35話 公式サイト
※すごい説明回です。最後の数行以外、飛ばして読んでもらってもおそらくOKです。
シヴァたちの優しさに慰められた僕は、一度現実世界に戻ることにした。
と、いうか、そろそろ戻らないと本気で夕飯抜きにされてしまいかねない。
魔物たちと名残を惜しみながら、僕は、塔の外で浮かんでいる青緑の水晶に触れて、「ファンタジーライフ」をログアウトした。
夕飯を食べ終えた僕は、学校で出された宿題をしつつ(やらないとゲーム禁止にされてしまう)、ふとじいちゃんこと、魔神ジャスティスのことを考えた。
塔の中でのじいちゃんは、時折様子がおかしかったように思う。
一番最初におかしくなったきっかけは、確か。
『えっ。君、契約までしちゃってるの。それは・・・』
『無駄話はここまでじゃ、ガンダムッポイノ』
僕がじいちゃんと契約してると、ガンダムッポイノが聞いたとき。
ガンダムッポイノは明らかに様子がおかしかった。
どうして、じいちゃんと契約してることであんなに可哀想なものを見るような目をされたんだろう。
それが妙に引っかかる。いや、それだけじゃない。
どうして、じいちゃんは僕をレベルドレインの魔方陣に押し込んだのだろう。
レベルドレインさせるメリットはあるけども、少なくとも僕はそこまで切羽詰まった状況でもなかったはずだ。
「確かにふざけたじいちゃんではあるけど、じいちゃん、僕のことをすごく可愛がってくれてるし。それに、じいちゃんの態度と、ガンダムッポイノの視線・・・何かありそうって考えるのは、僕の気のせいなのかな?」
ここは自室であり、ゲームの世界ではない。疑問を口に出しても、答えてくれる存在はいない。
ちょっと、さみしい気持ちになった。
宿題をなんとか済ませて、僕はパソコンを使ってインターネットを開いていた。確か、「ファンタジーライフ」には公式サイトがあったはずだ。
そのサイトを見つけ出して、僕はサイト内へと飛ぶ。
すると、ファンタジーライフの紹介文が流れる。
『ファンタジーライフへようこそ! この世界には、様々な生き物、種族、魔物が住んでいます。あなたもファンタジーライフの世界の住人の一人となり、楽しんでみませんか? 遊び方は千差万別! 魔物をたくさん狩って、冒険者として起業するもよし、はたまた見知らぬ街で一人のんびり畑作業をして暮らすもよし。踊り子や吟遊詩人になって世界を旅してまわったりもできます!選べるジョブは、なんと二百種類以上!あなたが望む職業がきっと見つかるはずです! ファンタジーライフの住人になれば、今日からあなたもファンタジーの生活を楽しめる! そんなファンタジーライフを今すぐ始めてみませんか?』
あー、そういえばこんな感じだったね。あんまりCMの謳い文句と変わらないなぁと思いながら、他の項目も確認する。
すると、「ファンタジーライフ」の世界観が目についた。
クリックして内容を確認してみる。
「ファンタジーライフの世界〜冒険の舞台〜」
『ファンタジーライフには大まかに天界、地上、魔界の三つが存在しています。天界は数多の神々が暮らす世界。限られた者しか、天界に入ることは許されません。地上は人と人以外の種族が住む世界。戦乱と混乱が数十年に一度繰り返される世界です。今は安定期であり、旅をしていても危険が少ないです。魔界は、魔族と呼ばれる種族が住まう世界です。魔族は独特の価値観と力を持ち、接触する時には注意が必要です。一説には、天界に住まう神々に刃向かい、異形の姿にされ、追放された一族とも言われています』
『天界の神々について。天界はたくさんの神々の住まう地ですが、その中でも特に力の強い神々を紹介します』
という一文の後、挿し絵付きで神々の紹介がされている。
『主神メーサデガー』ーーー天界の神々の頂点に立つ神です。メーサデガーに祈れば、様々な恩恵を与えてくれます。始まりの街アールサンの神殿で条件を満たせば加護を与えてくれますので、良ければ神殿に行ってみましょう!
