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368話 はい、お呼びで? (※)

 武骨な執務室の一室で、その二人は向き合っていた。一人は有名なギルドのマスターであり、もう一人は彼の右腕だ。

「え? ちょ、ちょっと待ってよ! 何それ!? 僕は聞いてないよ!?」

「当然だ。今言ったからな」

「今言ったからな、じゃないよ! どういうこと!? なんで、魔術師ギルドから、今回のイベントでは協力できないってお詫び文が届いてるんだよ!?」

 紅蓮騎士団のギルドマスターであるスレイはそっと顔をそらした。

「その、だな。どこからか、俺たちがテルアと組むという情報が流れたらしくてな。それで・・・」

 今、紅蓮騎士団と付き合いの深い魔術師ギルドは、過去にテルアに手を出して痛い目をみたらしい。故に、その禍根を引きずって、紅蓮騎士団全体に協力できないから、と言ってきたのだ。

「それでじゃない! どうするわけ!? イベントはもう明日だよ!? 魔法使い抜きで進められるほど、甘いと思えないんだけど!?」

「うちは、基本的に物理攻撃専門だからな。魔法攻撃でしか倒せない相手が出てきたときは厄介過ぎるし・・・俺も困ってる。なんとかならないか、カカシ?」

「なんともならないよ!! そんな都合のいい話があるなら、僕だって叫んでないよ!?」

 カカシの悲鳴に、スレイもやはりそうか、と頷くのみだ。スレイとて、今から代わりのギルドが見つかるとは思えずに、相談を持ちかけたのだ。いいアイデアがあるならともかく、そういう訳にもいかない。はぁ、と嘆息し、どう対処したものかと二人で頭を悩ませる。

「それならさー、いっそ、うちの魔物も含めて、イベントメンバー決めする?」

「魔法使い系の職業持ちなのか?」

「ううん。全然。魔法使い系の職業持ちはいないよ。ただ、全員魔法とかそれに、準じた特技とかあるから、役立たずにはならないよ。回復魔法は全員使えるから、最低、回復役にはなれるし」

「だが、実力が本当にあるかどうかは別だろう?」

「それも大丈夫。HPが1,000以上あるから、そう簡単にやられないよ。回避とか防御は自分でするし」

 HP1,000以上!? 

 スレイとカカシは驚きのあまり硬直し、不意に気づく。この部屋に、自分達以外の第三者がいることに。二人が鈍いわけではなく、テルアの隠密があまりに優れすぎていたために発見が遅れてしまったのである。

「て、て、て、テルア!? どうして、いつのまに!?」

「着いたのは五分ほど前から。興味深い話だったから、口出ししてみた」

 にっこりと無邪気にさえ見える笑顔で笑いかけてくる赤髪琥珀色の瞳の子ども。だが、子どもと侮ってかかれば、ただ死ぬよりも恐ろしい目に遭うのは二人とも経験済みだった。

「それで、さっきの話は本当なのかい? 本当ならこちらとしても助かる申し出だけど」

「うん、大丈夫だよ! みんなの方からたまには違う人と組みたいって言い出したんだし。よっぽどでない限り、解消とかもしないと思う」

 テルアが力強く頷いてくれる。それに、カカシも一考の余地があると考えた。だが、カカシの思惑に反して、即断即決主義のスレイはすぐさま返事をしてしまった。

「頼めるなら、助かる。恩に着る、テルア」

 了承しちゃったー!! この即断即決主義者がっ!!

 カカシの心の声など露知らず、スレイはその後に簡単な打ち合わせをテルアとしてしまい、もはや断れる雰囲気ではなかった。内心頭を抱えるカカシに、何も知らないまま、テルアを無条件に信じるスレイ。

 あとで、絶対に文句を言うことをやることリストに追加しながら、カカシもまた打ち合わせに参加するのだった。


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