406話 え?容赦したら怪我するのこっちだよ?
「あ、ジーンさんが戦うのはテルアだけな。俺らが戦える相手じゃないっぽいし」
マサヤが挙手して発言というか、俺たち無関係だからと、ジーンさんに提言してるよ・・・。
「「「「賛成」」」」
え、全員マサヤに賛成派なの!? ちょっと待ってよ、そんなの、あり!?
「ちょ、みんな僕を見捨てるの早すぎない!?」
「えー、だって俺ら、化け物みたいに強いわけじゃないっすよ? 隊長の手に余るんだったら俺らも無理っす」
「悪いが、一応、パーティー全滅の危険は避けたい」
「大体、僕たちどっちかというと巻き込まれた方だよね? 自分で蒔いた種は自分で刈り取ってくれないかな?」
「俺は一刻も早くこのハゲの呪いを解きたいんや。ごめんな」
うーわー。反論できない。なぜに僕が恋敵っぽく扱われてるの、しかも。ここ最近女難続きだよ!
「あー、わかった。時間無制限の一本勝負でいい、ジーンさん? なんでもありだけど、大丈夫?」
「なんでもあり。好都合だわ」
口許を綻ばせるジーンさんに、寒気がするほどの何かを感じた。あ、ちょっと僕早まったかも。
「うふふ。うふふふふふ、見ていてね、チャップ。私、そう簡単には負けないんだから!」
「では、師匠。私が結界を張りましょう。ここで何もなしに戦うのは被害が大きくなりすぎそうなので。ジーンもそれでいいですね?」
「あぁ、そんな冷たいところも好き! 絶対に、チャップに私を認めてもらうんだから、覚悟して!」
後ろの方で、マサヤたちがこしょこしょと、ジーンさんの趣味を疑ってる会話が聞こえるけど、ひとまず、僕は無視した。
「なるほどね。やっぱり強そうだけど、参ったなぁ」
僕が早まった理由。それは。
「最初に言っておくけれど、私にそれほど魔法は効かないわよ」
そうだよね。ジーンさん、魔法半減のスキル持ちなんだよね。そのせいで、物理攻撃の方が効きがいいんだよね。嫌だなぁ。
「はぁ。嫌だなぁ、本当。スラコみたいだったら僕も遠慮なくやれるのに」
魔法でジーンさんの背後に移動すると同時に回し蹴りを放つ。
「え!? ぐっ!」
咄嗟に防いだその反応は正解。だけど、遅い。
「一応、手加減はある程度するけど、死なない程度だから、痛みはあるよ。気をつけてね」
僕は握った拳を、ジーンさんの鳩尾に叩き込んだ。
その後は、マサヤたちがドン引きするまで、ジーンさんがサンドバックになったのだった。




