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383話 イベント ハイド&シヴァ組(※)

 ちょん、ちょん、と肩に触れてくるその感触にまたか、と思いつつも振り返ると。

『罠あるよー』と、書かれた白板を示された。

「罠があるみたいだから気をつけなさい!」

 注意換気すると、パーティーメンバーの気が引き締まるのが手に取るようにわかった。

「最後尾なのによく気がついたわね」

『最後尾だからだよー。よく見えるからー』

 そこにいるのは、三つ目の蛞蝓。普通ならば気持ちが悪いと言うところなのだろうが、ギャグデフォルメされた姿なために、そこまで嫌悪感はない。

 この三つ目蛞蝓はシヴァと名乗った。前方には黒い大きな影が歩いている。

 黒岩大蜘蛛。ハイドと言う名で、シヴァの仲間だ。

 三つ目であり、薬品を扱っているが、シヴァは斥候役としてかなり優秀だった。普通ならば、気づかないような違和感を覚える場面には必ず教えてくる。そして、一緒に来た黒岩大蜘蛛も、その巨躯に反してほとんど音を立てないし、存在感が妙に希薄で、たまにパーティーメンバーでさえ後ろを振り返って確認するぐらいだ。正直、最初は魔物と一緒だと告げられた時にはギルドを抜けるかどうか、真剣にアズサは悩んだが、今はこの判断に感謝している。何故なら。

「うわぁ!?」

 シュバ!!

 前方の剣士が罠を発動させた途端、そこから剣士の姿が消えた。

「わ、悪い。助かった」

 ハイドが剣士を自分の糸で絡めとり、自分の背に引き上げたのだ。ハイドやシヴァのお陰で、地雷フィールドと呼ばれているプレイヤー泣かせの罠満載のフィールドも比較的安全かつ、ダメージを負わずに進めている。

「ハイドは、誰かを背中に乗せるのに抵抗はないの?」

『ないよー。だっていっつも主かシヴァが乗ってるしー』

「へぇ。私も頼めば乗せてもらえるのかな」

 言い終わる前に、シヴァの隣にいた人物は浮遊感と共に、ハイドの側へと着地していた。

「本当、ハイドはすごいね。乗せてくれてありがとう」

 ぎちぎちと顎を鳴らしている。見た目は確かに怖いかもしれないが慣れるとそれほど怖くはない気がした。

「警告! 五時の方向、魔物と思われる気配あり。臨戦態勢に移行・・・」


 ボガガガガン! チュッドォオオオオン!! ボガァアアン!!


「「「「・・・・・・・・・・・・。」」」」


 シヴァが、三つ目をいつもよりもキラキラさせていた。その前には、黙々と立ち上る黒煙と、いまだ小規模の爆発を起こす何か。おそらく、爆薬を加工したものなのだろう。呆然としている間に、ハイドが音もなく動いた。

 黒煙で見えないが、感覚でハイドが襲いかかろうとして来た魔物たちを踏み潰しているであろうことがわかる。まるで視界が効かない中、相手の居場所を正確に突き止めるハイドもすごいと言わざるを得ない。

「改めて思うと、シヴァもハイドもなんでわざわざパーティーに組み込まれたのかしら」

『それはー、みんなでバラけた方が効率がいいって、この間思い知ったからだよー。シヴァは薬草とか欲しいんだけど、みんなは他の物欲しがったのー。だから、別行動してるのー』

 シヴァが書いた白板の返答に、パーティーメンバーは深く納得した。

「じゃあ、もしも、みんな同じ目的で、イベントに参加したら、どうなったんだろうね」

 何気ない問いかけにシヴァはしばし考え込み。

『その時は主と一緒だからー、多分みんな張り切って、異世界人とか魔物をちぎっては投げて、やり過ぎて辺り一帯の魔物と異世界人が全滅するかなー。素材回収の邪魔とかでシヴァ、容赦なく中性子爆弾(ちゅうせいしばくだん)使っちゃうかもー』

「ちゅうせいしばくだん?」

「バカ、明らかヤバイだろ、これ以上は! やめとけ!」

 ハイドの上の剣士が仲間を制止したが、時既に遅く。


『中性子爆弾は、建物とか傷つけずに、魔物とか人間とかだけ消滅させる爆弾だよー。調合が難しくて、苦労したんだー。移動魔法使えばその場から一瞬で離れられるから、シヴァたちは無事で敵だけいなくなるのー』


 返答を見たものたちは、心に誓った。絶対にシヴァたちの敵にはなるまい、と。


『温室、行かないのー?』

 シヴァたちの目的は、敷地の裏手に造られた温室だ。そこが目的地である。

「いい、みんな。わかってるわね!? 絶対にハイドやシヴァの足手まといになったらだめだからね! 中性子爆弾使わせないように、気合いいれて行くわよ!」

 全員が即座に了解するのだった。


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