355話
いきなりの呼び出しをしたスレイさんから、軽く座るよう促される。僕がソファーに座ると、スレイさんはあまり表情を変えずに僕の前に座った。
「・・・・・・イベントのことは知っているか?」
「うん、一応。ちゃんとお知らせメールは読んだし」
「一チーム十二人まで、すなわちパーティー二つを作れるわけだが。もし、テルアさえ良ければ、俺たちと組まないか? 実力が知れ渡ってるならば、俺たちと行動することで他のプレイヤーから声を掛けられなくなる。多分、お前の場合、勧誘が凄まじいことになるぞ」
「あぁ、心配してくれたんだ。うーん、でも、悩むなぁ」
僕は、どうやらスレイさんから勧誘されてるらしい。どうしたものだろ。
勧誘が嫌なんじゃなく、僕が仲間でいいのかという疑問があるのだ。自分でいうのもなんだが、僕は基本的にソロとか、仲間魔物たちと一緒に冒険すると言ったスタイルだ。なので、どちらかといえば、連携が得意じゃない。指示出しに務めてもいいけど、みんなの不安や混乱を煽る結果にもなりかねない。
「イベントまで時間はあるし、返事はとりあえず保留でいい?」
「保留か。まぁ、こっちはそれでも構わないが、勧誘対策はいいのか?」
「うん、絶対に見つからないところにいるから、大丈夫だよ」
じいちゃんの居城なら、見つからない。見つけるにはまだ全員が強くなりきっていないはずだ。
「話はそれだけ? ごめんね、中途半端な答えで」
「いや。とりあえず意思を確認できて良かった。もし、参加の意思が決まったら、教えてくれ」
話はこれだけのようだ。僕は立ち上がろうとして、すぐにナイフを構えて、投げた。
「!!」
ナイフは壁に突き刺さったが、そこから、ほうほうの態で、出てくる青年がいた。
「紅蓮の騎士団が聞いて呆れるね。盗み聞きとか、趣味が悪いよ」
「悪い! けど、どうしても心配だつたし、黙っていられなくって。巨人マクアの指はどうしたの?」
あぁ。あれか。
「マクアの居場所に辿り着いて、マクアを解放したけど?」
「え。えぇぇえええええ!?」
大袈裟だなぁ。
「待ってくれ。それなら、マクアとテルアは遭遇したということか? だとするなら、とんでもないビッグニュースだぞ!」
とんでもないビッグニュースねぇ。ここで隠しても、あんまり意味はなさそうだ。なので、僕は適当にマクアトと出会ったくんだりを話して聞かせる。
すべて聞き終えた二人はなるほど、と納得してくれた。
「別に話してもいいけど。僕に火の粉がかかるような噂の仕方はやめてね」
「わかった。掲示板にでも出す程度に止めておく」
これで、本当に話は済んだようだ。僕は、紅蓮騎士団のギルドを後にして、一旦ログアウトしたのだった。




