386話 え、それ食べんの?
「あれ? なんだろ、これ?」
僕は、放送室の探索で黒く光る玉を見つけた。鑑定してみても、???と出て、全く用途がわからない。
「? 何か見つけたの、テルア君?」
「あ、はい。これが見つかって・・・」
カカシさんに黒玉を見せると、カカシさんも用途が不明なものに戸惑っているようだった。
「こちらは、通信系の魔法具ですね。壊れてますが」
チャップがひび割れている携帯のように四角くなってる外が艶々になっている小箱を指し示した。
「通信具かぁ。もしも、別行動にしたときにあったら便利だよねぇ」
「確かに。はぐれたときなどに便利そうだな。あぁ、ところで・・・今更ながらだが、どうしてここにテルアの魔物がいるんだ?」
スレイの問いかけに、そういえばいたなと僕は思い出した。くっつきむしよろしく、背中にベッタリくっついてたから、本当に今更だ。
「あぁ。師匠に聞きたいことがあってここまで来たのです。他のパーティーメンバーとはもう解散しましたからご安心を」
「あぁ。はやいこと行ってさっさと帰る組やってんな。うちのパーティーは、遅くに出てしもたから、まだもうちょい探索する気やけど」
なるほど、と手を打つほりっくわーかーさん。
「こっちにもあったっすよ。ただし、触るとヤバそうなやつで」
「なんだ、これ? ぶよぶよして・・・うわっ!?」
その黒いぶよぶよの生き物は、何故かチャップに狙いを定めたようで、必然、その側にいる僕の方にまでその黒いぶよぶよは飛びかかってきた。
「はっ!」
「キキッ!」
「えい」
チャップが剣を抜き放って一閃し、ブラッドが黒いぶよぶよに牙を突き立てて毒状態にし、最後に僕がこの間入手したばかりの魔剣を突き立てた。
黒いぶよぶよの生き物が断末魔の悲鳴を上げながら霞のように消えていく。
「うっわぁ。間近でやられると、ものすごいね、やっぱ」
「こーいうやつなんで」
「非常識だが、頼りになる」
「そーいう問題やない気がするんやけど」
「あれ? 何か落としたっすよ。その黒いぶよぶよ」
落ちたのは、ぷよぷよになった白い塊。それが動く様は、虫の卵が孵ろうとしているかのようで、僕以外の全員が気持ち悪げにそれから離れたが。
「キキッ!」
「欲しいの、ブラッド?」
「キキッ!」
頷くブラッドに僕があげると、ブラッドは嬉しそうにその白の塊を飲み込んだ。
「おいしかった?」
満足そうにするブラッドに、パーティーメンバーがひいている。
「どうやら、一種のブースターのような役割を果たすみたいですね。完全に飲み込まなければ、効果は出ないみたいですが」
チャップがブラッドから話を聞いて説明する。
「じゃあ、次にあれが出たら、誰かが飲み込めばいいんじゃ・・・」
「絶対に断る!!」
別にマサヤと断言した訳じゃなかったんだけど、マサヤがいの一番に声を上げた。他のメンバーも、それはちょっと、と言いたげに目をそらしている。
仕方ない。今度見つけたら自分で飲み込んでみるか。
いやー、毒やら状態異常薬じゃないだけましだしね。
どんな味がするんだろ? 興味あるね。
とりあえず、放送室の調査ではそれ以上の発見はなく、次の目的地に向かうことにしたのだった。




