404話 ヤマトVS小鬼 再び
「ちくしょう! 誰やねん、こんな悪戯したんは!」
ごしごしごしと、頭をこすっても、落書きは消えない。本当に、いつのまにと僕が思っていると・・・。
がらっと空き教室のドアが開いた。
「あれー? そこにいるのはひょっとしてテルアなんだなー。何か買って欲しいんだな」
特徴的な髪型の白髪に特徴的なしゃべり方に僕は聞き覚えがあった。
「ネギボウさん! なんで、ここに!?」
「ちょっとした小遣い稼ぎなんだな。すぐそこの売店で格安で売ってるのに、あの二人のせいで誰も寄り付かないんだな。ようやくお客確保なんだな。テルアからも注意して欲しいんだな」
やれやれと息を吐き出すネギボウさん。
「落書きを消せるような薬は売ってへんか!?」
「あるんだな。良ければ店まで来て欲しいんだな。巻き込まれに注意なんだな」
空き教室を出ていくネギボウさんの後にみんなでついてってみると。
そこで、二大珍獣ではなく、小鬼の像とヤマトが、周囲に近寄ることもできないほどの戦闘を繰り広げていた。その近くで、あきれたように二人の戦いを見守っているのはナーガだ。
「ナーガ。これ、どうしたの?」
「あぁ、テルア。実は、攻略に役立つアイテムが売ってるってことで、パーティーみんなで来てみたんだが、置いてかれてな」
置いてかれた? どういうことか詳細を聞いてみると。
「パーティーメンバーに、回復薬を補充したいって言われてな。別に少しぐらいなら譲っても良かったんだが、個数がありすぎるとばれるのも面倒で。売店に来てみたんだ。そしたら・・・ヤマトが百年の仇敵に出会ったって、完全に戦闘モードになっちまって。止めようかとも思ったんだが、俺の弓矢攻撃じゃ二人が速いから、補足が大変でな。後ろに全く被害を出さずにとなると、お手上げだから、終わるまでここで見守ってんだ。他のパーティーメンバーは校内を一巡してくるってんで、別れた」
話を聞いて、納得する。確かにヤマトと小鬼を止めるのは至難だ。さて、どうしたものか。このままでは買い物もままならない。
「そんなの、簡単なんだな。二人とも、テルアが来たんだな。このまま戦い続けてたら、テルアが買い物できないんだな」
ネギボウさんが言い放つと。二人はひときわ激しくぶつかりあって、距離を取った。僕と視線が合うと、同時に僕の方へとやって来る。
「主! 水くさいぜ、声ぐらい掛けてくれればいいのに!」
僕の肩に留まったヤマトが、体をすりつけてくる。
「ぎぃっ、ぎいっ!(そうだぜ。そうすりゃこいつの相手なんてすぐにやめたって)」
小鬼は、僕の足にしがみついてる。ようやく終わったかと息を吐き出すナーガとネギボウさんに、生け贄っぽくされてない、僕?と、思いもしたが、気持ちを切り替えてネギボウさんに落書きを消す薬を譲ってもらう。ほりっくわーかーさんは、喜んですぐに頭に振りかけて、悪戯書きを消していった。
その際、一つ忠告された。
「どうやら、「見えない徘徊者」がいるみたいだから、気をつけるんだな。不意打ちされると、厄介な敵なんだな。大抵は悪戯程度で済むけど、中には狂暴なのもいるんだな。そのハゲ頭に悪戯書きしたのも、多分そいつらなんだな」
気を付けなければならない敵の情報を聞き、僕らは気合いを入れ直した。入れ直したところで、甘えた声が後ろから聞こえてきた。
「あの、ジーン。怪我はもう治したと思うのですが・・・」
「ええ、怪我は大丈夫だけど、どこから敵が来るかわからなくて怖いの。だから、手を繋いでいて?」
「どこのカップルだよ」
思わずつっこみを入れるマサヤの言葉に僕も全面同意だ。まさか、もしかしてと、声の方へと恐る恐る振り返ると。
チャップと手を繋ぎなから上機嫌のジーンさんと、どこか困ったなという雰囲気を纏ったチャップがいたのだった。




