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34話 修練の塔 最上階の小部屋(※ガンダムッポイノ視点)

「うっ。ううっ。テルアに、テルアに嫌われてしもうたぁあああ。うわぁぁああん」


 完全にいい年をしたハゲの爺が、修練の塔最上階で大泣きしていた。

 ガンダムッポイノは非常に迷惑そうな視線を注ぐが、泣いている爺は気づかない。いや、気づこうとしていないの間違いだろう。


「ジャスティス。うっとうしいんだけど。泣くなら、他の場所に行ってくれる?」

「他の場所に行って、ヒック、しもうたら、あの思い出すだけでもムカツク、うぇ、神々に気づかれる、うぅ、かも、しれんじゃろう、が」

 泣きながらもきちんとした答えを返すジャスティスにイラっとするガンダムッポイノ。

「それは、ここでもおんなじでしょ。っていうか、あれは完全にジャスティスの方が悪いんじゃないか。無理矢理レベルドレインなんてさせたら、そりゃテルア君も怒るよ」

 あんなことをされて怒らない人間がいたら見てみたいくらいだ。

「うぅ、ヒック。ヒック。わかっ、とらん! ガンダムッポイノ、お主は何もわかっと、ヒック、ら、んぞ」

「聞きづらいから変なところで切らないでくれる? あと、そろそろ本当に泣き止まないと、強制転移で外に出すよ?」


 ガンダムッポイノが軽く脅すと、しばらくしてジャスティスは泣き止んだ。

 こんな姿を誰かが見てたら、魔神の威厳は底辺にまで落ちていくことだろう。

 場所をわきまえている辺りにある程度の理性は残っている。そこがまた、うっとうしいし、腹も立つが。


「あ、そうじゃ、ガンダムッポイノ。あとでテルアが60階でやったパフォーマンスの映像の録画、儂に送ってくれ。テルアの成長した姿をこの目で確かめたいんでの」


「ジャスティス。君、まさかそれが欲しいがためにこの小部屋に残って大泣きしたとか、ないよね?」


「さぁのう。送ってくれんかったら、あまりに非情なガンダムッポイノの仕打ちにめげて、また泣き出すかもしれんが」


「この狸爺!」


 文句を言いつつ、結局ジャスティスの望み通り、テルアのマジックショーの映像をガンダムッポイノは送る。

 届いた録画映像を、ジャスティスはすぐにコピーをして、保存する。ちなみに一つは鑑賞用、一つはテルアメモリアルコレクションに入れ、あとの一つは保存版で、ウィルス対策がこれでもかとしてある頑丈な場所に保存する。

 一連のジャスティスの行動を見ていたガンダムッポイノは若干ひいた。


「ジャスティス。君、孫可愛さのあまり暴走しまくる爺バカみたいになってるよ?」

「爺バカ? そんなもんじゃないわい」

「え、どこが」

 思わずつっこみを入れるガンダムッポイノ。そんなガンダムッポイノにジャスティスは胸を張る。

「儂はただ、可愛い孫のために奮闘する、健気な爺じゃ。孫のお願いを叶え、孫が頑張っている姿を影に日向に見守り、孫の勇姿をメモリーに残し、孫の可愛さを周囲にアピールする。そして、時に孫の前に立ちはだかる障害となって孫を指導する。こんな儂の、どこが爺バカじゃ!」

「全部だよ!」

 ギャーギャーわめきながら、爺バカ炸裂のジャスティスになんだかんだで付き合う、気のいいガンダムッポイノだった。



 しばらくジャスティスと言い合いをしていたが、一段落ついたところで、ガンダムッポイノはお茶を出して、ジャスティスに小さなちゃぶ台に座るよう勧め、本題に入った。


「で、まぁ、君がどれだけテルア君のことを可愛がってるかはひとまず置いといて。なんで言わなかったの? イベントクエストの条件のこと」


 テルアの可愛さを小一時間に渡って自慢していたジャスティスは、湯飲みに入った煎茶をすすった。これで、煎餅かお饅頭でもあれば完璧なのだが。そういうわけにもいかないらしい。

 些事に気をとられている間も、ガンダムッポイノの話は続く。


「テルア君のこの塔に来たときのレベルは27だった。普通はここまで上げるのに、大抵数週間はかかる。その間に、プレイヤーは冒険者ギルドに行って、イベントクエストを受けたりもするんだけど。それにはレベル条件があるものも中には存在する。レベル25以上だと受けられないクエストがあるから、わざとレベルドレインさせて、テルア君が全部のイベントクエストを受けられるようにしたんでしょ?」


 ジャスティスは答えない。ただ、ガンダムッポイノの推測に違うと答えもしない。


「最初から、そう言ってレベルドレインの理由を話してあげてれば、文句言わなかったんじゃないの、テルア君」


「おもしろい話じゃの。ガンダムッポイノ。じゃがの、それらはただの憶測に過ぎんよ」

 ジャスティスはお茶を飲みながら、穏やかに笑っている。


「そう」


 ジャスティスの心の内は誰にもわからない。だからこそ、本人が話さない限り、ガンダムッポイノが話したことは憶測以上にはならない。

 もはや、語ることもないと思ったのか、ジャスティスが席を立つ。


「馳走になったの、ガンダムッポイノ。そろそろ儂、行くわ」


 立ち上がったジャスティスだったが、すぐに目を見開くと、届いたメールを開封してすごい勢いで読み始める。

 最初は嬉しそうに眉尻を下げていたのだが、途中から段々とつらそうな表情になっていき。

 やがて、メールを読み終えたジャスティスはこの世の終わりだという表情で、わなわなと体を震えさせていた。


「ガンダムッポイノ。どうしよう、儂、儂・・・」


「テルアから絶交宣言されてしもうたぁああああああ!」


 再び大泣きし始めたジャスティスに、ガンダムッポイノは閉口した。

 その後、メールを確認させてもらったガンダムッポイノは、腹いせにジャスティスを装って勝手にテルアにメールを送るのだった。

次→12時

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