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379話 チャップの葛藤 (※)

 正直、サトルの語った話の続きが聞きたくて仕方がなかったが、チャップの心は葛藤していた。

 これは、本当に誰かの口から聞いていい話なのだろうか?

 師匠であるテルア・カイシ・クレストの過去。

 知りたくないと言えば嘘になる。

 だが。

「・・・・・・すみません。私から振った話ですが、おしゃべりはここまでにしておきましょう」

 チャップは自分の好奇心をなんとか抑え込んだ。ここで、好奇心に負けて話を聞いてしまえば、自分が後悔してしまう。そんな思いからだった。

「キィッ!?」

「ブラッド。私は・・・私にも誰かに聞かれたくないことはあります。でも、そんな私の失敗なんかとは比べてはいけない話のように思うのです」

 例えば、魔法を失敗したとか、演技の練習中にうまくしゃべれずに舌がもつれたとか、他愛もない失敗の数々。そんな話であれば、水を向けられれば酒の席ならば話の種にするかもしれない。だが、今までチャップはテルアの口からゼルサガのことを聞いたことはないし、マサヤも触れたことはない。

 二人はその事を話したくなかったからではないだろうか。

 失敗は誰にでもある。だが、人には言えない、言いたくない失敗を本人ではなく、誰かの口から、本人のいない場所で聞かされるというのは、違うとチャップは思うのだ。

 知りたいのであれば、直接本人に訊けばいい。

 その勇気さえ持てずにこそこそと秘密をかぎ回るのは信頼を裏切る行為ではないだろうか。

 この件は軽く扱ってはならない、そんな気がした。

「すみません。私は席を外します。一旦解散で構いませんよね? 薬などの補充もあると思いますし。行きましょう、ブラッド」

 チャップは、なけなしの理性をかき集めて、その場を離れた。

 話の続きを聞きたいのか、聞きたくないのか、もはや自分でもよくわからなかった。ただ。

「師匠に無性に会いたい。いえ、会いに行きましょう」

 話の続きを知りたくて堪らなかったブラッドは、当然文句もない。

 チャップはふらふらと誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように、テルアの元へと魔法で移動した。


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