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48話 クエスト07―3

 守護神は、仮面の下からじっと僕らのことを観察していた。

「まぁ、私のことを知っていることに不思議はありませんが、なかなかに魔法の才能がありますね」

 ユミアちゃんではなく、明らかに僕の方を向きながら、守護神は発言している。

「そこの、倒れてる神官よりもよほど魔法の才があります。なにせ、この愚か者は、解呪の儀式を失敗するという、失態を演じたのですから。私が現れなければ、本当に人死にが出ていたかもしれません」

 守護神は淡々と言を紡いでいるが、空間に漂う魔力は、どんどんと濃密になっていく。

「私に仕える神官でありながら、魔法を理解していないとは。生きている価値さえありません」

 ユミアちゃんが息を飲んだ。守護神が何をするか悟り、ざっと顔から血の気を引かせる。

「ちょっと待ってください。クク神様。魔法を理解していないとは、どういうことですか?」

 僕は、守護神の気をそらすためにあえて魔法の話題をふった。

 案の定、魔法使いを守護するとされている守護神は僕の話に乗ってきた。

「解呪の儀式に、用いてはならない魔法を使用したのです。まったく、幻惑魔法に掛かった者に、光魔法を掛けるなど、まったく魔法の特性を理解していません。勉強不足にも程があります」


「幻惑魔法と光魔法の相性がとてもいいからですね。相乗効果が起きて、幻惑魔法の効果を高めてしまう。もしも使うならば、神聖魔法が妥当だったでしょうね」

 僕がさらりと意見を述べると、守護神の雰囲気が和らいだ。神官ではなく、僕に興味を持ってくれたようだ。


「もしや、君は魔法について勉強しているのですか? 魔法が大別して何種類あるかは知っていますか?」


「魔法の種類としては、僕が知る限りにおいて、火、水、風、地、光、闇、幻惑、神聖、唄、(カースト)の10種類です。火は風に強く、水は火に強く、地は水に強く、風は地に強い。光と闇は反属性同士、より力の強い方が勝ち、同程度の力ならば相殺されます。幻惑魔法と光魔法は相性がよく、同時に使えば相乗効果が出ます。同じく、呪と闇属性、唄と神聖の組合せでも相乗効果が出ます」


「おお! では、魔法の基本理論はどうです?」

 

「魔法は、鍵言葉(キースペル)と自らの魔力によって、この世界に満ちた魔力に干渉し、具現化や現象を引き起こす技術である、さらに適性がなければ使えない力でもある、でしたっけ?」


 僕の説明に、守護神の様子が徐々に変化していく。退屈そうに、つまらなさそうにしていたが、今はおそらく仮面の下で笑みを浮かべているのではなかろうか。


「そう、そうです! 魔法は使えればいいやという人間が多く、適当な知識しか持たない者の多いこと。嘆かわしいことです。ですが、君はきちんと魔法を勉強しているようですね。いや、嬉しいですね。そもそも魔法とはですね・・・」


 あ、あれ? 堰を切ったように怒濤の勢いで守護神・・・いやクク神が魔法について語りだしちゃったんだけど。

 せ、専門的すぎて僕でもついていくので精一杯だ。ユミアちゃんなんて唖然としてるよ。


「ちょっと待ってください!」

 僕は、魔法講義を始めたクク神に待ったを掛けた。話を途中で遮られたクク神が不満そうに「何ですか?」と聞いてくる。うん、本当に魔法好きなんだね、クク神。

 ここで、魔法の話をやめてくださいと頼めば、僕らはクク神の不興を買うだろう。ならば! とるべき道は一つ!


「筆記具をどっかの部屋から取ってくるんで、少し時間をください!」

 腰を据えて、話を最後まで聞くしかない!

