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375話 お前は俺をなんだと思ってるんだ!とマサヤに後で怒られた

 体育館から校舎に繋がる、渡り廊下近くの場所。

 それは、まるで悪夢のような光景だった。ステータス差なのか、人が次から次へと飛んでいく。ちなみに比喩ではない。文字通り、全員が空に飛ばされていく。まるで、巌のような顔立ちに、次はどいつだと、ぎらつく眼光。さらに恐るべきことにその人物は女子の制服を着ているのだ。つまり、救出対象であるはずなのだが。身長は二メートルではなくおそらく、二メートル五十を越している。ちょろっと垂れ下がるお下げは、ぶん、と頭を振り回すと、まるで鞭のようにしなって、近づこうとしたプレイヤーの頭を打った。

「すごいねぇ。助けなきゃいけないほどか弱く思えないね、あれは。ん? みんな黙りこんでどうかした?」

 僕が思ったことをそのまま感想にすると、何故か周囲のメンバーは全員がドン引きしていた。

「て、テルア。一応、確認するが、お前が言ってた相手って・・・」

 わなわなと唇を震わせるマサヤに僕はこっくり頷いた。

「うん、あれ」

「あんなの、どうやって近づくんだよ!? 普通に近づいたら、あのお下げの餌食になるだけだぞ!」

「じゃあ、普通に近づかなければいいんじゃない?」

 僕はマサヤの肩に手を当てて、そのままマサヤをお下げの女子生徒(?)のすぐ真横に移動魔法で飛ばした。剛拳が唸る。だが。

「うわぁあああああ!?」

 悲鳴を上げつつ、マサヤは横っ飛びでその拳を回避し、ごろごろと地面を転がりつつ体勢を建て直す。

「! お主、やるな!?」

「え、ちょ、まっ!?」

 そのまま、マサヤは女子生徒(?)にロックオンされて、剛拳と連脚の嵐に見舞われる。

「おおー。さすがマサヤ。運動神経いいなぁ。あれだけ動けたら、みんなも一目置きそうな感じ・・・あれ? どうかした?」

「いや。その。マサヤって、あんなに強かったか? 俺の知ってる限り、あそこまでの動きについていけるようなステではなかったと思うんだが」

 スレイさんの疑問に、全員がうんうんと同意を示す。

「さぁ? マサヤってば何かドーピングアイテムでも手に入れて使っちゃったんじゃない?」

 僕は、真相を知ってるけど、さすがにチョコで強くなったとか思わないよねぇ、普通。

「あ、隊長! あれ!」

「や、やめて! もういいから!」

 女子生徒(?)の背中には、小さな人影があった。必死に女子生徒(?)を止めようとしてるようだが女子生徒(?)は止まらないようだ。

「どうも、みんなの予想だとあの小柄な影がキーパーソンっぽいんだよね。風魔法で会話してみようか。マサヤがもう一人の気を引いてくれてるうちに」 

「お、鬼がここにおる・・・! 一応、マサヤん、知り合いやろ? 心配せーへんの?」

 ? なんで、みんなそんなに引いてるんだろ? だって、マサヤだよ?

「マサヤがやられるわけないじゃん。僕が知ってる中でも、プレイヤースキルは十指に入るぐらい、断トツだよ? みんなが知らないだけで、マサヤはステータスさえそれなりにあるんなら、誰が相手でもそんな簡単に負けたりしないよ」

 今の段階で、おそらく、チャップで相手になるかどうかだ。それぐらい、実のところマサヤは強い。本人は無意識なのだうが、剣道をずっと続けてきたというマサヤは非常に体幹がしっかりした、いわゆるぶれない動きの達人なのだ。慌てていても、体に染み付いた無駄の少ない軽やかな動きは、すぐに次の動作を可能とさせる。体さばきに関しては、間違いなく僕より上だ。僕でさえ、魔法縛りをすれば、マサヤに遅れを取らないでいる自信はない。

「確かに、テルア君の言う通り、案外大丈夫そうだよ、ほら」

 カカシさんも、マサヤの動きに驚いてるようだが、まるでやられる気配がない安定したマサヤの対応に、大丈夫だと確信を抱いたようだ。

「それで、どうするんだ? このままだと・・・」

「や、やめなさーいっっ!!」

 大きな声が、周囲に響いた。途端、マサヤをロックオンしていた女子生徒(?)の動きが止まる。

「よく見て! その人、魔物じゃないよ、デカちゃん!私たちを助けに来てくれたんだよ!!」

 大声が続く。僕が風魔法で音声拡大しているからだ。

「あっ」

 デカちゃんと呼ばれた女子生徒(?)は気まずそうにマサヤから顔を背けた。

「ご、ごめんなさい。あたし、周りが見えなくなっちゃってた。正気に戻してくれてありがとう、チビちゃん」

 ひしっと手を握りしめ合うそのすぐ側で。

「俺への謝罪はなしかよ」

 ぼそりと恨みがましげにマサヤが呟いていた。


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