349話 王墓の遺跡 11
最奥には何故かチャップとヤマトの二人組がいて、僕は驚いたけれども、冷静に話を聞いてみればさもありなん、という理由だった。
チャップは、とりあえずなんでもいいから、自分の部下になってくれそうな魔物が欲しかったらしい。一人だと、さすがに兵隊長とは呼べないので、放置すると、ランクダウンしてしまうのだとか。
指揮のレベルも上げたし、それなら自分の部下になりそうな魔物を一体捕獲して、なんとかしようと考えたらしい。
ヤマトは、職業として錬金術師になりたいそうで、そのためには本を入手する必要があったのだとか。
二人とも嬉しそうだね。と、いうか一発で入手とかすごい。
おおーと手を叩いてた僕だけど、ふと気づいた。あれ? キマイラは?
「ねぇ、ヤマトにチャップ。キマイラはいなかった?」
おかしいな。ここに生息してるはずなんだけど。どこだろ?
僕がキョロキョロしてると、壁にある出っぱりを見つけた。
なんだろ、これ?
僕は出っぱりを押してみた。すると。魔方陣っぽいのが浮かび上がった。
エクストラバトルが発生しました!!
「えええええー」
「何やってんだ、テルア!」
「こんな仕掛けが・・・!」
「さすがは師匠!!」
臨戦態勢を整えてから魔方陣から出現したのは、キマイラ(ミニ)だった。
「え?」
「はあ!?」
「予想外です」
「俺よりもちっさいぞ、主!?」
出現したのは、ヤマトよりも小さなキマイラだった。違う!可愛いけど、可愛いけど僕が求めていたものとなんか、違う!
僕は苛立ちと共に床を叩く。
「キュァアアア!!」
「うるさい!!」
小さくても、敵として出てきただけはあるらしい。大きな火のブレスを放ってきたが、僕はぱちんと指を鳴らす。
途端、僕の前方全てが凍りついた。
飛んでいたキマイラの翼もだ。
「きゅい!?」
「弱いものいじめは、趣味じゃないんだけどね・・・人に向けてブレスを放つなんて、悪いこには躾が必要だね?」
僕は笑顔のまま、キマイラ(ミニ)に接近する。キマイラ(ミニ)は逃げようとしているようだが、逃がすわけないじゃん。
「さぁ、僕とお話しようか? ミニキマイラ?」
「きゅいいいいいーっ!」
キマイラの哀れな悲鳴が室内に響き渡ったのだった。
その後、キマイラ(ミニ)は泣きながら王墓の遺跡を去っていった。僕が人助けしてきなさい!と、説教して遺跡から追い出したからだ。
そして、何故か王墓の遺跡最強の称号が僕についていた。あれ?おかしいな。
「仲間にしなくて良かったのか、あいつ?」
「キマイラ(ミニ)は仲間にしてもなぁ。本人も僕に苦手意識持っただろうし。ま、危険になったら一応助けに行くから。ヤマトか、チャップが」
「他人任せ!?」
「いや、だって僕がいるとは限らないしさぁ。最後はヤマトとチャップに助けてもらってたし。大丈夫だよね?」
チャップもヤマトも、いい笑顔で頷いてくれた。
「こんな滅茶苦茶な奴についてくって、お前らも大変だな」
「いえ、確かに色々起きますが、退屈しませんし。私は師匠に出会えたことに感謝してますよ。毎日が充実してます」
「僕の前でチャップが僕の悪口言うわけないじゃん、マサヤ」
「それもそうか。悪いな、妙なこと言って」
ただ、問題は。僕の目的が全然果たせなかったってこと。ちょっと落ち込むね。
まぁ、仕方ない・・・あれ?
「ねぇ、あそこにある祭壇みたいなの、なんだろ?」
「また何か見つけたのか? 待て心の準備をさせ・・・」
マサヤを無視して僕は祭壇に近づく。オーブのように見えたのは、大きな魔石だった。だけど。
「この魔石、黒い。それに、なんか嫌な感じがする」
「師匠!! 手放してください!!」
「っ!?」
僕は魔石を力一杯投げた。嫌な予感は膨れ上がる。
「結界!!」
結界を張った途端、大きな衝撃が結界を揺るがした。




