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37話 ご褒美

 「ファンタジーライフ」のゲーム配信から十五日目。

 僕は学校(昼まで)を終わらせると、意気揚々と自宅に帰宅し、ゲームの準備を始めた。


 よーし、今日は「ファンタジーライフ」でじいちゃん課題のクエストを受けるぞ〜。

 昨日のことは、気にしても無駄無駄!

 それに、セーブしたのは修練の塔周辺だから、どっちにしろアールサンの街に戻るには、じいちゃんの力が必要だし。

 さーて、クエストはどんなものなんだろう? 今から楽しみだね!



 僕がゲームにログインすると、おろおろするシヴァたちと、体育座りでいじけてるじいちゃんがいた。

 シヴァたちは、少しでもじいちゃんを励まそうと、それぞれ頑張ってスキルを駆使して色々やってるんだけども。

 じいちゃんはまるで反応しない。

 いや、反応はしてる。してるんだけども。


「シヴァ。毒攻撃はもっと防御の薄い場所を正確に突かんと相手は毒にならんぞ」とか、「ブラッド、超音波は相手の状態に合わせて使い分けい。でないと、耳を塞がれるだけで相手にほとんどダメージを与えられないということにもなりかねんぞ。牙の通常攻撃をもっと多用するべきじゃ」とか、「ハイド。今のお主は敏捷が低いのじゃから、基本は相手から仕掛けさせてのカウンター攻撃じゃ」とか、「チャップ。せめて技は完璧に仕上げてから使え。練習不足じゃ」とか、本当に落ち込んでるの、と聞きたくなるくらい、的確にみんなにダメ出ししてる。

 あ、みんなちょっと落ち込んでる。


「じいちゃーん? みんな落ち込んで、メインジョブのスキル上げ始めちゃったんだけど」


 シヴァは薬作り(あれ、あんなガラス器具持ってたっけ?)、ブラッドは鏡を使ってのかっこいいポーズの研究(その鏡はどこから出したの?)、ハイドは自分の糸と足を使って器用に布を織り上げ始める(いや、ちょっと待とう。そのハイドサイズの織り機はどうやって入手したの?)、チャップは軽業の練習をしてる(トランポリンという補助道具を使いながら・・・って、トランポリンなんてどこにあったの!)と、つっこみどころが満載なんだけども。


 じいちゃんに頼んで入手したのかもしれない、と考えると納得してしまう僕はおかしいのかな?


 それに、ここだと修練の塔がすぐ側にあるしね。ガンダムッポイノから譲ってもらったのかもしれないと考えると、さらに納得してしまうんだよね。疑問は疑問のままでいいや。

 

「!! て、テルア! 来とったのか!」

「いや、修練の塔の外に水晶あるし。そりゃここに戻ってくるよ」

 僕が話しかけると、じいちゃんはざっと立ち上がり、狼狽しながらも嬉しそうにしている。


「テルアが、テルアが儂に話しかけてくれた。嫌われたと思っておったのに・・・」


 感動してるとこ悪いけど、釘はしっかり差しておこう。


「いや、昨日のは本当に腹立ったし、落ち込んだし、しばらく絶対に口きかないって、僕思ったからね、じいちゃん?」


「うっ」

 怯むじいちゃんに、僕はとりあえずアールサンの街まで送ってくれるよう、お願いする。

「アールサンの街に送るのはいいんじゃが、こちらに戻ってこれるのか?」


「それは大丈夫。戻ってくるときは、ガンダムッポイノからもらった修練の塔外壁を使うから。一週間はアールサンの街でクエストをこなしながら、調べものするよ。アールサンの街だと、ハイドたちと一緒に入りにくいから、みんなはここで、しばらくじいちゃんに相手してもらって。一週間後、またこっちに来るから。その時は、僕もある程度レベルが戻ってるだろうし、みんなと手合わせしようかな」


 シヴァたちは、僕と手合わせすると聞いて、途端にやる気を出し始めた。

 チャップだけは不思議そうに小首を傾げてる(不気味さが増してるけど)。


「シショウト、テアワセスルトキイテ、ナゼ、アソコマデ、ヤルキヲダシテルノデスカ」

「そりゃ儂が出したご褒美目当てじゃのう、おそらく」

「ゴホウビ? ナニカアルノデスカ?」

「テルアと手合わせして勝てたなら、儂自慢のテルアメモリアル閲覧の許可を出すと言ってあるのじゃ!」


 僕はずっこけかけた。

 テルアメモリアル!? 何それ、そんなの作ってたの、じいちゃん! そして、それの閲覧許可であそこまでみんながやる気になってるの!?


「ふふふふふ。チャップよ、これはテルアがゲームを初めて間もない頃の、ちょっとした失敗はもちろん、テルアのパフォーマンスの練習風景もこっそりと隠し撮りした、秘蔵のお宝メモリアルなのじゃ!」

「オオ! ソ、ソレデハ、マサカ、ワタシガミタ、トウナイデノシショウノ、アノショーノエイゾウモ?」

「無論、入っておる!」

「ウォォオオオオ! ワタシモヤルキガワイテキマシタ! ミナサントイッショニ、レンシュウシテキマス!」


 チャップまでじいちゃんに乗せられた!

 じいちゃんはすごくいい笑顔で、うんうん頷いてるけど。


 待って、つまり僕が一週間後みんなと手合わせして負けると、その名前が恥ずかしい僕の肖像権侵害の疑いのあるデータがみんなに見られちゃうの!?


「じいちゃん! ひどいよ!」

「あやつらをやる気にさせるには、これが一番なんじゃ。みんな、テルアのことがいっとう好きじゃからのう。まぁ、そう怒るでない、テルア。負けたくないなら、テルアがレベル上げを頑張ればいいだけの話じゃ。あ、あと魔法大図鑑の勉強もちゃんとやるんじゃぞ。一週間後にはテストするからの」

 うわ! さらに課題を追加されたよ! じいちゃんの鬼! 悪魔! 魔神!


 僕は毒づきながら、じいちゃんにアールサンの街まで送ってもらったのだった。


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