348話 王墓の遺跡 10(※)
まず、私たちの前に現れたのは、ミイラマン・ミイラウーマン・黒蠍が十体ずつの混成軍団でした。
が、しかし。
「陽光!」
ヤマトの体が光り、そのままヤマトは特攻します。ヤマトに腹を貫かれたミイラマンらは、悲鳴を上げながら二体灰になりました。
「火炎球」
私は己で作り出した大きな火炎の球を投げつけます。火がついたミイラウーマンが三体倒れました。魔力をかなり込めましたからね。おまけに、ミイラマン・ミイラウーマンは、死霊系の魔物なので光属性の魔法やスキルに弱く、また包帯を巻いていることも影響してか火属性の攻撃もよく通ります。
先制攻撃で五体倒した後は、私は剣で一体を斬り伏せ、一体を貫きと、ミイラ系魔物の相手をします。一方、ヤマトは蠍に集中的に羽を硬化して攻撃してます。あれならば距離を取りながら戦えるので、毒を受ける心配はありません。まぁ、ヤマトならばあんなに遅い攻撃に当たることなど元々ないでしょうけどね。
私は剣で相手をしながら、やはり物足りなさを感じていました。まったく、動きがなっていません。せっかく体が軽く速さを活かした戦いができるのならば、もっとやり方があるでしょうに。基本的な重心の移動や体幹の鍛え方もなっていません。こんなへろちょろの拳では私には傷ひとつつけられませんよ。
「ふぅ。雑魚の相手は疲れます。もう少し攻撃力がある武器が欲しいですね」
「なんて、のんきなこと言ってる場合じゃなさそうだぞ、チャップ!」
ヤマトの言葉に呼応するように、今度は岩ゴーレムが三体現れました。また、雑魚ですか。何戦あるんでしょうね、これ。
そう思いながら、私は剣を構えました。
結果? これも圧勝ですよ。瞬殺とまではいきませんが、分殺です。ゴーレムは耐久力が売りですが、逆に地魔法が使えるならば、相手の弱点を探ることもできます。あっという間に弱点を看破し、追い詰めました。さて、本命はそろそろでしょうか?
出てきました! ようやく本命の王の守護者と、黄金仮面の王!
こいつらを倒せば、目的の物が手に入るかもしれません。気合いと共に、私はヤマトの補助魔法を受けて、飛び出しました。火炎斬りを放つも、さすがはラスボスの守護者といったところでしょうか。
私の攻撃に耐えきります。薙ぎ払い、切りかかってきたもう一人の攻撃を受け流し、私は口の端がつり上がるのを抑えることができませんでした。
これです、これ。この程度の手応えが欲しかったのです。
「助かりますね。これで、新しく覚えた新魔法の試し撃ちができるというものです」
「え゛!?」
ヤマトが驚いています。そういえば言っていませんでしたか? まぁ、対した問題はありません。
さぁ、行きますよ!
「氷麗の支配者、風雷の支配者よ。我が意思に応え、神への反逆の刃をここに具現化したまえ!『二種の刃の嵐』」
ヤマトが目を限界まで見開きました。私の前に現れたのは、たくさんの先の尖った氷柱、それがばちばちと帯電しています。現れた数は、十。それらが標的とした王家の守護者を貫きます。
王家の守護者が倒れて、消えました。
残るは黄金仮面の王のみですが、あぁ、ブーストしてますね。まぁ、部下がやられると奮起するというのはありがちなパターンです。
ただ、さっき魔法を使った影響で、しばらく魔力回復に務めなければ、大技は使えませんね。
「ヤマト! すみませんが、剣になってもらえますか? 私の剣でも良いのですが、どうやら火属性耐性を持っているようですから」
「仕方ねぇな。武器変化!」
ヤマトがスキルを使用して、剣になってくれました。
「いきます!」
「いつでもいいぜ!」
杖を振り上げて、頭上から降り下ろしてくるのをバックステップでかわして、すぐに、横に回り込み、胴を薙ぎました。あまり効果はないですね。
急所となりそうなのは、顔、頭、首とでしょうか。ですが、仮面のせいで狙いにくい部位でもあります。
ふむ、ならば。
「ヤマト。相談が・・・」
私の提案にヤマトも乗ってくれました。すぐに、準備を始めます。こちらに向かってくる魔物の速さについていけずに、私たちは相手の杖を思いきり受けて・・・そこで姿が消えます。
幻惑魔法。
師匠がもっとも得意な魔法で、私も何度も練習し、研鑽してきましたから、この程度の幻影は戦闘中であっても出せます。まぁ、ヤマトに少し光魔法で効果を高めてもらいましたが。
「チェックメイトです」
私はヤマトの剣を相手の首に突き立てました。さらに、そこからヤマトが硬化した羽を撃ちます。
ぎゃぁあああああ!!
「止めです」
私は、左手で抜いた自分の武器で半分とれかけていた首を完全に切断しました。
さすがにこれで、死んでくれたでしょう。
黄金仮面の王が消えて、代わりに宝箱が出現します。
「ヤマト、開けてみてくれますか?」
「おう!」
ヤマトが宝箱を開けました。
錬金術師の書を手に入れた!
不死鳥の卵を手に入れた!
そこに入っていた物に、私たちは喝采を上げます!
「やりましたね、ヤマト!」
「やったなチャップ!」
ハイタッチをかわした私たちは、不覚にも喜びすぎて背後から近づいてきていた気配を見落としました。
「あれ? チャップにヤマト? なんでここに?」
振り向くと、私たちの主でもある師匠が戸惑ったように赤蠍に乗って小首を傾げていました。