挿し絵では、金髪碧眼の美丈夫で描かれている。頭には、鳥の羽の冠を被っていた。服は、白い布を合わせた、ギリシャ神話に出てきそうな服だった。装飾品もじゃらじゃらと身につけている。
よっぽどでない限り、この神には拝みたくないなと僕は思った。苦手な印象を僕は持つ。
『武神クレスト』ーーー天界の神々の中でも武芸に秀でた神。もしも肉体的な強さを求めるのであれば、彼に祈っておけば間違いありません。始まりの街アールサンに神殿があり、条件を満たすと加護を与えてくれます。
挿し絵は、黒髪と黒ひげが立派な、筋肉ムキムキの偉丈夫であった。手には赤い宝石が柄頭にはまった、大きな剣を持ち、鎖帷子姿だ。こちらは主神よりも気難しい印象を受けた。修行中の容赦のないじいちゃんの姿に近いものがある。この神ならば、祈りたいなと僕は思った。
『守護神クク』ーーー魔法に精通している神であり、魔法使いを守護してくれる。常に仮面を被っており、素顔を見たものは、地獄に落ちてしまうと言われている。始まりの街アールサンに神殿があり、条件を満たすと加護を与えてくれます。
挿し絵は、少し特徴的な模様の入った白い仮面と木製の杖を手にした、魔法使いという印象を裏切らない姿だった。服は、こちらは緑のローブだった。髪の色は灰色で短かった。なんで仮面被ってるんだろ?と、疑問に思った。
『豊穣神アルルン』ーーー大地を守護し、豊穣を与えてくれる優しい女神。農村ではよく教会にまつられたりもしています。基本的に穏やかな性格で滅多に怒らないが怒らせると怖い女神でもあります。始まりの街、アールサンの神殿で、条件を満たすと加護を与えてくれます。
挿し絵は、栗色の長い髪をまとめずに流したとても綺麗で穏やかな印象を与える女性が描かれていた。服は白のワンピース姿だった。修練の塔では一角獣の使用許可を出してくれた心優しい女神だ。一度絶対に神殿で祈っとこう。
『太陽神ロード』ーーー明るく、楽しいことが大好きな子供姿の男神です。彼に気に入られると、主に火の扱いが上手になります。始まりの街、アールサンの神殿で、条件を満たせば加護を与えてくれます。
挿し絵は赤髪の子どもが焔と見間違えるような馬に乗った姿だった。楽しいことが大好きだと、満面の笑みを浮かべている。
『月神ルテナ』ーーー冷静で理知的な女神です。彼女は踊り上手でたまに『神々の晩餐』でも踊りを披露します。また、手先が器用で、薬草に明るい女神です。彼女に気に入られると、薬を作ることがとても上手になるでしょう。始まりの街、アールサンの神殿で、条件を満たせば加護を与えてくれます。
挿し絵は、とても綺麗な銀髪を頭の上で優雅にまとめた女性だった。アルルン様と比べると、あちらはほんわか、こちらはクール美人といったところか、僕としては、すごいな〜の言葉だけで終わっちゃうけど。
他にも挿し絵は描かれていたが、名前や説明はなかった。おそらく、自分で確かめろということだろう。じいちゃんのなど、説明どころか影も形もなかった。
ちゃんとゲーム世界では存在してるのにね。
僕は、このサイトを見て、改めてじいちゃんのことを何も知らないことに気づいた。
じいちゃんに訊ねればいいんだろうけど、じいちゃんだって答えたくないことや隠したいこともあるだろうし。
うーん。ひとまず、自力で調べられるところは調べてみようかな。
よし、じいちゃんにメールを送っとこう!
僕は、じいちゃん宛にミニメールを送った。
内容としては、しばらく特訓をお休みさせてほしいというものだ。
魔物たちの面倒はじいちゃんに任せることにする。
すると、じいちゃんからすぐに了承のメールが来たが、同時に僕は課題を出されてしまった。
『課題 冒険者ギルドで、以下のクエストを受けて、達成すること。
クエスト06 クエスト07 クエスト08 クエスト09 クエスト10 以上の5件』
僕は、新しい課題に、思わず笑みを浮かべたのだった。
次→書き上がり次第、順次投稿(10万文字越えるまで)




