363話 バレンタイン騒動 4
「さむっ!? なんだ、ここ!?」
びゅぅぅううう。
寒風吹き荒び、氷雪が舞う中で、マサヤはチャップに文句を言った。
「なんなんだよ、ここは!?」
「ここですか? 寒冷地帯の一つです。金閣銀閣とヤマトはここにいるはずです」
「信じられねぇ。こんな場所で、チョコつくるのか?いくらなんでも・・・」
「そうバカにしたものでもありませんよ? ここは、短いですが春になると自然豊かな山へと変貌します。その栄養分をたっぷりと蓄えて、多種類の花が咲き、その花を食べる家畜の春ヤギは、豊かな栄養をその身に蓄えます。丁度今はこちらでは春になりかけですから、春ヤギからとても上質なミルクを搾れるはずです。そのミルクを使ったホワイトチョコレートやミルクチョコレートは、きっと美味でしょうね」
ごくり、とマサヤは喉を鳴らした。確かに、そう説明されると納得がいく。さらに、チャップは続けた。
「まぁ、そういうわけで、ここでチョコを得ようとしたのですよ、三人は。今頃、春ヤギの牧場に出向いてるかもしれません。行きましょう」
促されて、歩き始める。とても、春が近づいてるとは思えない光景に、あれ? 俺騙されてないか、と思いながらも、ついていくのだった。
立ち寄った街で情報収集すると、どうやら、金閣銀閣ヤマトのトリオは既に山へと向かったらしい。防寒装備をきっちりして、マサヤとチャップは山登りをする羽目になった。
行けども、行けども、変わらない景色と時おり現れる氷雪系魔物に、ますます疑いを濃くしていくマサヤとチャップの前に、そいつは立ちはだかった。体長、凡そ二十メートル。そいつが、足を鳴らすだけで、どしん、と地響きが起き、辺りが雪崩を、起こす。
それは、ヤギだった。ただし、とても、バカでかい。
「こんなの聞いてねぇえええええ!!」
マサヤの絶叫は、迫り来る雪崩に、呑み込まれたのだった。