「先輩!?」

 ユミアちゃんが叫ぶが、無駄だよ、ユミアちゃん。今のクク神、スパルタ式授業をやってる時のじいちゃんにそっくりだから。逃げても追いかけられるだろうしね。腹を括って、クク神の魔法講義を全部聞くしかないんだよ。

 僕は覚悟を決めていたが、ユミアちゃんは悲痛な面持ちで、半泣きになっていた。


「すぐに戻ってきますから!」


 僕は、なんとかクク神の許可をもぎ取り、筆記具を近場の部屋から見つけることができた。

 すぐに祈りの間に戻る。

 祈りの間では、おそらくクク神が魔法で造ったと思われる、黒板ならぬ白板があった。

 指先からアレンジしたダークミストの魔法で文字を書き込むクク神。

 魔法使いの守護神だけあって、魔法技術が高い、と感心してしまう。


 クク神は完全に教えるモードに突入したのだろう。

 教えようという熱意と気迫がこちらまで伝わってくる。

「では、続きからいきますね。先程は魔法の射程距離について話しましたが・・・」

 僕らの忍耐が試される、クク神の魔法講義が始まった。

 


 時折、クク神に質問を投げ掛けながら、講義は順調に進み。やがてクク神の体が、淡い光に包まれ始めた。

 クレストのおじさんの時と同じだ。

「あぁ、もうこんな時間ですか。名残惜しいです、まだ魔法について話したいことがあったのに・・・」


 いや、もう十分過ぎるほどだから! 僕の手元のノート、三冊目に突入してるんだよ!? じいちゃんのくれた魔法大図鑑がなかったら、絶対についていけなかった(断言)!

 ユミアちゃんなんて、最後は机(クク神がノートに書きづらそうにしてる僕らを見かねて造った)に突っ伏して「早く終わって〜(泣)」と呟いていた。


 僕も気持ちは同じだけどね。僕まで投げ出したら、クク神がどんな行動に出るかわからないから、耐えたよ。

 頑張った。頑張ったよ、僕。


「いやあ、久々に魔法について思いきり語れて楽しかったです。天界では私の魔法談義に付き合ってくれる者はあまりいませんから。あ、そうです。私の魔法講義についてこられた証に、私の加護を授けますよ。後で祭壇に、その筆記具を供えてください。ノートは自分で持っていていいですよ」


 そして、クク神は石像に戻った。


「・・・終わった。あ〜疲れた! 休みの日に、なんでゲームでしか使えない魔法の魔法講義をがっつり受けてるの、僕ら」

「すいません、あたしのせいで・・・」

「いいよ、どうせ僕も暇だったから」

 うーんと伸びをしている僕らに、誰かが近づいてきた。


「ありがとうございます! あんなに嬉しそうなクク神様はわたくし初めて拝見しました!」


 あ、祈りの間に倒れてた神官さんだ。


「あぁ、申し遅れました。わたくし、ベスと申します。今回はわたくしの不勉強のせいで、皆さまにはとても迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません」


 深々と頭を下げるベスさん。

「ベスってひょっとして・・・」

 僕はアイテム袋からクエスト依頼の紙を出した。

 それをベスさんに渡すと、ああ、と納得された。


「確かにこのクエスト依頼はわたくしが出しました。ですが、このクエストは依頼達成扱いにさせて頂きます。本来なら、解呪の儀式を失敗したわたくしのせいで、クク神様の不興を買うところでした。ですが、あなた方のおかげで事なきを得られましたし。本当にありがとうございました!」


 クエスト07は達成。当初の目的が果たせたのはありがたいね。

 あとは、クク神の石像を祭壇に戻して、筆記具を供えて、っと。



 テルアは守護神の生徒の称号を手に入れた! 

 テルアは魔法大図鑑(魔神のサイン入り)を読破した! 魔法博士の称号を手に入れた!

 テルアは神聖魔法を覚えた!

 テルアの全魔法スキルLvが上がった!

 


 ユミアは守護神の加護の称号を手に入れた!

 

 あれ? 使える魔法の種類が増えたよ?

 っていうか、妙に恩恵多くない?



次→19時

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