409話 金閣と銀閣は毛生え薬の材料を入手した!(※)
金閣&銀閣のコンビは、今まで出会った中でも強敵と認識できる相手に遭遇し、上機嫌だった。
「もう、なんなんだよ、こいつら! 僕らに匹敵する連携とか、本当になに!?って感じなんだけど!」
金閣&銀閣が、その名の通り金と銀に身を包んでいるが、相対している相手の二人は黒と白に身を包んでいた。黒髪から伸びた長耳と、褐色の肌。赤い瞳を怒りに染め上げながら、それでもその美しさは損なわれない。まだ、少年の面影を強く残す青年は、ナーガと同じくダークエルフだったが、物理専門に特化した少々変わり種だった。彼と一緒にいる少女は綺麗な白髪を肩で切り揃え、手に持つうさぎのぬいぐるみで、様々な妨害系魔法で、青年を支援している。二人は、自分たちが守れと命じられた物を守っているだけだ。彼らの前に現れるのは、スキルを覚えているだけの、雑魚ばかりだったというのに。この二人は強い。魔物のようだが、人型であり、当然のように知性も知識も持っている。そして何より、相性が悪かった。
金閣&銀閣は、物理攻撃が得意なのは確かだが、この間叩き込まれた魔法知識のおかげで、かなり魔法耐性が高くなっている。そのため、妨害魔法の効きも悪く、青年が押されてしまうのだ。
力任せの攻めに一見見えるのだが、実際は研ぎ澄まされた一閃を、弱いと判断した少女に叩き込もうと緻密に計算された流れに、否応なく誘導されてしまう。傍目にはほとんど無表情の少女が、実は限界近いと知っているのは青年だけだ。
「そろそろ、観念した方がそなたらのためだぞ?」
「抜かせ!」
「こちらは一応、善意で言っているのだが。今、退くというのであれば、我らはそなたらを追わぬと約束しよう。それに、相方は限界のようだが」
青年が少女の様子を伺うと、膝をつき、銀閣にいつでも止めをさせる状況であった。
「ぐっ」
青年もそろそろマズイとは思っていたが。ちらりと目配せを送ってくる銀閣に、青年の体から力を抜いた。
「本当に、今退けば追わないのか」
もはや、勝負は決した。
ならば、速やかに撤退すべきと青年は判断する。
「もちろんだ。約束は守る。我らに及ばずとも、そなたらもまた、強者であった。強者に敬意を表するのは当然のこと」
「わかった。退く」
青年は金閣の言葉に嘘はないと感じ、受け入れる。もし、殺す気であればこんな悠長に話をしているわけがないのだから。
「僕たちに勝ったからっていい気にならないでよ。今度会うときは、僕たちが勝つから」
生来の負けん気を身体中にみなぎらせて、金閣と銀閣を睨み据える。
「我らはいまだ修行の途中。その我らを追い抜く覚悟があるのであれば、追いかけてくるがいい」
「もちろんだ」
ぎゅっと唇を噛み締め、青年は少女を連れてその場から消える。
青年と少女の背後には、宝箱があった。金閣と銀閣がそれらを開くと。
モッサモッサ草という、毛生え薬の材料が入っていたのだった。




