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366話 バレンタイン騒動 7

 バレンタインデー当日。マサヤは何度も深呼吸を繰り返しながら、テルアと約束した場所へと向かった。テルアはもう既に来ていて、マサヤが妙に悲壮な覚悟を募らせた顔を見て、疑問符を浮かべている。マサヤは、何でもない、と言い訳し、何度も何度もシミュレーションした想定で、台詞の練習を始める。

 ぶつぶつと、真顔で真剣に、上手い。こんな上手いもの食ったことがねぇ、を繰り返す悪友の姿に、テルアが頭の病気を疑い始めた頃。魔物軍団が現れた。そして魔物軍団を代表して、チャップがきれいな箱を二人に渡してくる。

「日頃の感謝の気持ちを込めて私たちからプレゼントです!どうぞ受け取ってください!!」

 ひとまず、中身を見ずに外見だけなら、十分合格を渡せる範囲だ。マサヤは、綺麗なリボンの花までつけてある箱をそう評価する。

「ありがとう! 開けていいの、これ?」

 テルアの期待に満ちた眼差しに、魔物軍団が嬉しそうに頷いた。テルアがわざわざ包装紙とリボンだけを移動させて、箱を開ける。

「すっごい! みんなのチョコだね!!」

 テルアが賞賛する。箱の中に入っていたのは、魔物軍団を模したブラック、ホワイト、ミルクチョコだった。さらに、別枠でアイシングでクレスト神や魔神が描かれたクッキーまで入っている。

「どれを食べるか迷うなぁ。あ、でも、僕が一番好きなのはホワイトチョコだから、これから食べるね!」

 テルアはヤマトのチョコを何の躊躇いもなく、口の中に放り込んだ。

「っ!!!! おいしい!? 何これ!?こんなの現実でも食べたことないよ!!」

 テルアが絶賛する。それほど、美味しいのかと疑いながら、マサヤもミルクチョコを口の中に放り込んだ。

「なんだこれ!? めっちゃうまい! 何、このハーブの香り!? さっぱりしてて、とにかくうまい!!」

 魔物軍団がほっと安堵しているのを横目に、テルアとマサヤは、チョコを食べ続けた。気づけば全て平らげていた。マサヤは、疑っていたことを深く、魔物軍団に詫びた。

「すまん、こんなにおいしいものをくれるとは思わなかった」

「いえいえ。私たちだけの力ではありません。たまたま、とても良いお菓子職人に出会えたから、完成したのです。やはり、お菓子職人の情報を集めておいて正解でした」

 最後! 最後の一言が怖い!! つまり、あれか!? 最初からこいつらにはチョコ作りなんて無理だと思ってたわけか!?

 先見の明があると言えばいいのか、それともそこまで信用がないのかと思えばいいのか、マサヤは悩む。だが、そんなマサヤの悩みを吹き飛ばすぐらいの出来事が降ってきた。

「でも、すごいねぇ、このチョコ。おいしいのも当然だけど、永久的にステが+1000になるって、一体何混ぜたの?」

「いえ、私たちは何も混ぜてませんよ。ただ、通りすがりのお酒職人に、ウイスキーをダメ出しされて、ちょっと手伝ってもらっただけです」

「俺たちは、よくわからないがチョコ中毒の奴につくってもらった。なんでも、瀕死の重傷を治してさらに体力を向上させる至高の薬になるんだとかなんとか口走ってたな」

「我らはたまたま、良いお菓子職人に出会えて、渡りに船と、話を受けたな」

 順に、チャップ、ナーガ、金閣の言葉である。テルアはそっかぁ、と呟いた。さらに、隣にいるマサヤにしか聞こえない声で、暇な神様もいたものだね、と呟いた。その呟きの真意を問うことなど、当然マサヤにできるはずもなく、マサヤは今回の件は美味しいチョコを食べられて幸せだったという思い出だけ残したのだった。


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