396話 あれぇ? 見た顔だ
ピカーンという言葉が相応しい、見事なツルッぱげのおそらく女子生徒達が、音楽室には溢れていた。みんな、わーわー泣きまくっている。
「こ、これは一体・・・」
「どうやら、みんな、やられてしまったようね」
眼鏡を掛け、キリリとした印象が強い女子生徒が、嘆息する。
「え、嘘、誰!? いつのまに!?」
「じ、ジーンさん!?」
ナーガが呆然としながらその女子生徒の名前を呼ぶ。
「うふふ。この私を置いていこうとするなんて、ひどいじゃない、ナーガにヤマト? 後でお仕置きよ」
「ひぃっ!」
「げぇっ!」
ナーガとヤマトが震え上がってる!? 一体この人って・・・。
「あぁ私のことは気にしなくていいわよ。ただの女子生徒その一ぐらいに思っときなさい。それより、今は女子生徒たちの対処をする方が先じゃない?」
正論で、続く質問を封じられてしまった。一体、本当にこのジーンさん、何者なんだろう。
「これはひどいな。全員尼にでもなるのか?」
「いや、リーダー。さすがにそれはないよ」
「そうっすよ! 隊長ちょっとデリカシーがないっす。みんな、泣いてるんすから」
「す、すまん」
「まぁ、隊長がこうなんはいつものことやから、ええとして。なんでみんな、ツルッぱげになっとるんや?」
まるで、ほりっくわーかーのその言葉を待っていたように、イベントのログが流れた。次いで響き渡るどこかで聞いた哄笑。
「わーはっはっはっ! どうやら、少しばかり着くのが遅かったようだな、冒険者らよ!」
天井付近に、ふよふよと浮きながら、何故か青い着物を着たその人物は、どう見ても。
「何やってるの、じいちゃん」
「え、あれ、テルア!? 一番乗りはテルアたちだったんじゃな! あ、いやいや違う。な、何を言っとるか、さっぱり意味がわからんのぅ! 儂は怪人ツルッぱげ爺、お前の祖父ではない!」
「あ、うん。それは知ってる」
「いや、うん。そうなんじゃが。そうなんじゃが! 間違っとる訳じゃないんじゃが、もう少し言い方があると思うぞい!?」
「さっさとイベント進めてください、魔神様」
今、魔神様ってジーンさん言ったよね!? それが一番アウトなんじゃないの!?
咳払いしながら、誤魔化そうとするじいちゃんに魔物組全員の白けた視線が突き刺さった。パーティーメンバーの方はまだ知らない人もいるから、むしろ混乱と困惑してるみたいだ。
「わ、儂は怪人ツルッぱげ爺じゃ! 今はそれ以外の呼び方はない! よ、よいか。この女子生徒たちを助けるには、とても強い毛生え薬、『ドンドン髪の毛伸びるんじゃー!』が必要なのだ。その薬の材料は、校内のあちこちに隠してあるし、さらに! レシピ本は図書室に隠した! そして、それらを守る守護者は、それはもう強い魔物たちじゃ! お前達がこの女子生徒たちを助けられることはないと思うがいい!」
「なんでイベントの敵キャラって情報を自白するんやろな?」
冷静に、ほりっくわーかーさんのつっこみが入った。
「うるさいわい!イベントなんじゃから仕方ないじゃろう! 儂だって、アホっぽいことはわかっとるわい! 余計なつっこみいれるでない!」
「でも魔神様。別に魔神様がわざわざヒントを出さずとも、私がヒントを出すこともできたわ」
ジーンさん! さっきからじいちゃん追い詰める毒しか吐いてないよ!? あぁ、じいちゃんが涙目なってる。
そのまま顔を伏せて・・・。
「もぅいい。手加減してやろうかと思ったがやめじゃ! お前たち、儂を怒らせたこと、覚悟するがいい! とっときの守護者にしてやるーーーっ!! それと、お前はこうじゃぁああああ!!」
じいちゃんは捨て台詞を残して、そのまま移動魔法で、音楽室から去った。去り際、じいちゃんがほりっくわーかーさんに呪いを掛けていったので、ほりっくわーかーさんのグラフィックがツルッぱげになり。
パーティーメンバー&魔物組全員で大爆笑した。
お、お腹苦しい。本気で。




