364話 バレンタイン騒動 5
「みつけたぞぉおおおお!!」
その声は、これから雪崩に飲み込まれそうなマサヤの耳にも届いた。
頭上から、影が射したかと思うと、その影はどんどん大きくなっていき。
「でりゃぁああああ!!」
どごん!!
ハンマーを担いだ大男が、振りかぶった得物が、大きなヤギの角をへし折る。
「グメェエエエエエ!!」
「しかも、ヤギと同じ鳴き声!? 変なところで運営律儀!!」
「今、空から降ってきましたね。あ」
チャップの何かに気づいたような声に、マサヤもすぐに気づく。
「絶好の機会じゃあああ!! さすがは兄者!!」
さらに、降ってきたもう一人の銀の鎧の大男が、ヤギに鎖を巻き付ける。
「我らに屈服せい!!」
とんでもない量の魔力が鎖に流し込まれ、鎖の重さと強度を変える。
絶対に切れず、重い鎖に巻き付かれたヤギは、暴れまくる。だが。鎖はびくともせずに、さらには金ぴか鎧の男が、身動きのとれなくなったヤギを、ハンマーで殴っていき、その度傷が増えて、ヤギは満身創痍になる。雪崩は、チャップがつまらなさそうに防いでいた。防げるなら、最初から言えよ!と、マサヤは叫びたいくらいだ。
「我らに従え! 我らの配下となれっ!」
「ンメェェ。ンメェェ!!」
とうとう、ヤギが小さく頷く。そして、その首に赤い首輪がはまった。
「よし! これでなんとかミルクは確保できたわい! 今日は酒宴じゃな!!」
「そうだな、兄者!!」
二人はガシッと腕を固く掴み合う。
「さすがは兄弟。いい、連携だったぜ!!」
そこに、降りてきたのは三本脚の白いカラスだった。こちらはマサヤもよく知っている。ヤマトだった。
三人(?)が盛り上がっていると、チャップが拍手する。
「三人がかりとはいえ、よく手なずけられましたね! 素晴らしい!!」
もはや、マサヤの頭の中は飽和状態で、一言も声を発することができない。
「何がどうなってんだよ、一体」
マサヤの呟きは、盛り上がる四人の耳にはまったく届いてくれなかったのだった。




