420話 知り合いが現れた!
とりあえず、毛生え薬の販売はミニちゃんに勝手にやってもらうことにして、僕らは職員室に向かうことにした。
何故、職員室なのか。それは、マップの中で色々なトラップがあったせいか、職員室に行けてなかったからだ。
「職員室って、なんかさ。あんまり行きたい場所じゃないよね、マサヤ」
「あー、うん。そだな。そこには同意する」
「二人は、まだ学生だったっけ?」
カカシさんの問いかけに、僕らの声がハモった。
「「そう」」
学生にとって、用がないとき以外はあまり近づきたくないのだ、職員室は。何故なら。
「寄ると、結構色んな先生が、目を光らせて雑用頼んできたりするんだよ」
「そうそう。部室の鍵返しに行くと、ついでだとか言って、用事頼まれるし」
常にと言うわけではないが、案外マサヤは荷物運び頼まれやすいしね。
「まぁ、確かに。頼まれることも多いな」
ん? あれ、スレイが同意してるけど、まさか。
「えーっと。つかぬことを聞くけど、スレイって、もしかして学生?」
「現実世界では高校生だ。高校二年」
さすがに驚いた。つまり、僕らの一個上ってこと!?
「マジっすか!? あんまり落ち着いてるから、てっきり大学生か社会人と思ってたっすかよ!」
「見えないもんやなぁ」
「僕は知ってたけどね」
衝撃の事実。あ、でもそうだとすると。
「じゃあ、ゲームやってて大丈夫なの、スレイ? 今年受験じゃ・・・」
受験かぁ。僕らはひとまずあと一年余裕があるけど。
「あぁ、志望してるのは専門学校の方だから。そろそろ情報集めをしないといけないが、まだ焦る必要もそれほどない」
専門学校か。その選択肢もあるよね。
「せっかくゲーム内に受験とか生々しい話、やめないっすか? 気が滅入ってくるっす」
「ミキくんに同意」
「俺はもう終わったからなぁ。頑張れとだけ言うとくわ」
それもそうだね。さて、そんなことを話してるうちに、目的地とはまったく違う場所に出てしまった。
「なんで、カフェテリアにでるねん。どうなっとるんや、ここ」
「あ、でもあそこで誰かコーヒー飲んで・・・」
僕は言葉を失う。その人物はゆっくりと振り返って僕の姿を認めると、ふっと笑った。
だらだらと、僕の背に冷や汗が浮かぶ。
な、なんで。
固まった僕は、ろくに動けない。まるで蛇に睨まれた蛙だ。
「会いたかったわ〜ん。テ、ル、アちゃーん!!」
僕は動けなかった。そのまま、抱きつかれる。
「んもぅ! 水臭すぎるわよ! ゲーム新しくやったんなら、誘ってくれてもいいじゃない!」
僕に抱きついてきたのは、短い金髪に菫色の瞳の、見た目は可愛らしい一人の少女だ。
ただし、この人、外見こうでも中身は中年親父なんだけどね。
「なんで、ここにいるの、フラットさん」
「そんなの、テルアちゃんに会いたくって来たにきまってるじゃない」
はぁ、と嘆息する。突然の出来事に、みんなが状況把握に努めようとする。
「あ、ごめんなさい。自己紹介遅れちゃったわね。あたし、テルアちゃんのファンのフラットって言うの。よろしくね♪」
「あんまり近づかない方がいいよ。課金と廃ゲーマーだから、この人」
かつてのゲーム時代の知り合いの紹介を僕はするしかなかった。




