397話 あれ? 怖いのかな?
「今日はもう解散した方がいいと思うよ、リーダー」
爆笑した後、カカシさんが真面目に提言した。スレイが、理由を問う。
「だって、もういい時間だし。僕たちは別にランキング目指してるわけでもないしさ。まぁ、ランキング目指したいってメンバーじゃなくて、どっちかといえば、腕試しのメンバーだしね。別に僕ら廃プレイヤーってわけでもないし。明日も早起きしなきゃならない人もいるし。何より・・・ほりっくわーかーのツルッぱげのアバター見てたら、戦闘でも吹き出しそうで・・・」
「最後の理由いるんか!? と、いうかそれは明らかケンカ売っとるよな!?」
ほりっくわーかーさんがわめきたくなるのもわかるんだけど、全員が神妙な顔つきになったところで言葉を飲み込んだ。
「・・・そうだな。一理ある。ほりっくわーかーも、明日は早いと言っていたな。今日はそろそろ解散しよう。俺も課題をしなければならない」
「そうっすね。戦闘中吹き出さないでいる自信ないっすから」
「ミキっ!後で覚えときや!回復したらんで!」
わめきつつも、方針は決定したようだ。そこで解散したが、解散する前に、ジーンさんにナーガとヤマトは引きずられていった。
「私はこの二人と大事な話があるので」
黒いオーラが背後に見えた気がしたのは気のせいだろうか? でも、怖いから何も言わない。僕の危機察知が反応してるし。本当にジーンさん何者なんだろう? 魔法具でも着けてるのか、全然正体がわからないんだよね。
「あぁ。ジーンさん、でしたか。その二人には、後で私も話があるので、できるだけ早く解放してもらえると助かります」
「!! わ、わかったわ」
ジーンさんは、すぐさまチャップから視線をそらすと、足早に離れていく。
「?? ずいぶんお優しい方のようですね。ここまで急いでくださるとは思いませんでした」
「いやー、なんやあれはちょっと違う感じがしたで?」
うん。ひょっとすると、ジーンさんはチャップの見た目が苦手なのかもしれない。
「じゃあ、ひとまず明日までに、みんなはレシピ本を探しておいてくれる? 図書室にあるってじいちゃん言ってたから」
「わかったわ」
いいいいいいいっ!? ちょ、マジで心臓ばくばくしてる!
「いつのまに!?」
「話を速攻で終わらせたの。図書室のレシピ本の件は私も手伝うわ」
にこりときれいに微笑むジーンさんの後ろには干からびた干物のような有り様になっているナーガとヤマトがいた。
なんか、お疲れ、二人とも。
「私は、こう見えて魔法には自信があるの。あなたと一緒にいかせてもらっていいかしら?」
ジーンさんは、チャップをまっすぐに見上げた。
「ええ、もちろん。あなたのような方とご一緒できるなんて、幸せ者ですね、私は」
「よろしく頼むわ、私のことはジーンと呼び捨てで是非呼んでちょうだい」
「わかりました、ジーン。私のこともチャップと呼び捨てで結構ですよ」
チャップの言葉に、ジーンさんは急に壁を拳で殴り付けた。心構えしてなかった僕たちはビクッとなってしまう。
「も、もちろんよ。こちらこそよろしく」
なんだろ。ジーンさん、まさか。
「おーい、ログアウトすっぞ。23時過ぎた」
僕はマサヤに急かされて、ログアウトの準備をする。みんなにさらっと別れを告げてから、僕たちは安全地帯まで移動し、ログアウトした。




