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332話 背に腹は変えられない(※)

「スディルナ様! 新手が来ました!!」

「無理無理無理無理! もう、眠くて朦朧としてるって!」

 ここでは新参者に数えられるチルとアルト、そして大ベテランと言えるスディルナが、揃っていた。しかし、チルとアルトは既に息も荒く限界が近いことをスディルナも悟っていた。

 まさか、こんなふざけた真似をしでかすなど、スディルナとしても予想の範疇を越えてしまっている。

 前代未聞だ。

 自分の先輩にも当たる眷属全員に新人の眷属が喧嘩を売るなど。

 普通は、自分の実力不足を努力で補おうとするし、基本的に正々堂々と、先輩の眷属に挑むが、これは違う。

 本人が、仕掛けを企み、様々な者を巻き込み、こちらを潰そうとしているのだ。

 あの戯けた新人に今すぐヤキを入れて潰したい!!

 怒りを殺気に変えて、スディルナは己の封印を一つずつ解いていく。

 普段は修行のためと、強大すぎる力で他の眷属を怯えさせないために、己自身で封印を掛けているのだ。

 一つ解く度に、力がみなぎってくるのを感じる。全部でおよそ三十程の封印なのだが、それら全てを解くとさすがに手加減ができなくなるので、なんとか制御できる二十までにする。

「今すぐここから離れろ!!」

 側にいたチルとアルトに告げると、二人とも既に避難を始めていた。二人がある程度離れたところで、スディルナは自分の磨きあげてきた(スキル)を放つ。

竜牙の(ドラゴニック)破壊(デストロイ)!!」

 解き放たれたのは途方もない魔力の塊。それらが破壊の風を巻き起こし、ゴーレムを一気に液状化させ、やがて気体へと滅した。

 例えゴーレムといえど、その素材が土である限り、完全に破壊不可など笑止千万。スディルナは、勝ち誇った笑いを口許に刻んだが、すぐにその笑みは消え去る。

 なぜなら、滅したはずのゴーレムが寸分違わず自分の前に現れたからだ。正確には、数は減っているが、それでも残っている。

 バカな。そんなはずはない。

 あれは、ある程度手加減していたとはいえ、自分の全力の時の半分の威力は出ていたはずなのに。

 破壊不可の効果はそれほどの物なのか?

 じわじわと、スディルナも嫌な予感がしてくる。

 ひょっとすると、あれには自分の全力も効かないのではないか?

 そんなはずはない、と馬鹿げた妄想だと切り捨てたいというのに。

 眼前の光景は、あり得るかもしれないという恐怖と不安を沸き上がらせるもので。

 スディルナは、千年以上ぶりに、武神クレスト以外で戦慄を覚えたのだった。


 ※補足 基本的にゴーレムは魔神の破壊不可付きで壊れない。魔神の力を上回る者でなければ、傷をつけられずに破壊することもできない。ただし、同じ神かそれより上位かつ力の強い神が破壊不可を付与した武器や道具でなら破壊できる。ちなみに、ゴーレムが蒸発したのは、増えたゴーレムの方だった、というオチで。

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