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378話 ラブラブハート争奪戦 チャップ組(※)

 たくさんの魔物に囲まれながら、激しい戦闘をしているにも関わらず、その声は不思議と戦場によく響いた。

「ブラッド。合図を出したら前線、盾役の回復と、援護を。ターゲットを移します。イナバさん! 無理せず一旦ヒトミさんのところまで退いてください。ヘイトを集めすぎてます。ヒトミさん、魔法準備はできましたか? 三秒後に8時の方、できるだけ密集地帯に放ってください。3、2、1、今です!」

水球(ウォーターボール)!!」

「ブラッド!」

「キキッ!」

 呼号を受けて、ブラッドが前線の盾役に回復薬を掛けて、さらにヒット&アウェイで敵のターゲットを盾役から自分に移す。

 パチン。

 指ならしの音が響いたかと思えば、ブラッドに気をとられた魔物たちが目には見えない結界の中に閉じ込められていた。

 そこに、豪火玉が幾つも投げ込まれる。断末魔の叫びを上げながら、魔物たちは燃えていく。

「リリアナさん! イナバさんの回復優先! 回復するまでイナバさんはヒトミさんとリリアナさんの護衛です! ブラッド、私が前線で一時、時間を稼ぎます! あなたも、敵の足止めを! 全員の体力が回復したのなら、一点集中で、ここを突破し、撤退します!」

 その言葉に、誰も反論するものはなかった。その後、なんとか全員無事に安全地帯まで撤退することができ、チャップは息を吐いた。

「ふぅ。とりあえず、なんとか逃げ切れましたかね」

 チャップの言葉に、パーティーメンバーは全員が息をついた。

 メインに盗賊を選んだ茶髪のショートカットの少女、イナバ。

 回復役として同行している金髪青目のリリアナ。

 魔法使いであり、魔法攻撃メインの緑の髪のお下げをしているヒトミ。

 このメンバー唯一の男性であり、盾役である無口なサトル。

 この四人に、チャップとブラッドが加わった合計六人のパーティーで、イベントに挑んでいた。

「あ、危なかった〜。本気で死に戻りになるかと思ったよ」

 リリアナの言葉に、イナバがしゅんと項垂れる。

「ごめんよ、あたいが調子に乗ったばかりに、みんなを危険な目に遭わせちまって」

 モンスターハウスの地域へと進む前に、チャップが忠告したにもかかわらず、それを無視して行こうと言い出したのはイナバだった。故に責任を感じている。

「ひとまず、これからは一応私の忠告も聞いてもらえるものと思ってもよいですか?」

 チャップの問いに、最初は懐疑的だった四人も頷く。先程のモンスターハウスの罠は、正直チャップたちがいなければ切り抜けられなかっただろう。改めて、彼らが何故パーティーに組み込まれたのか実感する機会となった。

「まぁ、確かに私は見た目もこんなので、皆さんが疑いたくなる気持ちもわかります。ですが、やるからには全力で挑みたいと思っていますので。できる限り、私の指示は聞いてください。でなくば、死に戻りされても正直、責任をとりたくありません」

「「「「はい!」」」」

 少しだけ威圧を掛けたチャップの言葉に全員が返事をした。

「でも、さすがだよなぁ。「魔光の王」。違うゲーム内でも、こんなに強い魔物を育てるんだから」

 サトルの漏らした呟きを、チャップの耳が拾った。

「「魔光の王」とは? まさか、師匠のことですか?」

「あぁ。お前の主、テルア・カイシだろ? セルサガやってたプレイヤーなら、大体気づくんじゃないか? 色こそ違えど見た目ほとんど変わってないし。有名だから」

「有名とは? 師匠のことですから、きっとすごいことをしていたのでは?」

 少し興奮しながら先を促すチャップだが。続いた言葉は予想を裏切るものだった。

「・・・・・・あぁ。いい意味でも、悪い意味でも、有名だよ。ゲーム内で魔物の王国、スラゴリ王国を造った創始者。そして、世界規模の戦争を引き起こした、張本人」

 チャップは自分の耳を疑った。ブラッドがキーキーっ!と、騒ぐ。

「だから、「魔光の王」。魔法を操らせれば、ゲーム内で一番。でも、どっちかというと、光も闇も背負ったものって意味で使われることの方が多い。今でも多分、セルサガをしたたくさんのプレイヤーの記憶に、残ってる。残酷なのか、優しいのか、誰にもわからなかった王様だ」

 チャップとブラッドの頭は真っ白になった。




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