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412話 相談(※)

 それは、少し前の会話だった。

「じいちゃーん。シヴァに必殺技とか、一発だけの超大技とか教えられない?」

「ん? どういうことじゃ」

 主であるテルアは、シヴァと一緒に、魔神ジャスティスに相談を持ちかけていた。だが、言われた方は寝耳に水とばかりにしきりに目を瞬かせている。

「あー、言い方変える。シヴァが、一人で格上相手とか、毒とか効かない相手と戦ったときのために、奥の手とか持たせときたいんだけど、何かいい案ない?」

「難しい注文じゃのう」

 テルアの言いたいことをようやく理解したジャスティス神は唸る。

「はっきり言って、シヴァは戦闘能力、一番低いからのぅ。魔法の才があるわけでもないし、素早さや、力、あるいは頑丈さといったこれといった取り柄がない。ハイドと組ませてるのも、補助メインじゃし。職業が薬師というのも、頭の回転は悪くないんじゃが、器用さにも比重がある。そして、サブに盗賊があるから、器用さはかなりのものなのじゃが、それを戦闘に活かすとなると・・・うぅむ」

 真剣に悩み始める魔神の姿に、シヴァは申し訳なさを感じる。

「うーん。そうだよね。まずは攻撃力とか、色々上げなきゃいけないし。難しいよね。いっそのこと別人みたいに全部のステータスがアップしちゃう増強剤とかあればいいんだけど・・・ん? じいちゃん、どうかした? 僕の顔に何かついてる?」

「いや、そういえばロード神から、面白い薬の話を聞いてのぅ。それを今の話で思い出したんじゃ」

 薬と聞いて、シヴァの三つ目が爛々と輝き始める。

「別人になれる効果のある薬なんじゃが、その効力は、本当にそのまま別人になる(・・・・・・・・・)というものなんじゃよ。要するに、能力全てもコピーできてしまうんじゃ」

「ええ!? それってものすごいんじゃないの!? じいちゃんにもなれるってことでしょ!?」

「簡単に格上の相手になれるわけなかろう。なれはするが、なった者は三分後に死ぬぞい」

「うわぁ」

 主がひく中で、シヴァは真剣に話を聞いていた。なんでも、その薬はロード神が現物を持っているらしい。早速、ロード神のところへ行くと、薬を分けてもらえるよう、頼んだ。

 薬自体はあっさりともらえたのだが、問題はその後だった。ロード神からの注意事項で、格上過ぎる相手になってしまうと、効力が切れたときに、本当に体が持たずに死亡してしまうケースもあるらしい。なので、格上過ぎず、弱すぎずといった相手に変身しなければならない。

 再び、ジャスティス神に相談を持ちかけると、あっさりと問題は解決した。

「そんなもん、テルアになればいいじゃろうが。効果時間を短くすれば、テルアになることも可能なはずじゃ。普段、戦ってるテルアなら、戦い方もある程度把握しておるじゃろう」

 主に化ける!? そんな発想など全くなかった。唖然とするシヴァだったが、確かにそれは、いい案だった。こっそりと主の髪の毛を入手して、薬に漬け込み、テルアに変身できるコピー薬が完成した。

 シヴァが一口飲むと、ぐぐっと体が縮み、手足ができた。五本の指を動かしながら、鏡を覗く。鏡の中には、確かに主のそのままの姿があったのだった。

 効果時間は一分。それ以上は今のシヴァの体ではもたない。それでも。憧れ続けた主の体になれるという、奥の手をシヴァは手に入れたのだった。主の姿に恥じないよう、変身して、ほかの魔物軍団と戦ってなんとか少しずつ体を慣らしていった。その結果、今では三分ぎりぎりまでなら、効果が持つようになった。


 ここで奥の手を披露しなければいつ披露するのか。

 返信したシヴァは、僅か三分と短い時間の中でどう攻めるかを思考したりなどしない。思考は終わった。あとは実行あるのみだ。

「くらえぇえええええええ!!」

 シヴァの手のひらに、放電する光の花が生まれた。それを、敵に叩きつける。

「ぐっ、こ、れは」

「シヴァのオリジナルだよ。もっとも、この姿じゃなきゃ使えないけど」

「感電、で、動けなくするとは。・・・・・・見事だ」

 ふっと敵が笑み、そしてシヴァの変身が解ける。

「いいだろう。我の敗けだ。持っていくがよい」

 持っていっていいとは言われたが、しかし。

「これ、シヴァの探してる薬草じゃない」

 力尽きた三つ目蛞蝓は、そんなぁ、と嘆いたのだった。


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