337話 王墓の遺跡 3
赤蠍の名前は、蠍座でも有名な星にちなんで単純明快にアンタレスにした。
アンタレスに乗りながら、遺跡内を歩いていく。アンタレスが通ろうとすると、前を塞いでいた魔物たちがすぐさま逃亡した。逃げ遅れた魔物は、アンタレスのハサミの餌食か、もしくは尾の毒で再起不能となる。出てくるのは、アンタレスとよく似た蠍の魔物たちだが、色は黒だった。アンタレスみたいに綺麗な赤色は珍しいのかもしれない。
「・・・・・・・・・えげつねぇ。と、いうよりさ、こいつ、かなりすごいよな?」
アンタレスは、ダンジョン内で育った魔物だけあって、一階の罠は全て知り尽くしているようで、時折、壁を歩いて罠を回避していく。
いい乗り物代わりだね、これは。
あっという間に階段部屋まで辿り着き、地下二階へと降る。
ただし、ここから先はそう簡単にはいかないようだ。泥ゴーレムや、アンタレスよりも小柄だが、動きが素早い砂蜥蜴、ミイラマン、ミイラウーマン、と出てくる種類が多彩になった。
「マサヤ! ミイラ系は、任せたから!!」
マサヤにちゃちゃっと支援魔法を全種類かけて、さらに、切れ味抜群の小太刀(温羅さんからもらったもの)を貸しておいたので、なんとか戦力として数えられる。まぁ、元々剣術はハイスペックだしね、マサヤ。
案の定、ステータス差はあっても攻撃が通じるので、鎧袖一触とはいかないまでも、短時間で手早く片付けている。スキルを使わないのは、慣れ親しんだ動きの方が違和感なく動けるからだろう。
「よいしょ、っと」
僕は張り巡らせた鋼糸で砂蜥蜴の動きを奪い、氷麗花を投げつけた。ここの魔物は、火属性の耐性が強いものの、水属性はその逆で、投げられた花の影響で瞬時に凍りつく。その氷像を蹴ると、氷像は粉々に砕け、呆気なくHPは0になった。泥ゴーレムは、アンタレスが足止めしている。僕はアンタレスの加勢をしようかと思ったが、アンタレスに余裕が見られる気がして見守ってみた。マサヤの方は、どんどんレベルが上がっているが、僕は上がらない。あ、レベル1の指輪外すの忘れてた。
外して、アイテムボックスの中に入れて、アンタレスの戦いへと意識を向けた。泥ゴーレムには、生半可な物理攻撃は通用しない。全て、泥で衝撃を吸収されてしまうからだ。現に、衝撃吸収や、物理攻撃半減のスキルを泥ゴーレムは持っている。
すると、アンタレスは防御と回避に集中し始めた。
何をやるのかと目を凝らすと、準備中すなわち待機時間となっている。
そして、待機が終わるとアンタレスの全身に青白い炎が宿った。アンタレスが、泥ゴーレムに向かって走る。泥ゴーレムは防御力や力は強いもののそれほど素早くはない。アンタレスの体当たりを食らって、泥ゴーレムは形を留められずに、泥の塊になった。
「すごっ! アンタレス、強いっ」
僕が駆け寄ると、アンタレスは誇らしげに尻尾を揺らしている。
「だけど、ちょっと減点だね。戦いが終わったと油断したところで、こういう手段に出る魔物もいるから」
僕は泥の塊になったそれらの周囲に結界を張った。途端、轟音が遺跡を揺らした。
「泥ゴーレムは、泥になっても核を壊さない限りは動き続けたり、今みたいに自爆で道連れにしようとするんだ。今度からは、ちゃんと核を狙うようにね」
アンタレスは、ちょっぴり雰囲気を落ち込ませながらも、僕の助言に頷いたのだった。




