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407話 反応が案外可愛かった。

 ちょっと遅くなりました。すみません。m(_ _)m。

 決闘(?)は、十数分程でけりがついた。ジーンさんのHPがかなりあったので、かなり手間取ってしまった。

「手加減という言葉を知らないの、君は?」

 カカシさんが倒れたジーンさんを気の毒そうに見遣る。

「師匠は手加減していましたよ。その証拠に、武器を使っていませんでしたし」

 チャップがフォローをいれて、それにマサヤも口添えしてくれた。

「カカシさん。チャップの言う通りだと俺も思う。こいつが本気出して生き残れるのなんて、規格外の奴だけなんで」

「にわかには信じられないな。これで全力ではないのか。俺も精進しないとダメだな」

 スレイが、新たな目標に気合いを入れている。

「んー。全力だと、チャップが結界張っててくれても、みんな巻き込むから。一応、全力じゃないよ。あと、ジーンさんは大丈夫。と、いうより、ジーンさんに勝たないとこれが手に入らなかったから」

 僕は、ジーンさんに勝ったときに入手したアイテムをみんなに見せた。

『特殊治療薬集』という名のレシピ本だ。

「そういえば、ジーンに持たせたままでした。すみません、師匠」

 チャップが謝罪してきた。おそらく、ジーンさんの押しに断りきれず、持たせるだけならと承諾したってところだろう。

「う、うぅ。・・・・・・・・・はっ!」

 気を失っていたジーンさんが目を覚ます。そして、おもむろに僕に頭を下げた。

「薄々感じてはいたけれど、やはり、強いわね。私の完敗だわ。さっきのお詫びといってはなんだけど、これを持っていって」

 僕はジーンさんから手紙をもらった。

「その手紙を見せれば、レシピ本の材料を守ってる相手との戦闘を回避できるわ。本来なら私がやらなければならない仕事なんだけど、そろそろ戻って本業の方を片付けないと部下が泣いてしまうでしょうし。もっとチャップと一緒にいたいのに」

 はぁ、と深く息を吐くジーンさんからは、苦労が滲み出ている。

「そうそう。もしも、ディレクという魔族に会えたら、伝言を伝えてくれる? 書類の山を作って帰りを待ってるから、と。私からだと言えば意味はわかるはずだから」

 何故かちゃっかり伝言役まで頼まれてる。

「迷惑をかけてしまって、ごめんなさい。だけど、これだけは言わせてもらうわ」

 ジーンさんは胸を張り、チャップを睨むほどの強い目力で見据えると、今まで見たどんな笑顔よりも綺麗で不敵で魅力的な笑顔を浮かべた。

「私は、あなたをあきらめるつもりはないわ、チャップ。必ず、恋人にしてもらうから、覚悟して」

「貴方ほど魅力的な方にそう言って頂けて、とても光栄ですよ。また会える日をお待ちしています」

 恋人にするともしないとも返答しないところはさすがだ。さらに、相手を誤解させるかのような言い回しに、ジーンさんが頬を赤らめる。

「嫌な人。恋人にする気がないくせに、期待を持たせるような言い方をするんだから」

 ジーンさんも、チャップの言葉遊びに気づいているが、それでも反応してしまうのだろう。

「あぁ、そうだ。手紙は絶対に守護者たちに見せて。あいつらがこんなバカなことに精を出すくらいに暇とはね。もっと仕事を回してやるわ」

 くくくっと、ほくそえむジーンさんは、そのまま僕らに手を振って、消えた。

「あ! しまった、次にどこ行けばいいのか、聞くの忘れた」

 そのことに、他のパーティーメンバーもしまった、と顔を見合わせる。

「それなら、次は理科室だそうです。レシピ本を守っていた魔族が、そう言ってましたから」

 良かった。これで目的地にまっすぐ行ける、と僕は思ったんだけど。

 その時の僕らは知らなかった。既に他の魔物軍団のパーティーが、薬の材料を入手していたなんて。


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