343話 昔懐かしい口調が出るのは癖だって!
天井が高い。そこは、大きな広間のようになっていた。僕らの目を一際引く、大きな魔方陣が発動する。その魔方陣から出てきたのは、全身を包帯でぐるぐる巻きにした人型の魔物だ。ただし、黒いマントのようなものを羽織り、手には大きな鎌が握られている。さながら、死神のような風体。僕は、その魔物の持つ不気味な雰囲気と武器が、直感的にまずいものだと判断した。
死神が鎌を持ち上げる。
「アンタレス、天井回避!!」
僕の指示に、アンタレスが飛び上がるが、天井にまでは届かない。天井までが高すぎるのだ。だが、飛んで逃げ場がないと思い込んだのか、死神が宙を闊歩しながら、アンタレスに迫るが。
「させるかよっ!!」
マサヤが、手にした小太刀で、死神を切りつける。アンタレスに迫っていた凶刃はそれた。その隙を逃さず、火球を僕は死神へと叩き込む。
「・・・・・・・・・。」
冷静に回避したが、この程度で攻撃を緩めるほど、僕は優しくないよ?
パチン。
死神のすぐ真横で火球が弾ける。合わせて、僕はアンタレスの背を蹴った。
「アンタレス!! 地上に降りたら、自分の判断で攻撃するんだ! 空中戦は避けて、隙を見つけるか、見つからなければ防御に専念しろ! ただし、あの鎌は特殊効果がある可能性が高い!鎌の攻撃は受けるな、回避しろ!」
アンタレスが尻尾を一回振る。了承したようだ。
「その口調、魔光の王の時のこと思い出すな」
「戦闘中の指示出しは、簡潔明瞭にしようとしてどうしてもこうなっちゃうの!!」
無駄口を叩きながらも、マサヤはヒット&アウェイで、ちまちまとHPを削っている。だが、この程度では倒せないだろう。
「敏捷上昇、防御上昇、物理攻撃上昇、魔力上昇!!」
マサヤに補助系の魔法を掛けて、僕も相手に切りかかる。死神の懐に入り込むが、鎌を振るいにくいにも関わらず、死神に一太刀浴びせられない。
だが、別に構わない。
至近距離で僕の攻撃を受けた死神に、僕は見えない風の刃を放つ。この距離では避けきれないという目論みは当たった。右手の手首から先を切断することに成功する。切断した右手は砂となり、形が保てずに広間の床の上に砂の塊が、落ちる。どうやら、強くはあるもののHPが回復することはないようだ。
「案外強いな、こいつ」
「一応、ここの中ボスだろうからね」
「だが、右手がないなら、隙はある!」
マサヤはなかなかの速度で駆けながら、小太刀を一閃させつつ、走り抜けた。
今度は足が落ちるが、死神はふわりと浮き上がって、移動を可能にする。まぁ、空中を闊歩している時点で予想済みだ。
「これでどう?」
だけど、相手はマサヤ一人きりではない。僕もいるのだ。僕は鋼糸で、残る左手を拘束する。
その隙を逃さずに、マサヤがスキル光刹斬を放つ。
死神の左足も落ち、砂とかわる。
残るは、左手のみだが、そこで死神の足元に、黒い沼のようなものが浮かび上がる。その沼から、ミイラマンとミイラウーマンが、現れる。仲間を呼んだか。
「アンタレス。雑魚の始末は任せる。マサヤ、でかいの一発放つから、それを囮にあいつの左足も切断できる?」
「できるといいたいとこだが、早くやらねぇと、補助魔法の効果が切れちまうな」
「了解。カウント5で!5、4、3、2、1、ゴー!」
僕は、地面に手をついた。そこから、次々に刺が生えていく。死神は回避しようとするが風魔法と鋼糸で僕は相手の動きを阻害する。
「・・・・・・・・・はぁあああっ!」
気合いと共にマサヤの小太刀が死神の左肩から腕を切断する。そのままマサヤの小太刀は死神の頭を貫いた。
ぼおっと燃え上がる死神。それから、主がいなくなったためか、一瞬ミイラマンとミイラウーマンが戸惑うように動きを止めた。それらの雑魚は、アンタレスによって葬られる。
「もう少し、だね」
ほどなく、魔物はめでたく全滅したのだった。




