340話 王墓の遺跡 6
すみません。遅れました。さらに会話中心になりました。
「どうした、テルア? 声が聞こえたが」
「マサヤ。ただの痴話喧嘩みたいだから気にしなくていいよ」
僕の勘が告げている。関わり合いになると面倒事の予感がする。その時穴の下の人物が異議を唱えるために声を張り上げた。
「ちょっと待ってください!! 聞き捨てならないです!!」
「サジュン?」
「誰がこんな色気もへったくれもない相手と痴話喧嘩なんかしますか! 勘違いも甚だしい!!」
「ちょ!? 失礼過ぎるわよ、あんた!?」
「お嬢はともかく、俺は助けてください! こんなところで護衛だからって巻き添え食って、迷惑してるんですから!!」
「本音駄々もれ!? あんた、あたしのことなめすぎてない!? 一応護衛対象なんだけど!?」
それから醜い言い争いを始めた二人組に、マサヤも納得してくれた。
「確かにこりゃ痴話喧嘩だな。俺たちが手を出す問題じゃない」
うんうんと頷く僕らの意見は一致していたんだけど、穴の中の二人が即座に噛みついてきた。
「ちょっと、あんたたち! 何勝手なこと言って立ち去ろうとしてんの!?あたしたちをここで見捨てたら、承知しないからね!」
「そうです! お嬢はどうなってもいいんで、せめて、俺だけでも助けてください!!」
清々しいまでに、自分たちのことしか見えてない。こういう人らを助けたいとは、あんまり思わないんだけどねぇ。
「なぁ、テルア。穴から出すくらいはやってやったら? それで、後は自己責任でいいだろ」
「このまま見捨てると、執念深くてうるさそうだしね。仕方ないか」
僕は気乗りしないまま、二人の体を地魔法で穴から押し上げ、穴を塞いだ。
すぐに二人がポカンとした表情で僕らを見上げる。
「え」
「すっげぇあっさりでしたね、お嬢」
「じゃあ、僕ら先に行くから」
別にお礼とか求めてないし、これ以上関わるのも面倒だなぁと思ったから、僕は助けた後は勝手にしてくれとばかり二人組を放置して、マサヤとアンタレスと遺跡を進もうとしたんだけど。
「待って! あなたたち、何者? この王墓の遺跡に潜った目的って何?」
この辺りでは珍しい銀髪にすみれ色の瞳をした美少女が僕の服の裾をつかんだ。
さすがに、助けてもらっといてお礼もなしとか、失礼過ぎる気がするんだけど、この子。おまけに、なんかこっちを警戒してるっぽいし。
「悪いけど、僕らこの遺跡で冒険してる最中だから邪魔しないでくれる? それと、助けてもらったらお礼言うって基本的なことできてない礼儀知らずに名乗る気も詳しい説明もする気はないよ」
バッサリ切って捨てて、僕はマサヤをアンタレスの上に乗せて、自分も飛び乗る。こんな連中に関わってる時間が勿体ない。
「あ、待って・・・!」
制止を無視して、僕はアンタレスに後ろの二人組を突き放すようにと指示を与えると、アンタレスはあっという間に二人を突き放した。
「結局、なんだったんだ、あの二人?」
「さぁ? 迷子だったんじゃない?」
助けたんだから別に文句はないだろうと、僕らは先を急いだのだった。




