394話 R指定?
一応の説明を聞いてから、様子見として、遠くから音楽室を一度見ておくことになった。音楽室前に、昨日スレイたちがどうしても通れなかったという強敵が陣取っている。
「ねぇ、あれ誰が考えたのか知らないけど、R指定じゃないの?」
「あぁ、確実に食らいそうだよな」
僕とマサヤは小声で会話している。音楽室前に陣取ってる魔物。それは。
「インキュバス&サキュバスコンビとか。エロすぎだろ、明らか」
美しいセクシーかつエロい肢体を惜しげもなく晒した美女と、細身でありながら艶やかで蠱惑的な雰囲気を出している美男。
淫魔の二人組は、近づくだけでこちらを魅了の状態異常にし、生気を吸い取って出戻りさせたり、同士討ちで出戻りさせたりしてくるらしい。
ベチョ。何かが僕の背中にのし掛かった。
『嫌な敵だねー。酒呑の人肉漬物で一発KOさせちゃおうよー、主』
「あぁ、アイテムで相手の体力減らすってのもありだね、確かに。あとは、遠距離攻撃とか?」
「あぁ、それなら俺とヤマトがやろうか? ここから、大技ぶっぱなせば多少は効くだろうし」
「魔法ならば、私にお任せを。合わせて追撃致します」
「我らは一体何をすればよい、主殿!?」
「あ、今回は出番なしで」
「うぉおおおおお! まさか戦いに出ることすら拒否されるとは! 修行が足りなかったか」
「槍でもちょいきつそうだな」
「ちょっと待って」
カカシさんが、額を押さえながら、何故か待ったを掛けた。
あれ、カカシさん、どうかした? おかしなところなんて、魔物軍団が勢揃いしてるぐらいなんだけど。
「あー、なんだ、みんな集まったんだな、ここに」
「探せていないのはあとは音楽室だけですからね。集まるのは当然ですよ。ちなみに私たちが正気で残ってるのは、ブラッドと師匠のお陰です」
僕とブラッドのおかげ? どういう意味だろう?
疑問が顔に出たのか、チャップは丁寧に答えてくれた。
「師匠もブラッドも魅力を振りまくっていますからね。二人の側にいたら、自然と魅了耐性を獲得するんです」
「そうなのか?」
「ええ。カッコよさに関しては、二人の右に出るものなどそうはいませんよ」
チャップの言葉に、集まった魔物組は全員が頷く。ただし、アンタレスだけは新参なので、疑問符を浮かべているようだが。
「うーん。問題ないなら、やっちゃっていいかな。僕も早くログアウトしなきゃいけないし。スレイ、みんなに任せてもいい?」
「え? あ、あぁ。別に構わない」
許可も出た。アンタレスだけは、後ろに下がらせて、と。
「じゃあ、みんな。全力でやっていいよ」
僕の一言に、他のパーティーメンバーは身を震わせた。
魔物組の雰囲気が一気に変貌する。
それは、強者だけが纏う空気であり、覇気。ぶわりと広がったそれに、淫魔の二人組も当然気づくが、ほとんどなす術なく、蹂躙されていくのだった。




