342話 王墓の遺跡 8
「あのデカいフンコロガシ、しつこくないか!?」
「あー、ごめん、マサヤ」
地下5階で僕らは大きなフンコロガシにこれでもかと言わんばかりで追いかけ回されていた。アンタレスがいるから、天井に回避できるけど、それでも僕らの下からゴロゴロという音がしている。
「謝ってるけど、なんかやったのか、テルア?」
「僕はやってないよ。ただ、さっきからログで、仲間になりたそうにしてます、仲間にしますか? って質問が一分おきに来てるだけ」
「確実にお前目的じゃん、それ!?」
だから、逃げてるんだって。さすがに、6階に降りたらフンコロガシも追ってはこられないだろうし。
僕はさっさと逃げたいんだけど、そう簡単にもいかないようだ。
「あ」
「い!?」
天井は、行き止まりになっていた。下に、ボス部屋を示すような大きな扉が用意されてる。これを開かない限り、前には進めなさそうだ。そして、眼下には、落ちてくるのを今か今かと待ち構えているフンコロガシ。
ちょっと、ホラーテイストだね。
「ねぇ、マサヤ。ちょっとお願いが・・・」
「ヤダ」
まだ何も言ってないうちから断られた。
「お前が猫撫で声出すときはろくな頼みじゃない。何年の付き合いだと思ってんだよ」
ちっ。読まれてたか。マサヤに扉開けさせようと思ったのに。
「仕方ないなぁ。じゃあ、ちょっと、卑怯な気もするけど。ごめんね?」
僕は、地魔法でフンコロガシの足をフンから離し、さらに坂をつくった。傾斜となったら、フンの丸い岩は、当然傾いた方へと転がっていくわけで。
フンコロガシの足を離れた丸い岩が勝手に坂を転がっていく。
「・・・・・・・・・!!」
フンコロガシは、フンを追いかけていく。途中、うわぁあああーん!!と泣き声が聞こえた気もするが、僕は気のせいだと思うことにした。
「なんか、同情しちゃいけねぇんだろうけど、ちょっと、同情しそうになった」
「マサヤが自分でなんとかしろって言ったんじゃん。それより、すぐに戻ってきそうだから、早く扉開けちゃおう」
僕は、アンタレスに地面に降りるよう指示した。アンタレスは素直に指示に従う。扉は案外大きい。
「じゃあ、開けるよ?」
僕は、扉を開いた。




