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423話 動き出す現実世界(※)

本当に久々過ぎて、小説の書き方を忘れている今日この頃。

 ゆさゆさと体を揺さぶられる感覚に、唸りながら、彼はうっすらと目を開けた。

「・・・・・・さん。伊藤さん! 起きてください、会議が始まりますよっ!」

「ん? んん〜」

「起きてくださいって!! もう9時回ってます!」

 まだぼんやりしていたが、部下の一人が告げた時間に、伊藤はしゃきっと目が開いた。

「なんだと!? 会議用の資料は!? 準備できてるか!?」

「やっと、起きてくれましたね。準備できたから、仮眠取るって、ソファーに横になってたの、忘れたんですか?」

「そういえば・・・」

 言われて思いだし、伊藤は安堵の息を吐き出す。

「じゃあ、まだ会議は始まってないんだな? セルサガの進捗状況の資料は指示した通りにやってくれたか?」

「やりはしましたけど、でも、さすがにこれはどうかと。こんな日程、会議じゃ通らないと・・・」

「通すさ」

 部下の言葉を遮り、伊藤は断言する。伊藤は本気だった。もちろん、第二、第三の案もあるにはある。だが、第一希望を必ず通すつもりで準備してきたのだ。既に根回しも完全ではないが済んでいる。

「通すに決まってる。ずっと、待たせ続けてるプレイヤーがいるんだから」


 セルサガで、最後にアカウントの永久停止を食らったプレイヤー。だが、そのプレイヤーのアカウントは内部から乗っ取りがあったことを伊藤は突き止めている。だが、伊藤が証拠をつかむ前に、相手に痕跡を消されてしまい、そのプレイヤーの無実の証明ができなくなってしまった。

 プレイヤーは、遊んでいただけだ。確かに普通のプレイヤーとは一線を画す遊び方だったが、けしてルール違反はしていなかった。それなのに、乗っ取られたアカウントが行った違反で、彼はゲームから追放された。

 そんなことを許してしまったのに、そのプレイヤーに直接謝ることさえ、伊藤はできなかった。プレイヤーの友人が許さなかったのだ。

 ゲーム内世界のこととはいえ、ゲーム内で違反が起きた代償は高くついた。失ったものはあまりに大きく、伊藤はあの事件さえなければと何度思ったことか。

 いや、違うか。

 「魔光の王」による、セルサガ史上最大の大規模侵略が起きなければ。

 そして、それを伊藤が不審に思い調査しなければ。

 今、ここに自分はいなかったのだから。

 すべては繋がっているのだ。だからこそ。

(今度は失敗しない。そして、あんたにも邪魔はさせない。セルサガは、あんたのおもちゃじゃないことをこの手で証明してやる)

「会議後、結果を元にミーティングを開く。担当者たちに伝えておいてくれ。死ぬほど忙しくなるから、今から覚悟しておいてくれって言葉もな。一年じゃ遅い。セルサガを組み込むだけなら、三ヶ月あれば事足りる」

 もうすぐだ。もうすぐ。罪を着せた相手に必ず償う。もはや、遅いかもしれないが。

「その前に、ちゃんと会議で納得させてきてくださいよ」

 部下の当たり前とも言える一言に、伊藤は思わず笑ったのだった。


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