしました! 今から、アールサンのバザール主催、第一回ごちゃ混ぜオークションを開催したいと思います! ここでしか見られない貴重なものも、今回数点ですが出品されていますので、どうぞ、最後までお楽しみください! では、早速まいりましょう。まずは、巨人マルアの両腕!」

 お立ち台にあった布が取り払われると、観客からは悲鳴が上がった。僕たちもその例に漏れない。


「うげっ」

「これは・・・」

 現れたのは、確かに腕だった。巨人と言うだけあって、片方の腕だけで普通の子ども程度の大きさがある。それが銀色の釘で神聖文字で描かれた銀の板に二つ打ち付けられてる。かなり悪趣味なオブジェだ。そして、僕はその腕から魔力が放出されてるのを感じ取り、さらに顔をしかめる。


「マサヤ。あれ、ヤバイよ。なんか、呪われそう」

「・・・だな。あんなの買うやつ、いるのか?」

 疑問に思った僕らだったが。すぐに司会者の説明で僕らの疑問は氷解した。

「こちらは、かつて悪逆の限りを尽くしたとされている、巨人マクアの両腕です! あまりの非道さに、ついには神の怒りを買い、封じられてしまった巨人は、今もどこかで生きているとのことですが・・・この両腕があれば、巨人マクアの居場所まで辿り着けるかもしれません。この両腕は、夜になると動き出し、マクアの居場所を示すそうです! 」


 平たく言えば、巨人に会うためのイベントアイテムということだろうか。

 つまりは、アイテムを入手した時点でクエストフラグが立つ、といったところだろう。


「さぁ、巨人に会いたいなら是非ともこのマクアの両腕を手にいれるべきです! 最初は5ギルからスタートです! 10ギル単位での入札でお願いします!」

 ぽろぽろと手が上がり、値段が徐々につり上がっていく。僕とマサヤは、誰が競り落とすのかなーと思いながら、のんきにオークションの行方を見守った。


 結局、巨人マクアの両腕は10,035ギルで落札された。いくらイベントアイテムでも、あんまり持っていたくないもんね。

 落札したのは、マサヤ曰く、剣士ギルドの人間だそうだ。きっとみんなで巨人を倒しに行くんだろうね。

 頑張ってねーって感じだ。


「さて、続いてはこちら! 骨竜の骨です! こちらは武神クレスト様を奉っている、南神殿からの出品です! これは、とても軽くて丈夫な武器素材の一つ! これで作った武器を持たせれば、前衛職の大幅な攻撃力増加が見込めます!」


 実物を見て、僕は叫びそうになった。

 それ、僕とサイガがクレストのおじさんの像に供えたやつじゃん!

 しかも、雀の涙ほどしかもらえなかったクエスト報酬よりも、明らかにスタート価格の方が高いし!

 こうやって神殿は儲けてるのか。やり方が汚いよ、マーラフさん!

 今度、ちょっと〆に行こうかな。


「おい、テルア? なんか殺気だってないか?」

「別に。今度、神官様に挨拶しに行こうと思ってるだけ」

「そ、そうか? 心配ないならいいけどな」

 マサヤはそれ以上何も聞かずに話題を終えた。世の中、知らない方が無事に過ごせることもあるからね。


 こうして、オークションは順調に進んでいき、あと数品で終わりというところで出てきた品物に、僕はずっこけた。マサヤが慌てて僕のことを起こしてくれる。


「さて、最後の品は著者は不明ながら、貴重な品物です。なんと、この本一冊に全ての魔物の知識が詰め込まれています。その名も魔物大辞典! 冒険者なら、まさに垂涎の品! 入手してけして損はないことを皆さまにお約束しましょう!」


 取り払われた布の下には、どこかで見たことのありすぎる本が一冊あった。

 これ、多分じいちゃんの仕業だね。うっわぁ。スタート価格がすでにおかしいよ。200万ギルって。

 しかも、開始してから10分で倍額。

 うん、もう見なくていいや。最終落札価格なんて怖くて見たくないよ。

 そして、じいちゃんの本がここにあるということは、みんなもここに来てるんじゃないかな?


「おお、やっぱり来てたんじゃのぅ、テルア!」


 予感的中。後ろを振り向くとじいちゃんが軽食片手に僕に手を振っていたのだった。



次→5/4 8時

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